翠色の初夏
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俺、白川は絶望している。
「やばい……このままだと赤点だ…」
水の滴った三ツ矢サイダーを一口だけ飲み、栢山は参考書に目を落としながら答えた。
「赤点で済んだらいいな、片山先生が言うにはお前あと1欠で夏休みは補習地獄だとよ」
こいつはまた他人事のように。
「てか俺は元から忠告してたからな。」
そう言いながら理論化学の参考書を捲るこの男は栢山 圭。俺と同じ2年1組の同期で文芸部のよしみだ。
「助けてくれてもいいんだぞ栢山少年っ」
2人きりの部室に俺の声が揺らいだ
ここは旧校舎3階の文芸部の部室だ。旧校舎だから冷暖房は無く、あるのは図書室から廃棄となりもらい受けた本が大量に詰まった本棚、そして4畳くらいの大きな机が1つ、それを取り巻くようにある椅子が数席だけだ。そして一応、吹奏楽部や軽音楽部はここ旧校舎に部室があるが、2階にあるからもちろん接点なんて無い。
完全に孤立した文芸部のためだけの場所だ。
「助けろも何も、お前何教えても分かんねぇじゃん」
そう笑いながら言った栢山は窓の外を軽く眺めた。俺も気になり外を眺めると、すぐそばでは翠色の葉が夏の乾いた風に揺られている。そして、いかにも初夏らしく澄みわたる空には真っ白な入道雲が沸き立っている。
「で、テスト、どの教科がやべぇの?」
風鈴のように落ち着いた声で、また参考書に目を落とした栢山は聞いた。
「国語だな。やっぱり分かんねぇや、作者の気持ちとかそういうの。」
「それなら七夏に聞いたらどうだ?あいつは国語だけ得意だし聞けば何かわかるんじゃないか」
親しげに栢山は鈴木の下の名前を口に出す。
「得意かどうかと教えられるかどうかは別問題じゃん、特にあいつは」
鈴木 七夏、俺たちと同じ文芸部の部員で2年4組、別のクラスだ。そこそこ優秀な奴で、普段の素っ気無い性格とは裏腹に文芸部ではいつもにこにこしている向日葵みたいな奴だ。今は先生に質問に行くために旧校舎から徒歩2、3分ほどの場所にある本校舎の職員室に行っている為に席を外しているはずだ。
喉が渇いてきた。栢山は飲み物があるが俺は水筒はあるものの中身はすっからかんなことに今更気づく。
「俺今から下で飲み物買ってくるけどなんか
いるか?」
「んー、じゃあ冷たい三ツ矢サイダーで」
相変わらず参考書に目を落としたままだ。
「ついでに鈴木の分も買ってこようと思うんだけどあいつ何が好きか知ってるか?」
俺は最近になってようやく鈴木と仲良くなったばかりだ。というのも1年の頃、俺はここ文芸部にはほとんど顔を出さなかったからだ。しかも、栢山は去年鈴木と同じクラスだったこともあり、こいつに聞いた方が早い。
「確か珈琲だな。微糖が好きだったはず」
了解、と短く答えると俺は財布を片手に
教室を出た。
次回
教室を出た白川は蒸し暑い中旧校舎を歩く。
階段を降りるとそこでばったりと
七夏と遭遇するのだが……
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