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第1章 ゲームの世界へ転生

(何も見えない、、、そうか、俺は死んだのか、、。)


 毒で死んだせいか、お腹が痛む。それもかなりズキズキと。


 (ん?痛い?待てよ感覚がある!?)


 その痛さに堪らず目を開ける。すると、透き通るような晴天の空と見覚えのあるような恐ろしくでかい大樹が聳え立っていた。


 (フゥー、ひとまず、状況を整理しよう。ここはどこだ?森の中なのか?手は、、、よし動く、ちゃんと指も、、うん、動くな。)


 仰向けのままとりあえず状況整理を始める。


 (俺は死んだんじゃなかったのか?)


 そう思いながら体の動作確認を行い手を顔の前まで運んでくる。


 (ん?なんか俺の手小さくないか?)


 そんなことを考えていると突如頭に声が響いた。


《魔物からの攻撃を感知、直ちに戦闘の準備を行ってください。》


「うわっ!?」


 突然の声に思わず驚いて声が出てしまう。


「あ、普通に喋れる。」


 (というか、なんだこの声まるで声変わりする前の子供の声じゃないか!?まさか!?)


 そう思い、長年連れ添った息子の姿を確認すると、なんとも頼りない姿となってしまった息子がそこにあった。


 (ツルツル、、、たがまぁ未使用なのはおんなじか。)


「というか、誰かいるのか!!?」


 先ほど聞こえた声に問いかけてはみるものの、返事は帰ってこない。


辺りを見渡すと誰もいないが、一匹のツノの生えたウサギがいた、しかしウサギというには少し大きい気もする、そして明らかにこちらに向けて敵意を向けてきている。


 (さっきからコイツに攻撃されていたのか、って、待てよ俺はコイツを見たことがある。)


「ホーンラビット?」


 《是、個体名ホーンラビットLv3》


 思わず口をついて出てしまった言葉を肯定するかのように再び頭に声が響いた。


 (やっぱり、そしてこの大樹の名前はもしかして、神樹ユグドラシル?)


 《是、神樹ユグドラシルで間違いありません》


「え、頭の中も読めるのか!?というか、誰が俺に喋りかけているんだ!」


 そんな疑問にすら答えてはくれず、続け様に再び声が頭に響く。


 《只今よりチュートリアルクエストを開始いたします。目の前の魔物を倒してください》


 そう告げられると目の前の何もない空間から剣が一本出てきた。


「あー、もうやるしかないのか。」


 目の前に出てきた剣のつかを握りしめ、対峙するホーンラビットを迎え撃つために正面に構える。相変わらずこちらに敵意を向けてきている。ここがもし俺の知る世界と同じなら、コイツの攻撃パターンは一つだ。正面への突進。それさえ避けてしまえばあとは切るだけ。つまり俺がすることは単純、初撃の突進さえ避けてしまえばいいわけだ。


 そう思い、きたる突進に備え腰を落とし構える。


 ホーンラビットが突進のために後ろ脚に力を込める。


 (来る、!!)


 ドッと音と共に土煙を巻き上げながら、ホーンラビットの象徴とも言える立派なツノで俺を貫こうと迫ってくる。


 避けようと体を構えてはいたものの、目の前に迫る殺気に萎縮してしまう。


 (やばい、結構ビビってる。ゲームしてた頃と迫力が違いすぎる。あまりにリアルすぎないか。)


 足が震え、頭の中で思い描いていた回避行動を取ろうとしても思うように足に力が入らない。


 その一瞬の怯えを目の前の魔物は許してはくれない。


 もうすぐそこまで魔物が迫ってきている。瞬間、辺りが一瞬スローモーションになって見えた。


 (やばい、これ死ぬやつ、、、)


 半ばヤケクソで持っていた剣を振り下ろす。


 ガキィン!!!


 ツノと剣がぶつかり合い火花が散り、その衝撃で剣は弾かれ、手から離れる。ホーンラビットのツノも折れている。


 (やばい、まぐれで当たったけど、武器が!)


 弾かれた剣は遠くに飛ばされており、再び突進をしようとするホーンラビットを迎え撃つには距離がありすぎる。


 しかし魔物はそんなこちらの都合を無視し、再び足に力をこめている。


 (ビビるな俺!こんなの何度も経験しただろ!そろそろ覚悟決めろ!)


