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第41話 夜道で迫る

 雲の照りを目指して、昼に来た道を急いて戻る。

 街灯が点滅し、その度に道の先が闇に飲まれるのだ。


「ドーラ達なにしてんだろうね」


「さぁな……」

「『科学展示会』に行ってらっしゃるのかもしれませんね」

「なんだっけそれ」


「確か……ロボットが見られるとか」

「お! いいじゃん! そこ行こうよ!」


「ギルドの奴等が居るんだろ……? 遠巻きに眺めるだけなら良いが……」


「うーん、それでもいいや! 行こうよ!」


「……ったく」


 まぁドーラ達とも合流できうるし、行く宛もありゃしない。

 それにルペールやフェンの嗅覚聴覚も使える。細心の注意を払えば危険は避けれる……。


 追加オプション……索敵レーダーか……確かに便利だったかもな。


 いや待て。んな得体の知れない物……電波が脳に悪影響を与えるかもしれない……!


「? カナタ黙っちゃった」

「疲れてらっしゃるのでしょうか」

「かなー」


 そもそも何をもって敵とするかが重要だ。敵意など探知できる筈がないだろうに。

 科学は計り知れんが、奴の発明品は少々オーパーツめいているというか、本当に機能するのかも疑い甚だしい。


「何考えてるのかな」

「ブリッツ様のことでしょうか?」

「はぁー? いまさらー??」

「どうなんでしょう」


「ちょっとフェン頭はたいて!」

「えぇ、それは流石に可哀想ですよ」

「いいの! コイツのせいで飛び出して来ちゃったんだし……!」


 俺のせいだと……? 馬鹿言え。

 確かに俺が言い出しっぺだが、ルペールを想っての事だ。わざわざ言いはしねぇが、んな事も知らずに……。


 いや、知らぬわけがない。


 俺の性格なんてものを、ルペールが分かっていない筈がない。

 俺は優柔不断で押しつけがましいクソ野郎だ。


「そ、そうでしょうか、し、失礼します……!」

「やっちゃえー!」


「オイ」


「あ」

「やべ」


「…………」


「……?」

「? か、カナター?」


「フェン。俺を殴ってくれ」


「ふぇ?」

「お」


「殴ってくれ。気が迷ってる」


「何言ってんだ」


「よ、よろしいんですか……?」

「構うな……死なん程度に頼むぞ」


「は、はい……! えい!」


 側頭部に鋭い痛み。視界が揺らぐ。


 俺はルペールを想ってかの研究所を飛び出した。

 それと同時に、ルペールも俺のことを想っていた。それを汲み取らずの糞野郎は、殴られて当然である。


 しかしちょいと強すぎだ……。


 視界が揺らぎ、隅の方がぼんやりと暗くなる……。

 瞳の周りが熱くなる……。


「……大丈夫?」

「ご、ごめんなさい! 叩いたことなんて無くて……」


『良い。久方ぶりじゃ』


「え?」

「あ。悪魔様」


 今は出て来るな。複雑になってややこしい。


『複雑な物か(たわ)け。貴様”神獣の魔力”の補給が滞っておるぞ』


 あ……あぁ、そうだ。コイツの身体を回復させる為、俺には魔力が必要なのだ……。

 しかしだな……俺達にだってやらねばならん事が山積み。今しばらく待ってくれ。


『ぬかせ。妾の魂まで崩壊したらば如何(どう)する?』


「? 誰と話してんの?」

「さぁ?」


『……其処の銀髪。寄れ』

「え?」


『寄れ。カナタの身体を返してやるでな』


「は、はぁ……」

「ココはノッときな」

「わかりました……」


 待て。何する気だ。


『魔力の供給じゃ。邪魔するでないぞ』


 邪魔も何も……入れ替わりだって簡単じゃないんだぞ。


『なら良い。ちょいと接吻するだけじゃ』


「え」

「は?」


 あ?


