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第49話 相棒

「御機嫌よう。ほんまにお元気になられましたなぁ」


「アンシステ……」


「ドーラはん。ええ回答は貰えた?」

「これから真に迫ろうと……」

「あら。えらいのんびり屋さんやなぁ」

「……面目ございません」


 項垂(うなだ)れるドーラ。


「ええんよ。ウチも直接聞きたいな思うとったさかい」


 アンシステ代表がずいと迫る。

 ボリュームのある長髪、俺より一回り高い上背、豊満な乳房。何もかもが威圧的である。


 俺は息を飲む間もなく首を縦に振った。


「ん? どうされました?」

「もどります……」


「あら。もう少し抵抗してくれはっても宜しいのに」

「いえ……! 新ギルドの皆様の厚意、ドーラ隊長からしかと承りましたので……!」


「そうなんですの? ドーラはん」

「えぇ。カナタ君、ナイスです」


 アンシステ代表は、どこか残念そうに宙を眺める。

 了承してもこの反応。しかし断っていたら、反応はもっと不味い事になっていただろう。

 俺の判断は正しい。悪か、最悪かの違いだ。


「ほんならお外で待っとりますから。ご準備出来たら降りて来てくださいな」


「……え?」


「すぐにギルドに戻らんと。ウチもお仕事たぁくさん残して来とりますから。ほな」


「……いや、俺、起きたばっかり……」

「ナーはんがいらっしゃるんでしょ? 様態変わりはっても大丈夫」


「んな無茶な……」

「カナタ君止しなさい。無駄です」


 アンシステ代表はニコリ微笑み部屋を後にした。


 強引というか……何というか……。


「なんか……めっちゃピりついてたね」

「魔力も殺気立っていました……!」

「なんでワクワクしてんの」


「……アンシステ代表は、この街へ『SEC』との交渉の為に参られたのだよ……恐らくその席で、大分と気を悪くされたのだろう」

「うへーこわー」


「……ともかく準備しよう……待たせると後が怖い」


「その通りだ……ナー君。一先ず動けるようにしてくれたまえ」



 そこからは慌ただしく、ギルドに戻る用意が為されていく。



「できるだけ傾けない様に持ってください……液漏れの恐れがありますし……」

「分かっとるわーい」


 俺の世話はナーさんとヌルキである。

 階段を降りる時にゃ俺を支えてくれるのだ。


「……おいヌルキ、くっつき過ぎだ」

「えー。これでも我慢してるのにー」


「私からも忠告しておきます。くっつき過ぎですよ。カナタくん」

「俺かよ」


「カナタさまくさーい」

「風呂入ってねぇんだ。嫌なら離れろ」

「そうですよ。離れた方がいいです。カナタくん」

「おかしいだろ」


 ドーラ小隊も共に戻るのか。余程大所帯だな……。

 まぁ賑やかいのは構わねぇ。むしろ喋らねばと思わなくてよい。非常によい。


「……そういえばシュレッゴンは?」


「あーあいつー? 一旦”しっこーゆーよ”だよ」

「執行猶予?」

「そ。ね? ナー」


「説明、めんどくさがらないで下さい」

「代わりに話してー」


「もー……シュレッゴン君は今、拘束されています……罪状はありませんが万一の為」

「まぁ俺は殺されかけましたからね」


「はい……ただ彼の行った事はルール上、何の問題もありません……実際に命を奪った訳でもありませんし。実害は出しましたが、あくまでもカナタくんに対してだけです……」

「んな話、通るんすか……?」


「ですが、ギルドのルールは変わりました……故にシュレッゴン君の判決も難しく……今はアンシステ代表の監視下に置かれるという状況に……」

「あぁ……はは。そうなの」

「死刑よりやだよねー」


 死刑より嫌だ。確かにそうだ。しかし口を慎め。聞こえたらどうする。



「……? じゃあ、ドーラ隊長って相棒(バディ)いなくなったんすか?」

「そ、そうですね……」

「そりゃあ……大変っすね」



 ギルドには二種類の人間が居る……。