 再びドッと地面を蹴る音が聞こえ、こちらにホーンラビットが突進してくる。


 剣よりも僅かに近くにあった、欠けたホーンラビットのツノの先端を両手で構え、片足を後ろに引き突進を半身になり躱す。突進する対象を失ったホーンラビットは大樹に激突し、脳震盪でも起こしたのか、硬直している。その隙を逃すわけにはいかない。


「ゔうぉ!!!!」


 持っていたツノをホーンラビットの目を目掛けて思いっきり振り下ろす。見事に攻撃は命中し、ツノが刺さった部分から血が滴り落ちる。ホーンラビットはしばらく痙攣したあと動かなくなった。


「やった、、、のか?」


 そう思ったのも束の間、ホーンラビットの死骸はパッと光の粒子となって消えてしまった。


 《チュートリアルクエスト完了、これよりチュートリアルを終了し、システムのアップデートを開始します》


 勝利の余韻に浸らせてくれもせず、淡々とした声が頭に響いた。


戦いが終わったばかりの俺の頭にシステムの声が響いた。


 《告、システムのアップデートにより職業とステータス、スキル、ガチャが解放されます、およびプレイヤーの記憶を分析した結果、知られるはずのない知識を無数に確認、エラーコードとして処理します。》


 しばらくの沈黙の後に再び声が響く。


《エラーコード確認、これらの記憶を抹消する必要あり。もしくはシステムの監視下に置くため、以下の記憶を記録として保存しますか?了承がいただけましたら、あなたの覚えていない記憶の細部に至るまで、いつでも閲覧できるようになります。》


「あ、はい、、、。」


 戦いを終えたばかりの放心気味な俺はそう答えることしかできなかった。


 《了承を得ました。只今よりシステムに介入し、記憶を記録します。エラー、エラー、申し訳ございません。これらの記憶はメインクエスト、果てはこの世界に影響を及ぼすため違う形での保存が必要。システムに介入、以下の記憶をスキル【世界の知識】に改変。》


 《告、固有スキル【世界の知識(ワールドレコード)】を獲得》


 《続いて職業の選択に移ります。対象のパーソナリティ、記憶を元に最適な職業を提示します、、。》


「ちょ、ちょっと待ってくれ、時間をくれないか?頭の中を整理したいんだが。」


 あまりにも淡々と行われる決定についていけず言葉を遮る。


 《分かりました、では考えがまとまり次第、システムONと唱えてください。》


 そういうと、再び当たりが静寂に包まれた。


 ひとまず興奮し切った脳や体を落ち着かせるために深呼吸をする。


 スゥーーーー、フゥーーーー、、。


 (よし、だいぶ落ち着いてきた。というかやっぱりここは俺達が作ったCastle Frontierのゲーム内だ。)


 先ほどの戦闘や、神樹からそう結論づけることにした。何より神樹に目をやると説明文が出てくる。


 ………………………………………………

 名称 : 【神樹ユグドラシル】

 Castle Frontier内のワールドマップ中心部に生える神樹であり、神樹の生態は謎に包まれている。また、神樹の葉、枝、根、実など余すことなく伝説級の素材であるとされる。

 【採取可能】

 採取しますか?

 《Yes : No》

 …………………………………………………


 (なんだこの説明、こんなシステム俺は作ってないぞ、それに神樹の素材はメインクエスト終盤のイベントを終わらせた後、様々な依頼をこなしていく過程でやっと採取できるようになる素材だぞ。そしてなんだこの固有スキルは、意味がわからないことだらけじゃないか!)


「ステータス」


 そう呟くと画面に自身のステータスが書かれた半透明な画面が現れた。


 …………………………………………………

 名前 : 未登録

 レベル : 1

 職業 : 未登録

 攻撃 : ???

 防御 : ???

 速度 : ???

 知力 : ???

 魔力 : ???

 【スキル】

 《なし》

 【固有スキル】

 【世界の知識】

 ………………………………………………………


 (よし、このシステムに変化はないようだ)


 ただ、そこに使い魔の項目はなかった。使い魔の項目はテイマーという職業をとった者にしか現れない項目のため、クラス未登録の竜也のステータスに現れるわけないのだが。生前トップランカーとして名を馳せ、弱小クラスと言われたテイマーを、竜也は家族とも呼べるような使い魔達と、そのレッテルを剥がし、幾多のダンジョンをクリアし、幾多のクランを葬り、テイマーの地位を確固たるものとしてきた。さらに他のプレイヤーと力を合わせずに、自身の使い魔達だけで構成された唯一のクランであり。当時ゲーム内の最大勢力の五つのクラン『五芒星』の内の一つでもあった。つまり竜也は家族同然の使役していた魔物達を失った現実に酷く胸を締め付けられていた。


 天涯孤独の身であった竜也は意志を持ち、自身を慕ってくれる魔物達に対し本当に家族のような愛情を感じていた。それがなぜかレベルもクラスもリセットされた状態でこうしてゲーム内にいる。その現実に唇をかみしめていた。


 (こんなことになるならみんなにお別れ言っとくんだったな、、、。)


 もう会うことはないであろうかつての仲間達のことを思い胸が熱くなる。


 (またゼロから始めるのか、また1人なのか、、、。)


 かつての仲間がいないと、自身の居場所すらも分からない。そんな悲しみ、孤独に唇を噛み締めていると、突然システムの声が響いた。


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