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カニオ的耳袋、オカルト体験談3  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
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物理的作用をする話

三話目です。お付き合いの程を。

『物理的作用をする話』


 ついさっきの事です。車に乗ると、運転席側の室内灯が点いていました。


 ドアを開けると点灯するタイプではなく、ダイレクトにオン、オフするしかないタイプなので、当たり前ですがオンにしなければ点灯なんかしません。


 また、なんかの拍子にスイッチに触れてしまう事も位置的に有りません。


 つけっぱなしで降車した可能性も有りません。運転席側の室内灯なんだから、気がつかない何て事は有りませんとも。


 幸い電気車なので、通常のエンジン車の様にバッテリー上がりなんて事は無いので普通に走りますが、不快な事です。


 何せ、積み込んだ扇風機を、ソケットにうっかりつけっぱなしで一晩稼働放置してしまった時も、バッテリーの残量に大した変化は無かったんですから、室内灯程度では問題なしです。


 問題が有るとしたら、“誰が室内灯のスイッチを入れたか”です。


 まあ、イタズラでしょう。妙な気配は感じませんでしたので。


 ちな、小拙は降車時は夏場でも窓を完全密閉して、鍵を掛けます。蚊が入り込んでも嫌なので。つまり車内密室です。


 鍵を掛け忘れて、誰ぞが車上あらしなんて事も有りません。ドアロックに連動してサイドミラーが閉じるので、掛け忘れる事が無いのですから。


 近頃ではキーレス車の電紋をコピーして、車を盗む輩が居るそうですが、そもそも車は盗まれていません。ただ、室内灯が点いていただけ。


 考えれば考える程、気味が悪い話………とはなりません。


 小拙には割りと頻繁にこの手の事は起きるのですから。


 しつこいですが、まあ、()()()()でしょう。


 小拙の祖父、とっくに故人なのですが、生前、そうですね、小拙が小学校低学年位の時、当時頻繁に放送していた心霊番組を、小拙と供に見て宣い給うた言葉に、


 “死んだ人間が出刃持って襲ってくる訳じゃ有るまいに、何が怖いんだ?”


 と言うのが有りまして、子供心に、“怖さの質が違うんじゃないかい”とも“幽霊だから怖いんじゃないかい”とも思った物でした。


 つまり祖父を怖がらせるには、幽霊が出刃を持って襲ってくれば良いんだね。とも。


 当時ゾンビの認知度はかなり低く、ホラー映画自体が無かった頃です。


 精々が古典怪談の映画でしょうか。


 ゾンビは死体が徘徊するイメージなので、死体と云う実体が有るのだから、物理的に害を加えられそうですが、幽霊なんかは実体が無いのだから物理的に害を加えられない、つまり出刃なんかは持てない勘定になりますよね。


 まあ、普通そう思います。


 所が、さにあらず。


 連中も物理的に攻撃してくるんです。


 室内灯はひとまず置いておき、小拙が不可視な存在に物理的な害を加えられた話をします。


 十年程前の話です、小拙ひょんな事から霊的な感度が上がった事が有りまして、ほぼ毎日その手の者を視たり、イタズラのような被害にあっていました。


 それは外出時のみでは無く、自宅に居ても同様で、いい加減煩わしくなり、自宅をカスタムする事にしたのです。


 とは云え、御札の類いは効果が無いと知っていたので、(あれはセールスマンお断りシール程度にしか効果が有りません)古来より神社仏閣建設時に敷設する、水晶散布を実施する事にしました。


 綺麗にカット、形成された水晶は高価ですが、未加工の小粒の水晶はクラスター水晶として100㌘ナンボと云う安価で売られています。


 それを家中に設置、散布する事にしました。


 ネットで購入するのが手っ取り早く、簡単なのですが、特に切羽詰まった状況でも、深刻な事態と云う訳でも無いので、ドライブがてら、産地に直接購入する事にしました。


 真っ先に思い付いたのは山梨県で、金山銀山の関係から、鉱石の類いが古来より名産地に上げられています。


 ですが、山梨県にドライブとなると、信玄公のファンで有る小拙は、信玄公関係のアチコチに行きたくなり、とても日帰りドライブに収まらなくなるので、お隣の静岡県に行く事にしました。


