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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「自分」

作者: 眠夢

 「どこの大学に行きたいですか、ってなあ...」

もうかれこれ1時間ほど、目の前に置かれた紙とにらめっこを続けている。紙には「自分のしたいことに合った場所を」だとか「将来を見据えた志望校を」なんてことが書いてある。正直したいことなんてないし、将来の夢なんてものもない。自分が何が好きだとか嫌いだとか、よくわからないのだ。いつからだろうか。自分のことが分からなくなったのは。「なんでもいいよ」「合わせるよ」「任せるよ」なんてことを言い続けて10数年。自分が何がしたくて、何を考えて生きているのかよく分からなくなっている。学校とかで意見を聞かれることは多々あるけれど、その度にあやふやに誤魔化してやり過ごしてきた。適当に愛想笑いを振りまいて、当たり障りのない返事をして。自分ってなんなんだろう。そんなことを考えていると、先生が教室のドアを開けて入ってきた。

「もう下校時間だぞ、いい加減書けたか?」

首を振った。

「はあ...それ出てないのあとお前だけだからな、家に持って帰ってちゃんと書いとけよ」

ドアが閉まる音が聞こえて数秒、魂が抜けるほど大きなため息をついた。1年経っても書ける気がしないのに、と独り言を漏らしながら紙を無造作に鞄の中に入れ、学校を出た。

 太陽はビルの陰に隠れ、月が輝きだしていた。

....昔から月が嫌いだった。自分ひとりじゃ輝けないくせに、なんてのを自分自身に重ねてしまうからだ。でも、月ですら東から西に行くと決まっているのにそれすら決まっていない自分は最悪だ。嫌いなものにすら届かない。でも、この状況が何かをして変わるわけじゃないから余計に悔しい。自分には何も無いのだ。得意なことも、好きなことも。自分の上位互換なんてそこら中に転がっているし、自分がこの世界になにかしてやれることなんてない。ただ普通に生き、何かをする訳でもなくただ死ぬ。今を生きるのに必死で先のことなんてろくに考えちゃいない。

 慣れた手つきで駅の改札を通り、都合良く来た帰りの電車に乗る。車内で疲れきって寝ているサラリーマンの姿を見ると、将来自分もこんな風になるのではないか、ならいっそ死んでしまった方が楽なんじゃないか。なんてことを考えてしまう。

 嫌という程聞いた駅名が聞こえ、電車を降りる。後は重い足を引きずりながら家に帰るだけだ。情けなく点滅する街灯や忙しなく動き回る虫。その全てが自分を笑っているような気がした。

重いドアを開け、部屋の電気もつけずベッドに飛び込む。目を閉じれば、このまま何処までも沈んでいけそうな気がして心地が良かった。耳を澄ませば、遠くの方からぱん、ぱんと花火が打ち上がる音が聞こえた。そういえばクラスで花火大会の話をしている人が多かったな。仰向けになって部屋の天井を眺めると、花火の鮮やかな色が映し出されていた。ベッドから足を下ろし、ベランダに続く窓の方を見て、思わず目を見開いた。目の前に広がっている景色は、自分がいつも見ている世界の何倍も美しく、意味のあるものだった。たった一瞬の為に全てをかけ、何よりも、他の何よりも輝く。たとえそれが一瞬だったとしてもその瞬間は世界の主人公でいられる。初めて「憧れ」というものを感じた。

軋む窓を開けてベランダに出てみる。ベッドから見たものよりずっと綺麗なそれに、手を伸ばす。少しでも近くに行きたくて。ほんの一欠片でも手に入れたくて。

でも、そんなこと出来ないなんてことは最初から分かっていた。こんな自分にそんな資格がある訳が無い。火花が遠ざかってゆく。現実が迫ってくる。それでも、どこか満足している自分がいた。これでいいのだと。


 冷たい。

 暖かい。


ぼやける視界の中で、縋るように水面に映る輝きを見つめた。

結局「自分」は主人公になりたかっただけなんだ。何も出来ないくせに。自分にしか出来ないことなんてないのに。他人を羨むばかりで何もしようとしやしない。馬鹿だなあ。


 そう言って吐き出された泡は、情けない音を出して消えていった。

終始グダってしまった上よくわからん終わり方になってしまい申し訳ないです、アドバイス等頂けたら嬉しいです。

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