『早う寄れ』


 フェンの白い肌が、真っ赤に火照る。

 俺も動揺が隠せない。


「む、む……」


『む?』


「無理ですー!!!!」


 駆け出したるはフェン。正直助かった。

 魔力の供給、免罪符があるとは言え、フェンの唇など奪えない。申し訳ない。


『言うとる場合か。追うぞ』

「ちょ、ウチも連れてってよー!」


 そ、そうだぞ! せめてルペールを連れてけ……。


『面倒だのぉ。見失った時は貴様の魔力を貰うぞ』

「い、いいよ?」


 良くねぇよ馬鹿野郎。


 タウダスが車椅子を担ぎ上げ、夜の道、フェンの逃げた方角へ走り出す。


 トタタと夜の石畳を駆け、知ってか知らずか『SEC』の本拠地へと接近していた。

 この頃になると人通りもチラホラと増えてくる。


 ……車椅子を担いだ存在が、少々悪目立ちする具合である。

 おいタウダス。目立つんじゃない。


『貴様が担げと言ったんじゃろうが』


 良いから。降ろして押して進め。


『それでは遅いじゃろうて』


 ……目立つとフェンに気付かれる。隠密に近づくんだ。良い案だと思うだろう。


『……仕方ないのぉ』


 タウダスは車椅子を降ろし、大人しくする。

 顔は不服に歪み、今にも走り出しそうに疼いている。利口に言う事を聞くとは思っておらずで、面喰う。


『貴様、妾を侮っておるな』


「ねぇさっきから独り言ばっかキモイんだけどー……! 誰かたすけてー!」


『騒ぐな! 銀髪に見つかったらば如何(どう)するというに……』


 早く入れ替わりてぇ。コイツ等うるせぇなぁ……。


 どうすれば入れ替われたのだったか……確か気持ちを静める……もしくはタウダスが強い酒を呑んだらば替われた筈だが……。


 つまりどちらが”交代スイッチ”を押すか、という話だ。合図は”興奮”。

 俺が興奮すればスイッチが押され、タウダスに替わる。興奮が冷めれば元に戻る。この時、主導権は俺にある。

 かえってタウダスが興奮すれば俺に成り、冷めれば元に戻るのだ。この時の主導権はタウダスである。


 気を静めれば元に戻れる。

 まずはここで一呼吸。


「どーん」


 ……?


『……』


 背に、誰かの指が触れた。細い指だ。


「ヌルキ」


 背後に立つはヌルキ。彼女は拳銃を手で(かたど)り、俺の心臓を撃ち抜くポーズをしてみせた。

 正直コイツは間が悪い。


「はい。カナタさまは死んじゃいましたー。油断したねー」

「なにしてんの」

「おやおやルペール。夜のデートかねー?」

「あ、いや……」


『小便女か』


「え」

『何じゃ。また絞められたいか』


「ちょ、はぁ? また入れ替わってんのー?」


「今刺激しない方がいいよ」

『……延命の為、貴様の魔力でも構わんが』


「魔力? なんのことー?」


「だ、ダメダメ! ヌルキとチューとかダメ!」

『粘膜さえ触れれば良い。ただし性交だけは無しじゃ。貞操は妾が貰う』

「は、はぁ?? あほかー! 外だぞー!」


「……カナタさまとキスねー。ワンチャン……?」


「アンタも想像すんなー! クソ、ウチに手足があれば……!」


 ……もう少しこのままで居よう。体力が持たん。


 ……しかしヌルキに出会えたのは都合が良い。ドーラ達が何処に居るか分かるじゃないか。

 おい、タウダス。小便女に仲間の場所を聞いてくれ。


『……? おい小便』


「その呼び方やめてー」

『貴様の仲間は何処に居る?』

「あー」

『カナタが聴けと申しての。何処じゃ?』


「……ちょっと人気のないとこ行こっか」


「あ! ヌルキ! チューはダメってば……」


「違う違う。聞かれちゃまずいの。じゃないとカナタさま死んじゃうよ?」


 俺が……?


『……如何(どう)いう事じゃ?』

「ギルドの奴等が来てたんだよねー。さっきの”どーん”もあながち間違いじゃないんだよー」

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