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地獄耳のジャスティーナ 〜音量調節魔法は意外と結構、強いです!?〜  作者: 彩紋銅


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31/33

31彼女の証言によると

 ◇


「まったく、王子自ら危険地帯に赴くなど、何を考えているのです!?」


「だって、だって……」


「だってじゃありません!!」


 その後、エン様は、ロナルド様にめちゃくちゃ怒られ、涙目になっていました。

 ガチギレのロナルド様は、かなり怖いです。背後に鬼神(オーガ)が見える気がします……!?


 なんとか宥めましたが、エル様はまた、お仕事地獄になりそうです……。


 私はというと──。


「ジャスティーナ。衝撃波はやりすぎだ」


「え? 共鳴振動ですよね? お婆様がやっていた……」


「ジャスティーナったら、相変わらず脳筋なんだから〜」


「お姉様、とりあえず魔力大量に込めて特異魔法使うの、やめた方が良いですよ? 

 でも、無事で良かった……」


 家族に呆れられまくりでした。

 心配よりも、呆れのほうが勝っている気がするのは、どうなんでしょうか。


 まあ、無事に王城に戻ってこられて、良かったです。


「とりあえず、お説教はひとまずここまでにして、ジャスティーナ様は後日詳しく話をしますので本日はご帰宅していただいて構いません。必要なら治療師も手配しますので」


 と、ロナルド様。

 鬼神はどうにか引っ込んだようです。


「はい、有難うございます」


 その後、私は念の為に治療師の方に診てもらい、魔法師の方にも呪いなどがかけられていないか、確認してもらいました。


 結果は、健康そのもとのことでした。


 ◆◆


 その後、改めて三日ほど休みをもらいました。


 そして、四日目に、いつもの通りに登城(出勤)


「ジャス、体調はどうだ?」


「問題ありません。とても元気です!」


 エル様も、お元気そうです。

 目の下のクマと、机の上の書類の山から目を逸らしつつ……。


「そうか、良かった。では、当事者たちが証言した、事の顛末について、伝えておこう!

 ああ、決して休憩したいわけじゃないぞ? ロナルド、そんな目で見るんじゃない! ジャスだけ何も知らないのは可哀想だろう!」


 エル様は仕事を中断し、魔動投影機を使って説明し始めました。


 魔動投影機は、オリビアさんの証言を再生します。 



 ◆オリビア(リビー)の証言◆


 それを見つけた時、私と弟は絶望しました。


 〝人工精霊〟を封じた魔法具なんて、厄介なモノでしかないからです。


 魔法や魔術を齧っていれば、ご存じですよね? この世界の魔力を管理する精霊と呼ばれる存在を。


 昔はそんな精霊と契約する人もいたそうですが、今では人間側のやらかしでそういったものは少なくなりました。

 それで、ゆくゆくは世界の魔力の量が減ってしまうのではないか、なんて噂も流れたことがあるそうですね。

 私が生まれるよりもずっと昔の話らしいですけど。


 それを危惧した人々が作り出したのが、人工精霊です。


 作り方は色々あるそうだけど、共通して使われるのが生き物の命。あるいは魂です。


 さて、姉が遺した魔法具について話す前に、少し身の上話を。


 我がピエリス子爵家が没落したのは知っていますよね?


 そうです。

 領地に毒が撒かれて、その調査結果をちゃんと提出したというのに、内容を改竄され、異議申し立てのために裁判を起こすのにお金を借りたらその相手が闇金で結局は没落したという話。

