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地獄耳のジャスティーナ 〜音量調節魔法は意外と結構、強いです!?〜  作者: 彩紋銅


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2王子様と謀反人と水辺竜

「エ、エルドレッド殿下!? も、申し訳ございません!」


 私は慌ててエルドレッド殿下から身を引き、ドレスの裾を摘んでカーテシーを捧げました。


 こんな時に、よりにもよってこの人と鉢合わせるなんて……。


 エルドレッド殿下は黄緑色の髪と伽羅色の瞳を持つ、眉目秀麗な方です。

 しかし、高身長ゆえの威圧感と常に崩れない無表情のせいか、近づきがたいオーラを放っています。

 王太子になれなかったショックで、素行が悪くなった(グレてしまった)なんて不穏な噂もありますし、少し怖いのです。


「で、では、急いでおりますので、これにて失礼いたします!」


「待て」


「ひゃいっ!?」


 逃げようと……、いえ、急いで立ち去ろうとした私の背中に、低い声が突き刺さります。


「事態を把握したい。その、なんというか、……この異常な騒ぎに、何か心当たりはあるか?」


「この事態──あ!」


『ああっ、ナイジェル様っ』


『ミキャエル……うぅ、もう限界だ……』


 そういえば庭園中に、私の婚約者の浮気内容が絶賛実況中だったわ。音声だけだけど。


 エルドレッド殿下は、この騒音の正体を調査しにきたのね……。こういうのを藪蛇というのかしら? 出てきたのは、よりにもよって王子様でしたが。


 しかしこれは、なんとか誤魔化さないといけません。


「え? えーと? そうだ! それどころではありません、殿下!」


「何?」


 良い言い訳が何も浮かびませんでしたので、エルドレッド殿下も巻き込んでしまいましょう!

 そして、有耶無耶にしましょう!! 

 今夜の私は、とても冴えています!


「実は、アンブローズ殿下を暗殺する計画を立てている、謀反人たちがいまして──」


 って、もしエルドレッド殿下が首謀者だったら、私がマズイのでは!?

 キャ〜、もう遅いけど!!

 流石に今すぐ、首が舞うことは……ない、ですよね?


「なんだと? アンブローズを……!? 一体、どこのどいつだ!」


 あら、意外な食いつき。エルドレッド殿下。めちゃくちゃ怒っている感じです。

 どうやら、首謀者ではないみたい。あるいは、演技でしょうか?


 どちらにしても、今すぐ私がどうにかなることはなさそうです。


「こちらです!」


 私と、エルドレッド殿下は、首謀者たちの元へと急ぎます。


 ◇


「そこの者達、動くな!」


 殿下の鋭い一喝に、密談していた三人の男たちが飛び上がります。


「エ、エルドレッド殿下!?」


「なぜ、ここに──」


 首謀者たちは、噴水近くにあるガゼボにいました。ここなら噴水の音のおかげで、秘密の相談も気にせずにできそうです。

 人数は三人。夜会用の礼服を着ているので、招待客のようです。あるいはそれに扮しているのでしょうか?


 他にそれっぽい人たちがいないか、周りを特異魔法で探りましたが、少なくとも私の音量調節の適用範囲にはいませんでした。

 まあ、声や音を発していない状態なら、私には認識できないのですが。


「お前たちが、アンブローズの暗殺を企てていたことはわかっている。一緒に来てもらおう」


「く、くそ、人払いの魔法符まで使ったのに……」


「オレ達は、エルドレッド様のために──」


「なぜ、計画が……」


「話は檻の中で聞かせてもら──」


『ああんっ、ナイジェル様、──って、きゃああ!?』


『な、なんだ、お前達!?』


 その時、ナイジェル様と浮気相手様の一際大きな声が響き、エルドレッド殿下の言葉を遮ります。

 どうやら、騎士の方々が二人を保護したようです。

 ちょっと、話の腰が折られてしまいましたが……。


「……ここで捕まるわけには、いかないんです! 貴方に王になってもらうために!!」


「──!」


 一人の男性が懐から何か光るものを取り出し、池の中に投げ込みます。

 すると、水面が盛り上がり巨大な何かが現れました。


「下がれ!」


 エルドレッド殿下が、私を背にして庇ってくれます。


 池から出てきたそれは、巨大なトカゲの様な姿をしていました。

 いえ、この大きさのトカゲはいないので、おそらく水岸竜(レイクドレイク)でしょう。湖の岸辺などによくいる魔獣です。うちの領地にも結構いますね。肉質が鶏肉に似ています。

 ちなみに、ドレイクは羽のない竜系魔獣の総称です。


 ……どこから出しました? 召喚したのかしら?


 というか、王宮内でこんな騒ぎ、マズイですわ!


