その一:「きみはだれ?」
「きゃあッ!」
女の子の悲鳴!?
ノワは走った。
石畳を駆け抜ける。
道の真ん中に白い猫が倒れている。
真っ黒で短い毛のノワとは正反対の、ふかふかの白い毛の猫だ。耳の先だけ薄茶色の。
その耳がピクリ、動いた。
生きてる!
でも、ふわふわ尻尾は動かない。
どうしたんだろう?
事故?
お病気?
わかんないけど、たいへんだ!
「だいじょうぶ!? しっかりして!」
ノワは急いで、横向けになってる白い首筋をカプッとくわえた。
安全な場所へ運ばなくちゃ。
こんな道の真ん中はだめだ。車や馬車に轢かれるかも。ここではたまに馬が引く古風な馬車が通る。
「ん~~~ッッッ!!!」
ノワは白猫を持ち上げようとした。
――うわ、メチャクチャ重い!?
そりゃ無理である。
だってこの子は、ノワより大きい。
――むがーッ、重い~ッ! けど、ぐわんばるう~!!!
ズリ、と引きずった。一歩。また一歩。
ズリ、ズリ、ズリリ……。
やっと道の端っこまで移動できた。
「ぷはッ!」
ノワは、ペショッと地面に突っ伏した。
体力が尽きた。これが継母のレディ・ドルリスなら魔法でさっと運ぶだろうし、継父のマドロス船長なら、魔法など使わずともひょひょいとくわえて、ひとっ飛びで歩道まで移動してのけるだろう。
「う……うう~ん……。あら、あなたは?」
ぱっちりした明るいオレンジ色の目が、ノワをジッと見つめている。
「にゃッ!」
その瞳に、ノワのハートは『ずっきゅん!』と、撃ち抜かれた!