 まあ、申立て自体はなんとか覆ったのですけどね。


 それを計画したのは、ベンジャミン・ターフ子爵です。


 事の始まりはベンジャミン・ターフが貴族学園でノーリーン嬢と出会った事。彼は男爵令嬢の彼女と恋に落ち、人目も憚らず浮気をしました。

 彼女と結婚したいと願ったターフ子爵は仲間と共謀して、ピエリス子爵家を没落に追い込みました。


 この辺は調べはついているでしょうから、詳しくは省きますね。


 ある時、確か家の没落が決定した頃でしょうか。

 家族が目を離した隙に、姉のエミリーが元婚約者となったベンジャミン氏に助けを求めに単身向かってしまいました。

 彼はたまたま、同席していたイーモン・ファーンとダニー・モスと共謀して姉を手込めにし、その際に使った違法薬物の影響で、姉は死亡しました。


 素面に戻り、発覚を恐れた三人は何も知らないダニー・モスの弟、ジミー・モスにも手伝わせ、遺体を領地内の湖に遺棄。

 夏場だったので遺体はすぐに腐敗し、死因はあやふやになってしまいました。

 三人は、家が没落した腹いせにターフ子爵の領地で入水自殺をしたのだと騒ぎ立てました。


 すでに没落し、多額の借金を負ったピエリス子爵家(我が家)は、司法に調べてもらう資金もなく、領地に毒を撒いた犯人も探す事も出来ず、泣き寝入り。

 元々、持病のあった当主である父も、心労が祟ってその後亡くなり、後には私と末弟で長男のチャールズが残されました。


 私たちは借金を返すために、それぞれ働き始めました。


 魔法が得意な私はリビーの名で冒険者を始め、魔法も戦闘も苦手なチャールズは夜の街で。


 ちなみに、返還された保証金も、すぐに借金返済で消えました。


 それから二年ほど経った頃、冒険者になった私が、希少な鉱石を発見したため、借金は一気に返済できました。

 しかも、残った資金に余裕もある。


 そこで、私は家族の思い出が残る、王都の邸宅(タウンハウス)を購入。そこでエミリーが残した手紙と魔法具を、発見してしまった。


 ここまでの説明で不思議なことがある? なぜ、姉エミリーの状況を事細かに知ってるのか?


