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第48話 謁見『獣人代表アンシステ』

「ギルドに戻れと……? 嫌です」


「驚くのも無理はない。ただね」


「嫌です」

「……ただね。これには深い訳があるわけだよ」

「嫌ですってば」

「ドーラ。諦めなよ」


「なんなんだ君達は」


「まぁ落ち着けって。オレの話からしたらどうだ。コラ」


 そうだブリッツの気も知れない。

 俺達は散弾銃を撃ちこまれ、毒ガスを撒かれ、夜道まで執拗に追われたのだぞ。

 ブリッツは確かに当事者では無かった。ただあの惨状も知っているじゃないか。


「……ブリッツ、ギルドなんかには入るな」


「てめぇうるせぇな! 話聞け! コラ」

「ブリッツもキレてんじゃん」

「こいつうるせぇんだよ! 話の腰おりやがって!」


「……カナタ君。”ギルド長選挙”の話は覚えてるかね?」


「あー……? なんの事でしたっけ……」


「ギルド長が病死為されたのでね、それに際して副ギルド長の”エリタージュ”と新進気鋭の”シオン”がギルド長となるべく手を挙げた……」


「……そんなような話、してましたね」


「えぇ。その選挙が決着したのだよ。勝者は”シオン”だった」

「ほぉ……」


 シオンが新ギルド長……古参の俺ですら名前も聞いた事がない奴だったが……そう思えば大した躍進だ。

 ただアイツがトップじゃ余計に戻れない。アイツ、執拗に俺を追いかけて来やがって。


「順当に行けば”副ギルド長(エリタージュ)”だったろう。だがシオンが勝った。それはなぜか……エリタージュは過激すぎたのだよ。まるで前代の生き写し……いや、彼の死を受けそれ以上に狂暴化した」


「……狂暴化?」


「此度、我々を急襲した者達……あれはエリタージュ派の者共。各地で追放者を殺して回ったそうだ」


「? んでそんな、選挙で不利になりそうな事するんすか?」


「むしろ()だ……選民思想というのかね……追放者に確固たる態度を取れば有利になるなど考えていたのだろう……少なくとも前代はそうやっていたからね。まぁ節度は護っていたが」



「エリタージュが負けた理由は、まぁ分かりましたよ……俺は戻りませんけどね」


「そうだ。エリタージュの負けた理由は話した。ただ”シオンが勝った理由”を話していないではないか。急くんじゃない」


「……まぁ、そうですけど」


「シオンは、ギルドの形態を軟化させた。追放者の再びの受け入れ、獣人の待遇配慮……他にも多くの制度を見直すとのことだ」


「シオンが追放者を受け入れぇ? んな事するわけ……」

「まぁ表面的に主張しているだけかもしれん。ただ、間違いなくギルドは変わる」


「……」


 ギルドは、変わる……。


 良い方向か、悪い方向か……それは知れない。

 だが”変わる”というのは間違いない。


 これまで虐げられていた獣人が代表となるのだ。


 俺は、獣人にも分け隔てなく関わっていたと自負している。

 そんな俺でも、多くの戦闘を獣人に頼り、多くの雑務を獣人に任せて来た……。能力として、獣人の方が効率が良いからだ……。


 抵抗する奴は、デモリールで言う事を聞かせた……そんな奴も居た。


「ギルドは変わる……善にか、悪にか……少なくとも転換点なのだ。そこでカナタ君、君にはシオン政権のシンボルになって欲しいのだ……」

「シンボル……」

「”追放者(きみ)”が加われば、新ギルド長は信用に足る存在に成れる」


「…………」


 それは結局、俺を利用しようとしている、という話ではないのか?