 ギルド直属の者と、ギルドの直属の隊の者……俺は元々前者、ドーラ達は後者。

 ギルド直属……俺みたいな奴はギルド長の命令に従う。勝手に依頼を受けたり、勝手に出動したりは出来ない。当然、勝手に休んだりも出来ない。


 一方の小隊所属の者達は、ギルド長から指揮権を任された隊長を中心に、自由に依頼を受け、自由に活動できる。

 ただし、その分の責任がのしかかり、実力も必要になる。


 隊の中心戦力であったシュレッゴンの離脱は、実質的な隊の解体にもつながる。



「こりゃ小隊の活動もおしまいかなー」

「……う、うん……」


「あ。そうだカナタさまー」


「んだよ」

「カナタさまがギルドに戻るってことはー。ルペールも戻るの?」


「……あぁ」

「じゃあ、カナタさまってルペールと組む感じ?」


「……どうだろうな。ギルド長の気分次第だろ」

「お。じゃあボクも狙っていい感じ?」

「おめぇにはナーさんが居るだろうが」


「そ、そうですよヌルキ!」

「小隊が無くなるってことはさー、どうせボクらも組み直しだって」

「分からないじゃないですか! 今だって、こんなに凄いコンビネーション……」

「そうかなー?」


 ……まぁ正直、俺はルペールと組みたい。

 やりやすいし、()()()()()()()()()は、もうしないさ……。


 ただ、フェンはどうなるのだろう……。


 まぁ全員がギルドに所属する必要はない。

 新ギルドが追放者にも、獣人にも寛大であると言うのをアピールするだけなら、俺さえ所属しておけば良いのだし……。


 ただ、もしもフェンがギルドに入るとなったら、彼女の相棒(バディ)は誰になるのだろう……。


 まさかドーラ……まぁアイツなら安心だが……何だかモヤモヤする。


 しかし、まったく別の奴というのはよりいっそ嫌だ。

 欲を言えば俺の傍に……。


 …………。


 ……いやいや、何を考えている。俺キモ。

 そもそもフェンは誰の者でもないではないか。彼女が誰と組もうと俺に関係はない……。魔力が不足した時にだけ、供給してもらえればそれで良い。


「着きましたよ。カナタくん」


「あ……あぁ」


「さーさー。足元お気を付けてー」


「おう……」


 立派な馬車が二台。狭い路地裏の先に見える。


「前の馬車にはシュレッゴン君が乗ってます」

「じゃあ後で」


「あ。でも大丈夫ですよ。アンシステ代表も前に乗ってます」

「じゃあ後で」


「じゃあ前の馬車は二人っきりなんだねー。シュレッゴンおつー!」


「おいおい……後7人で乗るのかよ……」

「仕方ないですよ」

「仕方ないねー」


「……まぁそりゃそうか」


 シュレッゴンの助けを呼ぶ声が聞こえ、ないでもないが、俺達は知らぬフリをして馬車に乗り込む。


 馬車の中は狭く、すし詰めのままに出発を待っていた。

 俺が乗り込むなりブリッツが唸る。


「おめぇらもこっちかよ。せめぇな。コラ」

「じゃあ前行け。あっちは空いてっぞ」

「無理言うな」


「喧嘩は止したまえ。ここはジャンケンでいこう」

「どういうつもりだ」

「負けた者が前だ」

「……」


「なにジャンケンって」

「……木の葉とハサミと石と井戸をだな……」

「何だか複雑そうですね」


「まったく説明が面倒だ。ルールの分かる者だけで行う」

「ふざけんな」

「とはいえ座るスペースも無い。カナタ君、早く手を出しなさい」


「……他に分かる奴は??」


「知らねぇよ。コラ」

「わかんなーい」

「申し訳ございません。私も分からず……」

「二人だけじゃない?」


「あ。私も一応分かります」

「じゃあナー君とカナタ君、手を」

「畜生が」


 俺はハサミを出した。


 俺は負けた。



「あら。コチラに来はられたんです?」


「……よろしくおねがいします」


 馬車は、まもなく動き出す。

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