 それはもちろん、説明してもらったからですよ。本人に。


 いえ、本人とは少し違いますね。

 エミリーの魂を核として取り込んだ、人工精霊本人が説明してくれたのです。それも、この後説明します。


 エミリーは最初から、元婚約者であるターフ子爵の目論見を知っていました。

 そしてもし、自分の命が失われるようなことがあれば、発動するように呪いの魔法具を準備していたようです。


 もし、彼がエミリーの助けを聞いてくれれば、魔法具の効果は解除していたそうですが、断れば自分の命をかけて報復をした。

 そして自分の命を奪うような事態になれば、自分ともう一人の命を使って復讐するつもりだったそうです。


 復讐の代償は自分(エミリー)の魂。そして、それを遂行する人物の命。


 魔法具には、エミリーの死から三年以内に彼女の復讐が成就しなければ、呪いは国全土に及ぶという誓約がかけられていました。

 そんなことが、魔法具と一緒に出てきた手紙に書いてありました。

 その手紙はすでに、破棄しています。


 私たちは慌てましたが、まずはその魔法具を魔法具鑑定士に調べてもらうことにしました。

 もしかしたら、魔法具の効果を解除できるかもしれませんからね。

 姉の恨みはもっともですが、国全体を巻き込むのはよくないと思ったので。


 依頼した鑑定士は、個人でそういった鑑定をしている人物で、こういった仕事にも慣れていました。

 しかし、解呪しようとした途端、左手の小指が黒ずんで、どろりと崩れた。

 それに慄いた鑑定士は、かなり強い呪いが込められた呪具なので、その通りにしたほうがいいと私たちに強く助言しました。


 私たちは、それに従うしかなかった。


 そうして、私たちは腹を括り、魔法具を起動させました。

 香水ビンのような魔法具から現れたのは、エミリーの姿を模した人工精霊。

 彼女はエミリーの人格と記憶を引き継いでいたため、手紙よりも事細かに、様々な事を説明してくれました。


 呪いの対象は、ベンジャミン・ターフ、イーモン・ファーン、ダニー・モスの三人で、彼らを確実に呪うことが目的であり、その他に契約者が数人、呪う相手を設定できました。


 呪いを制御するには一定量以上の魔力を持つ契約者が必要であり、その契約者は呪いを成就後に死ぬ定めだということも。


 契約者は魔法使いで魔力も多い私がなることが決まりました。

 しかし、それだけでは心配だと思ったチャールズは、他に協力してくれそうな魔法使いを探したようです。


 そして、夜の街で偶然チャールズ(カール)が知り合ったザン・フィーバーフューに助けを求めることができました。

 彼は数十年ごとに他人の肉体を必要とする魔族らしく、チャールズは己の肉体を差し出したのです。

 私は勝手に決めた弟を叱りましたが、他に良い方法もなかったのも事実。


 あとは、人工精霊が作り出した呪いの元であるあの赤黒い液体を、対象者へ飲ませるだけで呪いはかかる。

 二人分の命をかけた呪いなので、解除は不可能。

 私たちは、次々に対象者にそれを飲ませていきました。


 ティモシー・サップには、酒場で親しくなり、私が飲ませました。


 ミック・サプリングは浮気をネタに飲むことを強要。彼は金を支払うよりも呪いを受ける事を選びました。


 ノーリーン・ターフは、夜の店に来た時にチャールズが接客し、その時に飲ませました。


 ベンジャミン・ターフ、イーモン・ファーン、ダニー・モスの三人は、ザン協力の元、彼の仮面舞踏会で私が振る舞った赤ワインに混入させて飲ませました。


 ジミー・モスは時間がなかったので、呪いはかけていません。代わりに、目撃者になってもらいました。


 このことをずっと、忘れないで欲しいので……。


 これが真実なんですけど、納得してもらえました?


 え? どうして、途中で誰かに助けを求めなかったのか、ですって?


 そりゃ、私たちも彼らを恨んでいたからですよ。

 私たちは、ベンジャミン・ターフの自分勝手な願いのせいで、すべて奪われたのです。当然では?


 彼らが無惨に死んでくれて清々しました。主犯三人は、もっと苦しめてやりたかったくらいです。


 まあ、ベンジャミン氏はこれから、存分に苦しむことになるでしょうが。


 あ、解呪の方法はわかりません。

 二人の命を使った呪いなので、それ以上の人数を犠牲にすればもしかしたら解呪できるかもしれませんね。


 彼にそれほどの価値があるのなら、そうすればいい。


 私は、どちらでもいいですよ。


 ──ところで、チャールズ……いや、ザンの行方は? 分からない?


