他所から聞いた不思議な話2
さて、世の中不思議な話と云うのは有る物で、大概の人はオカルトネタの1つや2つは持っている物です。
今日は小拙が体験者から直接聞いた話をしましょう。
ただ、小拙が聞いた話と云うのは、どちらかと言えば他愛ないオチの無い話ばかりなので、諸兄姉に措かれまして、退屈な話になるかもしれません。
一つ目は“自分の手術を見ていた話”です。
これはそのまんま、緊急手術を受けたお方が麻酔(話のニュアンスから全身麻酔では無さそうです)で意識が朦朧とした時の事でして。
私見ですが、当人は麻酔の影響と口にしていましたが、かなりの出血だった様なので、失血性の貧血が意識朦朧の原因では無いかと思います。
話では、意識が朦朧としているのに、耳が矢鱈と冴え、看護婦さん(当時はまだ看護師なる言葉が無い頃で)の甲高い“先生!血圧が急激に低下しています”の声をハッキリと聞いた瞬間に、手術台の自分の姿を上から眺めていた、との事でして。
幽体離脱、でしょうか。小拙も若い頃に何度かなりました。
漫画みたいに、身体から離れた幽体が、あちこちを自由に散策する様な、そんな小粋な体験では無く、大体身体の30cm上をプカプカ浮いている体験でした。
起きている間に離脱した事は無く、寝入り端に起こる事が多かったですね。
また、自由に動けないのは金縛りと同じですが、何か周りの様子が分かるのが印象的です。天井が近くに見えるのですよ。
頭の回転は鈍く、夢うつつな思考しか出来ないのも金縛りに似ています。
だからでしょうか、あまり慌てる事も無く、“それより眠い”と寝入ってしまい翌朝を迎えてばかりでした。
逆に、矢鱈と狼狽え、恐怖感ばかりが増大する事もありました。
ただ、頭が鈍くしか働かないので、“怖い怖い怖い怖い……眠い”に結局移行してしまい、翌朝を迎える結末は同じです。
何と言うか、恐怖感が肉体感知恐怖感とは少し違うのですよ。
発汗や動悸、恐怖関連で分泌される脳内ホルモンといった肉体的緊張感が働かないのだから、恐怖感は純粋に恐怖しか湧かないのです。
だから怖いは“怖い怖い怖い怖い”でしか無く、純粋に怖いだけで、動悸や脳内分泌が働かない分、身体に釣られて恐怖感が増大する事は有りません。怖いが連続するだけです。
肉体に関係ない感情は、どうやら方向を変えれば簡単に落ち着く様でして、小拙の場合は、“でも眠い”で落ち着く様でした。
さて、その手術台の人ですが、今も存命でして、と言うかその件でお亡くなりになっていては、聞き出す術がありませんが。
自分の姿を見ながら、“このまま死ぬのか”とぼんやり考えたそうです。
小拙なんかもそうですが、幽体離脱や金縛り中は明朗な思考、複雑な思考は出来ず、ぼんやりとした思考しか出来ません。
小拙の作中、思考は脳の仕事、魂は方向性を与えるだけ、としているのは、こうした体験からです。
ぼんやりとした思考も、方向性を変えれば良いのですが、このお方の場合、既に死を受け入れて、その感情に囚われています。
詳しくは伏せますが、とある“閃き”がこのお方の感情の方向を変え、“生きなければ”と強く思ったそうです。
感覚は身体に戻り、看護婦さんの“血圧が戻りました”の声を聞いたそうです。
小拙の“眠い”との方向転換に似ている気がしますが、その方の場合は方向転換が無ければ、そのまま鬼籍入りしたかも知れないのだから、命がけの“閃き”だった訳です。
もう一つの話は、“いる筈の無い幽霊を見た話”です。
幽霊なんぞいる訳が無い、と云った小噺の様な話ではありません。と言うか、それではお話になりません。
詳細はこうです。
とある貸し倉庫屋さんなのですが、一族経営をされていて、父親が亡くなり財産相続で兄弟で所有倉庫を分与し、弟さんのほうが独立したそうなのです。
別にもめた訳でもなく、互いに親交は続いていたそうで、お互いそれなりに繁盛している様でした。
弟さんは、とある田舎に倉庫を新築する程に儲けを出していたそうです。
その新築倉庫での話です。
古くからの社員さんが、何かの手伝いで(独立したとは云え、業務は被るからベテランの手を借りたのでしょう)その新築倉庫に出向いた時に聞いた話でして、何でもその倉庫、出るんだそうです。
それも、とっくに退社し、病没した先代からの社員さんの幽霊が。
その亡くなった社員さん、弟さんが独立する数年前にお亡くなりになり、また新築倉庫も、弟さんが独立し経営が軌道に乗ってからの事業立案なのだから、その亡くなった社員さんの生前にチラとでも話に上がった訳など無いのです。
ひょっとしたら有ったかも知れませんが、場所の特定までは無理でしょう。
でも、出る幽霊の特徴は、紛れもなくそのお亡くなりになった社員さんらしく、皆して不思議がっていたそうです。
地縛霊なんかは亡くなった場所に留まるから地縛なんでしょうが、そのお亡くなりなった社員さん、普通に病院でお亡くなりになり、また、長くその貸し倉庫屋に勤めていたので、先代、兄弟とも関係は良好で、恨んで出てくる理由が無いのですよ。
大体、何で生前には行った事も無い、当時は何も無かった空き地に、今出て来るのか?
出て来るなら、本社屋にならまだ話が分かるのですが。
何で新築倉庫に、何で今出てこれるのか全く分からないとの事です。
幽霊云々の真偽は於いて、その出てきた幽霊が、その数年前にお亡くなりになった人だと特定して、怖がるより不思議がる方が印象的な話でした。
小拙の私見では、それはお亡くなりになった当人の幽霊では無く、その空き地に元から居着いている“狐狸妖怪”の類いの嫌がらせじゃ無いかと思いましたが、(妖怪は居るんですよ、ヒントは動物霊)そんな喜天烈な事を言い出して、可哀想な人扱いをされるのも何なので黙っていまいた。
その話をした人とはそれっきりなので、その後、どうなったかは分かりません。
相変わらず出てくるのか、または、お寺さんか神社さんにお祓いを頼んだのか。
それとも実害が無いから放置なのか。
ただ、小拙、別に心霊研究家でもお節介な霊能者でも無い、ただのプロハンなので、関わるつもりも有りませんでしたが。
武侠の合間の執筆です、気分転換です。年末には武侠も再開出来そうです、いまストック作成中でして。
コロナが落ち着いてきました、このまま収束します様に。