「おい! エルドレッド殿下に向かって──」


「うるさい、少し大人しくしてもらうだけだ! お前達は逃げろ!!」


「──くそっ!」


「わ、わかった!」


 謀反人二人が逃げ出します。


「待て──っ!、チッ」


 逃げる謀反人たちを追おうとすると、水撃がエルドレッドの足元に放たれます。レイクドレイクの水を使った攻撃です。


 彼を王位に就かせたい方々のようですし、相手は王太子殿下なので傷つけるつもりはないでしょうが、状況は良くありません。


 それに、夜会参加者に気付かれると、騒ぎになってマズイですね……。


 仕方ありません。


 私はすっと息を吸い込むと、声に魔力をこめて叫びます。


『逃げないでくださいまし!』


「あっ!?」


「ぐあっ!?」


 私が声を発した瞬間、逃げた謀反人二人が、雷に打たれたかの様に硬直し、崩れ落ちます。


 彼らの耳にだけ、大音量で私の声を叩き込みました。

 おそらく鼓膜が大変なことになっているでしょうが、死んではいませんのでおそらく大丈夫でしょう。

 回復薬でも飲ませればすぐ治ります。


 レイクドレイクの使役者を残したのは、行動不能にするとレイクドレイクが暴走する可能性を考えてです。


「──なっ!?」


「──!」


 さて、どうしましょう。

 臣下《貴族》として、エルドレッド殿下は守らなければいけませんけど、普通の令嬢でしたら、殿下に守られた方が良いのでしょうか?


 私、婚約者はいましたけど、婚約が結ばれて以降、お互いの邸宅でお茶会するぐらいしか親交がなかったので、殿方との関わり方がいまいちわからないのですよね〜。


「ご令嬢は、下がっていなさい」


「あ、はい!」


 どうやら守られていれば良いようです。

 しかし、ここは王宮内の庭園。すぐ近くでは今も夜会も行われています。

 大掛かりな魔法は使えないでしょう。


 エルドレッド殿下は剣も携えてはいますが、式典用の装飾品がゴテゴテしたもの。実戦には不向きかもしれません。

 というか、汚させるのはよろしくない気がします。

 高価そうだし!


 というわけで、またしても仕方がないのです。


 私は再度、息を吸い込み叫びます。


『あなたは、サヨナラですわ!』


『グギャッ!?』


 レイクドレイクの三半規管にも深刻な損傷を与えます。こちらは先ほどのお二人とは違い、骨伝導を利用して脳の方へも深刻なダメージを与えておきました。

 レイクドレイクは耳から血を吹き出してその場に倒れ、青い光となって消えてしまいました。


 実体ではなかった? 

 いえ、あれだけの音量でダメージを受けなかったのだから、生きている存在だったはずです。


 っと、そんなことは後でいいわ。


「エルドレッド殿下、今のうちに──」


「う、うむっ!」


「ぐわっ」


 エルドレッド殿下は、レイクドレイクの使役者に駆け寄ると、思い切り殴り飛ばしました。


 避難していただきたかったのですが……、まあいいか。


 ◇


 その後、謀反人達はエルドレッド殿下が呼んだ騎士達によって、連行されて行きました。

 もちろん、ちゃんと生きていましたよ?


 庭園の騒ぎも、ナイジェル様達の不謹慎な実況中継に皆の注目が集まっていたおかげで、バレてはいないようです。

 まさに怪我の功名ですね。


 これで一件落着、帰りましょう。


「では、私もこれで……」


「いや、待て」


「え?」


 エルドレッド殿下に呼び止められてしまいました。

 なんということでしょう。とても嫌な予感がします。


「君には、話を聞きたい」


「話、ですか?」


「ああ、聞きたい事が山ほどある」


 エルドレッド殿下は、鋭い眼差しでこちらを見てきます。


 あら〜、マズイですわ〜、とってもマズイですわ〜。


「謀反人たちは、夜会会場からかなり距離がある場所にいた。一体どうやって彼らの話を知ったのだ? 

 そもそも、謀反人二人とレイクドレイクを倒したのは、君だな?」


「え? え〜と、それは、その……、私耳がとても良いので〜」


 ああ〜、そういえば最初は彼らの計画を偶然聞いていたという体にする予定でしたのよね〜。

 途中でエルドレッド殿下にバッタリ出会ってしまったので、予定が狂ってしまいましたわ〜。


 メッチャ、マズイですわ〜。


 エルドレッド殿下の顔が目の前に迫ります。不信感とか怒りというより、興味津々といった表情です……。より、タチが悪いやつです!


「それに、ついさっきまで庭園で、醜態を晒していた男は、君の婚約者だろう? 無関係とは言わせんぞ? ジャスティーナ・サルビア伯爵令嬢」


 あら、私の素性もバレてます。これはもう、逃げられませんね……。


「……場所を変えよう。じっくりと、話をきかせてもらうぞ?」


「はいぃ……」


 ヒエェ〜、圧の強い顔でそう言われては、断る勇気はありません。


 こうして私も重要参考人として、殿下に連行される羽目になったのでした……。








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