 義元公は特にファンでは有りませんので。


 富士山の関係からか、静岡県も金山銀山が有りまして、当然鉱石も産出します。


 とは云え、静岡県の何処にクラスター水晶が売っているか………と、言うかドライブが主目的なので、クラスター水晶を土産に置く観光地が候補になります。


 あと距離的、時間的に1日暇が潰せる所。


 ネットで調べた所、ルート的に白糸の滝が候補に上がりました。時間が許せば富士五湖ドライブも視野に入れます。


 当時白糸の滝は、滝壺周辺に観覧場を設置したとかで、落成式を済ませたばかりとか。


 それが決め手となり、家族でドライブです。


 ただ、天候はあまり良く有りません。どんよりとした曇り空で今にも雨が降りそうでした。


 道中他愛ない会話をしながらドライブです。割合と早くに白糸の滝に着きました。


 駐車場がガラガラだった事を覚えています。


 まあ、天気が悪く、霧の様な小雨が、降っている様な舞っている様なコンディションです、態々濡れるために観光するには骨でしょうから、空いているのも分かります。


 季節も四月の上旬で、肌寒い陽気でした。


 ルート通りに進み、適当な売店で目当てのクラスター水晶を購入します。


 小瓶にクラスター水晶が詰まったタイプの、オシャレな感じの奴を10程。


 袋入りの奴を2袋程。


 お寺さんの袈裟に見立てたショルダーバッグに詰め込んで、目的その一を完遂します。


 分かりにくいでしょうか?小拙はショルダーバッグを肩に掛けず、首に掛けているので(これが楽なんです)お寺さんの頭陀袋みたいな案配なんです。


 頭陀袋だと語感が何なんで、小拙は袈裟に見立てていると言い張ります。


 さて、目的そのニの観覧場からの滝観賞なんですが………


 なんとも嫌な気がしました。


 白糸の滝は谷間を降りた先に有るので、売店からだと見下ろす位置なんですが、遠目に見た感じ、不快と言うか、“うわっ”と言うか、気持ち悪いと言うより不愉快になる様な感じがしました。