 そうですか。

 まあ、もう私がどうこうできることではないので、どうでもいいのですが……。



 ◆◇◆


 ──そこで、映像は終わりました。


「……現時点ですでに、ベンジャミンターフへの呪いはかけられているらしい」


「では、彼は……」


「ああ。命を代償にした呪いや魔法は、基本的に解除することは不可能だ。

 まあ、王族の血を引いていれば、多少はどうにかできたんだが、彼はそうではないからな」


「そうですか……。オリビアさんはよく、こんなに証言してくれましたね?」


「契約者である彼女は、もう長くはないらしい。全てが終わって、肩の荷が降りたらしいので、洗いざらい話してくれた。

 それに、ジャスが魔動具で録音していてくれた会話も、重大な手掛かりとなった」


「そう、ですか……」


 命をかけた術は、神様でもない限り覆せませんからね……。


「彼女がやったことは、許される事ではない。しかし、酌量の余地はある。オリビアは幽閉塔で生涯を過ごす事が決まった。

 一応、彼女はこの国に累が及ばないように、行動したわけだからな」


 幽閉塔は監獄の一種です。

 身分が高すぎて一般の監獄へ収監できない者や、オリビアさんのような酌量の余地がある貴族などが入れられます。

 オリビアさんはすでに貴族ではありませんが、国への被害を最小限にとどめようとしたことや、ターフ子爵の行いを鑑みてこのような処遇になったとか。


 どうか、彼女が穏やかな時間を過ごせますように……。私は心の中で願いました。


「弟のカール──いや、チャールズの方は、現在でも行方はわからない」


「他者の肉体を必要とする魔族なんて、本当にいるのですか?」


 オリビアさん達が転移したり、魅了を使えたのは、ザンの魔法(協力)だったみたいですね。


「いるらしい。数は少なくなっているらしいがな」


 魔族とは、魔族王国に住む人間や獣人以外の、知性と社会性がある種族の総称です。

 エルフや、ドワーフなどもこれにあたりますし、魔王もいます。

 国全体で魔法・魔術の研究をしており、新しい魔法は常に魔族王国から発信されると言われています。


 ただ、その中には、他種族の何かを糧にする種族もいます。

 淫魔や、吸血系などの方々ですね。

 その中に他者の肉体を得ることで初めて、この世界に干渉できる者たちもいるそうです。


「おそらく、ザンはその種族の一人だろう。チャールズはザンに協力してもらうために、その身を犠牲にしたのだろうな」


「……」


 ザンの性質を非難するつもりはありませんが、それでもなんだか、寂しいような悲しいような気持ちになりました。

 もう、本当のカールさんはいないのです……。


「それはそれとして、ジャスにちょっかいをかけるのは許せないから、見つけ次第ぶん殴る! あと、俺のことを黄緑ヒヨコって呼ぶのも腹立つ!!」


 ほとんど、私怨ですね。


「まあ、こんなところか。ターフ子爵は、過去の罪を調べられているな。本人は否認しているようだが……。この国に時効は無いから、死ぬ前に罪を認めてほしいものだな」


 ターフ子爵は、国の魔法師達が解呪方法を模索しているそうですが、彼にかけられた呪いが解かれる可能性は極めて低いそうです……。


 あら? でも、あの人工精霊、とてもじゃないですが、ご自分の()()について説明できるようなタイプには見えませんでしたけど……。

 次第に理性を無くしていったのでしょうか?


 それともまだ、協力者が──?


「どうした、ジャス?」


「いいえ、なんでもありません。お仕事、お手伝いしましょうか?」


「いいのか? 助かる!!」


 ……いえ、まさか、ね。


 ◆


 その後、ミック・サプリングさんの奥様と息子さんのエディ君に結果を報告しました。もちろん、過激な内容は柔らかい表現にして……。


 奥様のシェリーさんにはすでに、アンガスさんという彼氏さんがいて、同居していました。そのおかげか、以前よりも元気そうです。


 エディ君がアンガスさんと部屋を後にした時に、シェリーさに真実を教えてもらったのですが……。


 アンガスさんは、ミックさんの浮気相手(?)だったのだそうです!


 そもそも、シェリーさんとアンガスさんがお付き合いをしていたそうですが、アンガスさんのご両親が病気を患っており、お金がないため結婚は先送りにしていたとか。

 そんな時、お金のあるミックさんがシェリーさんに付き合って欲しいと言い、シェリーさんはアンガスさんと別れてミックさんとお付き合い。そして結婚。


 しかし、シェリーさんとアンガスさんはお互いを忘れられずに、密かに付き合い続けていたとか。


 ある時、アンガスさんがシェリーさんに横恋慕していることがミックさんにバレてしまい、それをネタに金銭を要求されたそうです。

 脅しの内容は、浮気の疑いをでっちあげてシェリーさんに危害を加えるというものだったとか。

 でもアンガスさんにはお金がないため、体を差し出したとか……。


 ちなみに、お二人の本当の関係自体はバレなかったそうです。


 そして現在。ミックさんが亡くなったことで入った保険金などにより、アンガスさんのご両親も十分な治療を受けられたらしく、快方に向かっているそうで……。


 なんだか、とんでもない愛憎劇を聞いてしまったのでした。


 あら? そういえばアンガスさんとエディ君は、顔立ちや髪色がよく似ているような……?


 私はさらなるドロドロな予感がしましたが、その予感には、気付かないふりをすることにしました。


 こうして、王都東部を騒がした奇病(呪い)事件は幕を閉じたのでした。






◆契約者→呪いの見届け人でもあるため、まだ少し寿命が残っています。

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