表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

仲間との誓い

 気がつくと俺は何もない暗闇の中を1人佇んでいた。


 (どこだここは、俺は2人を助けないといけないのに。)


 幸い、あの女の殺気や気配はない。


 とりあえず歩を進める、どこに歩いているのか、どこに向かって歩いているのかも分からない。


 この暗闇の中に2人がいるのかもしれない。そんな思いから2人の名を呼ぼうとする。


「――――――――――。」


 しかし、声は出ない。いくら喉に力を込めようと、あたりは静寂に包まれたままだ。


 すると、暗闇の向こうで何かが這うような音が聞こえる。


 急いでそこに駆け寄る。


 そこには、膝から下を切られたエウルアと羽が無惨に切られ横たわるリルの姿あった。


 俺の足跡に気づいた2人がこちらを向き、2人と目が合う。


「また、家族を失うのね。」

「アンタについて行くんじゃなかった。」


 2人は俺を責める。2人に手を伸ばそうとするが、2人はまるで溶けるかのように、闇に沈んでゆく。


 やっとの思いで2人の手を取るが。俺の体も沈み始める。遂には、胸の下まで体は闇に沈んだ。

 

 2人の姿はもうない。


 なぜかもう何も考えられない。


 考える気にもなれない。


 この肌にまとわりつく闇にも抗う気にはなれない。


 すると闇の向こうから誰かが歩いてくる。


 そいつは明確な意志を持ち俺の方へと歩を進めてくる。そいつの姿の輪郭を捉えるが、顔は見えない。


 ソレは俺に向かって手を伸ばした。


「起きなさい。――――――――する者よ。」


 そこで俺は意識を取り戻した。


「タツヤ様!!」


 どうやら、俺は布団の中で寝ていたようだ。


 俺のことを心配そうに、今にも泣きそうになりながら覗き込むエウルアの顔がドアップで俺の目に映る。


「うわ!」


 ゴツん!!


 あまりの近さに思わず驚きエウルアにおでこがぶつかる。


「くぅ、、、、、。」


 その痛みがここが現実であることを実感させた。


「タツヤ様!申し訳ございません!私はタツヤ様の配下でありながら、お守りすることができませんでした。私は、、私は、、、、。」


 エウルアはその自責の念から泣き始めてしまう。


(違うんだ、そうじゃない、ソレはお前のせいじゃない。俺の甘さが招いたことなんだ。ソレにお前達がやられていくのをただ見ているだけだった。)


 すまなかった。


 そう言えばきっと少しは楽になるだろう。ただ、それを言うのは卑怯な気がして、俺は俯くことしかできなかった。


 すると、エウルアの横にいたリルが俺に語りかける。


「アタシ達全然ダメだったわね。あの後アタシ達2人もあの女と戦ったわ。でも何も通用しなかったわ。軽くあしらわれるだけで。触れることすらできなかったわ。」


 リルの話によると、2人が姿を消した後。2人は同じ場所に転移していたらしい。


 そこで五本の自律して動く剣に襲われたのだという。

 

 その剣一本一本はそれぞれに不思議な力を使ったらしい。そうして、応戦していると、俺を巨大な剣に乗せた女が現れ、それを見たエウルアが激昂し戦いが始まったようだ。


「こんなんじゃ、プレイヤーにも負けるわね。アンタの大好きな元々の仲間にも会えないままやられちゃうわ。」


 そう言いリルは俺の頭の上に乗っかる。


「だから、早く、か弱いアタシを守れるくらい強くなりなさいよ、今度はあんな不条理を受け入れないでいいようにね。アタシはもうこれ以上不本意な不幸を受け入れるつもりは無いわよ。」


 一応、リルなりに気を遣ってくれてるのだろう。リルは慰めるようにその小さな両手で俺の頭をポンポンと叩く。


「だから、早くその涙は止めて、顔を上げなさい。」


 自然と涙が頬を伝っていた。


 いっそ、俺の弱さや甘さを責めてくれた方がどんなに楽か。けど2人はそんなことしなかった。


 多分2人なりに気を遣ってくれたんだろう。2人も相当悔しかったんだろう。そういう感情が言葉と共に伝わってきた。


「強くなろう。」


 口から出たのは決意の言葉だった。


 俺たちは一連托生の関係で、俺が死ぬと配下の魔物は消滅する。配下を失うと俺の心が耐えられないかもしれない、そんな依存した関係だ。


 俺は普通のプレイヤーと違って、この世界で死んでも、またリトライできるわけではない。本当に死ぬのだ。そのことを俺は改めて今回のことで実感した。


 俺たちの話にひと段落ついたところで、部屋の扉が開く。


 入ってきたのは俺たちと戦っていた女だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