 例えるならば、コンビニ前で風体の良からぬ者がたむろしているのを目撃した感じでしょうか。


 用も済んだし帰ろうと提案しましたが、総意で却下です。


 しぶしぶ滝壺に向かいます。


 結構階段を降ります、雨は止むと言うより霧みたいに舞っている様な感じで、陰鬱な感じです。


 道々、至るところにビー玉が落ちているのが気になり、子供に拾わない様に言い聞かせます。


 不自然に大量に落ちているので、作為を感じたのです。


 この日は空いていましたが、有名な観光地です、こんなに大量のビー玉が落ちていたら、管理者が片付けます。


 ウッカリ踏んで転倒したら大惨事です、コンクリート製の長い階段なのですから。


 それが放置してあると云う事は、まだ捨てられて間もないからでしょうね。


 つまり意図的に捨てている、落とした訳じゃ無いでしょう。


 意識して探すと、大体道なりに等間隔に道脇に捨てて有ります。


 まず間違い有りません、これは厄落としのまじない術ですね。


 何かで聞いた術なのでうろ覚えなんですが、何でも前厄の一年間、自身の厄を依代に宿し、本厄年に予め厄を宿した依代を()()本厄を逃れると云うまじない術です。


 依代はイメージ的に厄を移せる物なら何でも良くて、数も煩悩の数の108つ必要との事です。


 入浴時以外は肌身離さず所持しなければならないので、依代は小物を使用します。


 このビー玉は多分それでしょう。


 硬貨なんかを依代にする場合も有ります。この場合は厄落としと言うより厄移しとなります。


 お金が道端に落ちていたら、まあ、金額次第で拾いますよね。


 これはお金を拾うと言うより、厄を拾う訳でして、まあ迷惑料先払いの厄移し術です。


 貰い厄ですが、108分の1だから大した事は有りません。やるならこっちを推奨します。額は最低でも100円からで。


 冗談はさておき、谷間まで降りきります。滝なんだから当然谷間は川になり、歩道は川沿いになります。


 嫌な雰囲気は途切れません。


 不意に娘が言います。


 水に入りたい。と。


 馬鹿な事を言われちゃ困ります。夏場でも冷たい滝の水辺、ましてや霧雨の四月。冷たいなんてものじゃ有りません。


 突飛な申し出に即不許可です。


 ですが娘もしつこい。


 当時未就学児の幼児です。あまり聞き分けが良い方では有りません。


 どうしても入りたい。と言い張りますが、どうしても駄目だと言い聞かせます。


 異常言動にピンときた小拙は娘に聞きます。


 ビー玉拾っただろ?と。


 案定拾っていました。駄目だと言っても聞かないのが子供です。


 子供の異常言動はそれだと目星をつけ、ならば妙な事を言い出したこの辺りがそうだな。と、辺りを見回すと。


 有りました有りました。


 川辺の大きな石の上に、多分石製の数珠?ブレスレット?が一対。


 厄落としの本丸呪物が。


 小拙の視線に気がついた子供達が、それに近付こうとしますが、慌てて止めます。


 特に目につく石の色目じゃ有りませんが、この手の物は、何か分かるんです。


 嫁さんは呑気な物で、落し物?なんぞとほざいて近寄ろうとしますが、強い口調で止めます。


 小拙が強く止めた事で、事情を察したらしく子供共々下がります。


 説明は車で。と言い聞かせこの場から去ります。もう滝壺観賞なんぞどうでも良くなりました。


 娘に案内させてビー玉を拾った場所に行き、元有った場所に戻させます。


 ただ、呪物周辺にたむろしていた輩はそれでは収まりがつかなかったのでしょう。


 何せ、娘を水に引き込もうとした様な奴です。


 ビシッ。そんな異音を聞きました。ですが無視して引き上げます、車にまで戻れば何とかなりますので。


 小拙、その手のお祓い小道具を、車に常備しているんです。


 とんだ散策となりました、帰りの車内で嫁に説明です。


 誰かが、厄落としのまじない術を早朝か、昨晩に実施した事。


 その呪物に、そこいらの雑霊がたかっていた事。


 特に質の悪いのが、数珠周辺に居座っていて、悪意行動をとっていた事。


 娘が呪物を拾い、惹かれた事。


 今はもう大丈夫だと云う事。


 娘に、どうしてこんな寒空に何故水に入りたがったのかと聞くと、何故かその時はそう思ったとの言。


 水に引き込み溺れさせるは、まあ時期的に無理でしょうから、転ばしたりして、怪我をさせる算段だったのかも知れません。


 水辺のものは知恵が()()ぶん、質が悪いんです。


 さて、ビー玉返還の所でした異音ですが、これはクラスター水晶瓶の割れた音でした。


 駐車場に戻り、念のために水晶を各自に持たせようとしたとき、購入したクラスター水晶を思い出したのです。


 取り敢えずそれを配るためにショルダーバッグから取り出す時に分かりました。


 一つだけ、クラスター水晶入りの小瓶が粉々になっていたんです。


 罅とかじゃなく粉々に。


 常識ではあり得ません、簡易とは云え、割れ物包装のなされた親指程の小瓶ですので、ピンポイントで衝撃を与えなければ、割る事自体が無理でしょう。


 こんな事も出来るんだ。などと小拙、連中の認識を少し改めました。


 物理的に作用させられるんだ。と。


 さて、この日は何とも白けてしまいドライブを切り上げて帰路につきました。


 その後、特に何事も無く過ごしました。


 後年、またぞろ娘がやらかすのですが、それはまたの機会に。


 室内灯の件は、何ぞアクションが有ったら、また報告します。


 まあ、ネタ提供のイタズラに感謝ですね。

突撃の方が終わりましたので、武侠のストック執筆中の合間に書いてます。


不定期投稿になります。

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