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#1具だくさん野菜カレー

 石田拓馬イシダ タクマ独身 大学を出て大手企業に就職し早10年、今ではそこそこの役職に就き、数人の部下のいる立場になっている。

 30歳も超え、周りの友人たちは次々と結婚し幸せな家庭を築きつつある中、俺はというと職場と家を往復するだけの毎日。

といっても、別に仕事が嫌いだというわけでもないのでそんなに苦でもない。それなりに楽しく働けているのだし、この会社での仕事は俺にあっているのだと思う。

 これといった趣味もないのだが、しいて言うなら食にはこだわっている。

美味い飯を食べ、一日の活力にする。食事は人間が生きていくうえで欠かせない要素の一つであり、最大の娯楽だと俺は思う。

美味い飯は生活に彩を添えてくれる。

口入れると、ほろほろと身を崩していく脂がのった鮭、ふんわり優しい味噌とダシが効いた味噌汁。

そして、一粒一粒がしっかり艶のあるホカホカの白米。この組み合わせで食欲がそそられない日本人はまずいないだろう。

そこに卵を足してもいい。味噌汁に入れて半熟をいただくも良し、炊き立ての白米の上にかけて醤油をひと回し、そのまま口の中にかきこんでもいい。


グゥゥゥ。


「アルト、父さんのも食うか?」

「大丈夫だよ。父さんもしっかり食べて。」


 目の前には、薄めたポタージュにジャガイモが2かけら入ったスープとカチカチの黒パン。

え?どうしてそんな状況になっているのかだって?そんなこと俺が一番聞きたい。


 

 10年前、俺はいつも通り仕事を終え、帰路についていた。

大量の仕事を片付け、また連勤続きだったためか、非常に疲れていたことは覚えている。


「明日は休みか…」


早く帰って昨日作り置いたカレーが食べたい。野菜たっぷりの具だくさんのカレーだ。

香辛料を使い、辛口に仕上げたカレーに、ナスやピーマン、カボチャそして鶏もも肉をじっくり煮込んだ自信作である。

連日の仕事の合間にしっかりと料理をするのは結構大変なのだが、こればっかりは譲れない。

そういえば前にカレーを食べたのはいつだったか…

感傷に浸りつつ、終電間際の電車に乗り込む。

平日の遅い時間帯ということもあり、乗客もまばらでとても静かだった。

いつも通り、車両の端の席へ座り、夕飯の事を考えているとだんだんと瞼が重くなっていった。

最寄り駅まで約30分程度、乗り過ごしてはいけないとは思いつつも、やはり睡魔には勝てずそのまま、まどろみの中に意識を落としていった。


 鳥の鳴き声で目を覚ました。


ん?いつの間に俺はベットに…確か、電車に乗ってて……ん??

起き上がり前方に目を向けるとそこにあったはずの向かい側の座席はなく、代わりに木でできた扉と壁があるだけだ。おそらくここはどこぞの小屋らしい。


「夢でも見ているのか…」


落ち着け、まず状況を整理しよう。

俺は、仕事を終えて電車に乗ってたはずだ、それがなぜこんな小屋に…

拉致?いやいや、こんなどこにでもいるおっさんを捕まえて何の得になるんだ…

夢の世界という線も薄い。

意識も明瞭だし、触るものの感覚だってしっかりある。

しかし、いつの間にこんなゴワゴワした服に着替えさせられたんだ??

ベットを降りて周囲の確認をしよう。

少し、いやかなり体が重いのだが、仕事の疲れが抜けていないだけだろう。


そう考え、ベットを降りた。

この小屋…やたらと家具がデカい、ベットの高さでさえ俺の胸ぐらいの位置にある。

よく見ていくと机も椅子もデカいし窓の位置も高い。

何だここは…。

こんなにデカい人種なんていたっけか??

とりあえず、情報が欲しい。着ていた服はもちろん、バックや携帯等も手元にはない。

取られているならどこかにあるはずだ。

部屋の扉を開く。そこは居間の様だった。

ただ、よく見る日本のリビングではなく、木のテーブルに石造りのかまど。

大きなかめに部屋の隅には薪も積んである。

よくテレビドラマでやってた昔のヨーロッパの民家に似ているな。

現代日本にこんな場所があるのがとても異質だが、そんなことはどうでもいい。

スマホを探そう。

といっても、探せる場所はあまり多くはなかった。

クローゼットには同じようなシャツが数着あるだけ、戸棚には木製の食器が置いてあった。

もしや、映画のセットなのだろうか、だとしても俺を攫う意味が分からない。

一通り物色したあと、最後にかめの中を覗いた。

どうやらこれは水瓶みずがめのようだ、ここにはさすがにないだろうが一応確認。

割と高いスマホだったんだ。水没は悲しい。。。


「え…」


頭が真っ白になった。

水瓶の中には小学校低学年ぐらいだろうか、肌は白く、赤毛で活発そうな子供の驚いた顔が映っている。

そう子供の顔だ、俺の顔じゃない。

今度はゆっくりと自分の体に目を向けた。

短くやわらかい手足。シャツで隠れてわからなかったが、子供特有の丸みのあるフォルム。

頭が痛くなってきた…。認めよう、おれは子供になってしまったらしい。

それも日本人ではなく海外の。なんでこんなことになった????

俺はただ、いつも通りに電車に乗っただけなのに…


ガタンッ…

玄関の扉が開く音が聞こえた。


「あらアルト、目が覚めっちゃったの?」


俺と同じ、赤い髪をした女性が立っていた。

20代前半だろうか、とても優しそうな顔立ちの綺麗な人だった。


「これから夕ご飯作るから、もうちょっとだけ我慢してね」


日が落ちていき、薄暗くなりつつある部屋の中、女性は俺を抱きかかえた。

テーブルの席へ俺を下すと燭台に手をかざし…


「―火よ—」


燭台に火が灯った。

あー…

ハイハイ、理解しましたよ




初投稿の作品になります。

文法等、ガバガバだと思いますが、温かい目で読んでいただけると幸いです…


ちなみに、私はチキンカレー派です。(ナンと相性が抜群なんだぁ…)

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