「か、カナタ……怖い顔してるけど……?」


「……ルペール、どう思う?」

「え」


「俺が戻るなら、お前も一緒だ……としたらどう思う?」


「……うーん」


「……俺は、結局ギルドの為なんだって思うと、どうにも納得がいかねぇ……シンボルなんて言われてもな」

「……それはそうだけど……」


「君達にも相応の待遇をしてもらう……身の安全の事は勿論、君が”神獣”を見つけることにも協力しよう」


「……”神獣”……なんのことっすか」

「君の中の悪魔……タウダスと言ったか? 神獣の魔力が要り用なのだろう?」


「……ルペール、フェン、お前ら喋ったろ」

「う」

「も、申し訳ありません……」


 嫌なカードを握られた……。

 確かにタウダスの為、神獣との接触は願いたい。フェン一人では限界がある……それと俺を案じすぎて融通を利かせてくれない。


 ギルドの情報網も馬鹿にならない。

 それにギルドと関係の深い国や街も探せる……悪い条件ではない……悔しいが。



「……だがよドーラ……」

「なんだね」

「そんなのお前が決めて良いのかよ……」

「ワタシの独断な訳あるまい」


「じゃあ誰の……」


「アンシステ代表だ」


「アンシステぇ??」

「あぁ」


「そうなんだよ! 今はいないけどね」

「……いないって、この街に居んのか??」


「えぇ。野暮用で……カナタ君の事も気にかけて下さってたよ……」


 ……アンシステ……獣人代表。

 ギルド長存命期、獣人への不当な待遇や格差に対し声を上げ、人間と獣人の関係を取り持った強かな獣人だ……。故に獣人代表などと崇められている。


「フェンも会ったもんね」

「はい。お菓子を頂きました」


「懐柔されてる……」


「獣人には滅法優しいからね。あの人は。証拠にブリッツ君は貰えませんでしたから」

「るせー」

「……まぁあの人らしいが」


 アンシステ代表まで乗り込んでくるとは……余程シオン政権に腰を据えているらしい……。

 本当に、彼女がココに居らずで良かった。恐らく断れなかったろう。


「……おい、オレの話はどうなった。コラ」


「……今更する必要あるかね?」

「あ・る・だ・ろ! ……いや、ないのか?」


「……そういえばそうだ。お前だって『SEC』の事嫌ってたじゃないか」


「お? おぉ」


「今回の……俺はギルドに殺されかけたがよぉ……『SEC』も一枚噛んでる……ギルドと『SEC』の繋がりは明白だぜ?」


「おう。らしいな」

「ならよぉ……」


「その事については、やはり私から話そうじゃないか」

「お前喋り過ぎだ」

「仕方ないだろう。この方々よりは賢い」

「ぶん殴るぞ。コラ」


「……ゴホン。『SEC』と癒着していたのは”エリタージュ派”です。彼らは『SEC』にデモリール兵器の製作を依頼していた……新ギルドに『SEC』は必要ない」


「倫理はどうした」


「獣人なんて狂暴な生物を無力化できるんです。なんて倫理的なんでしょう……そういう事です」

「……やっぱり戻らねぇ事にするか……」

「だからエリタージュ派はもういないと言ってるだろ」


「……話を戻すぞ……コラ」


「おぉ」


「でもりーる? っつうのは無くす……だがよぉ、無くしたとしても獣人に頼り切る現体制が残っちまったら意味ねぇだろ?」

「まぁ……?」


「おう。だから獣人に変わって”働き手”が必要なんだよ。そうだよな。コラ」

「えぇ。そこで目処が立ったのが彼女の兵器なのだよ。獣人は前線から退き、機械に危険な事は任せようと……そういう事さ」


「……ま、まぁ良いんじゃねぇか? ブリッツは大変そうだが」


「へへ。発明し甲斐があるってもんだ」

「こんな感じなんで大丈夫さね」


「……そうか」


 ブリッツは前向きか……かくいう俺も……ルペール、フェンの安全や生活も確保され、神獣まで探せる。

 今のように遭難だの、暗殺だの、怯える日々ともおさらばか……。


 正直、約束が果たされるなら……これ以上ない待遇だろう。


 後は俺のプライドばかりか。


 ただ、そんな薄っぺらい抵抗は、彼女の声を聞いた途端に掻き消える。


「カナタはん……目覚めはったん?」


「あ」

「あ!」

「あー……」


 透き通った、低い女性の声。

 包容力とでも言うのか、大らかとでも言うのか。

 ただ聞いた途端に、背筋が伸びるのは何故だろう……。


「えらい盛り上がっとりますなぁ」


「アンシステ代表……」


「御機嫌よう。カナタはん」

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