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四四.アルノルディ王国での晩餐会

修正しました。

×サイバーパンク ○スチームパンク です。

全然違うorz。すみませんでした。

 あれからすぐに滞在する部屋に通された。希望した通り、ネストル王子とアトスと健一郎、レオニダスとユニで隣接する2部屋にしてもらった。

 お湯の用意もできているからと言われ大きな入浴施設に案内されれば、マッサージにトリートメントと、まるでスパの客になったような扱いを受け、部屋に戻るとそれぞれのサイズに合う晩餐会用の服が用意されていた。


「この歳になってコスプレするとは思わなかった……」


 スチームパンクな衣装を身に着けた健一郎は、鏡を見てげんなりする。


「コスプレってなんですか?」


「既存のキャラクターを再現した格好をすること。この場合、なにかのキャラクターを真似しているわけじゃないから、正確にはコスプレじゃないのか? いや、でも」


「ケン、皆も同じ格好なんだから気にするな」

「大丈夫だ、ケンも似合っているぞ」


 一緒に鏡に映るメランな人々を見て、確かに違和感はないな、集団でいるとゲーム中のパーティメンバーのようだな、と健一郎は思う。この場合、レオやアトスの武器は巨大なレンチかトンカチだな。ネスには額にドワーフが愛用してそうな多機能眼鏡、腕には古くて分厚い本を抱えてもらえば完璧だな。ああ、俺の武器が思い浮かばないなぁ。

 健一郎が現実逃避をしていると、お待たせしました、と扉が開いてユニが出てきた。 


「髪、長かったのですね」


 そうだけど、そこじゃないだろ、と健一郎は心の中でネストル王子にツッコんだ。


 ユニの見た目は、見慣れたメラン王国民と同じで黒髪焦げ茶目の大柄なアジア人風の少女だった。今までは頭に旅装束だろう帽子なのか巻き布なのかをつけていたので、見えていたのは黒い前髪だけ。凹凸もわからない旅装束とユニの気さくな態度から、健一郎の中ではすっかり少年のように感じていた。

 目の前のユニは、先程見たヌタンス王女ほど装飾が多くないが可愛らしいスチームパンク風ドレスをまとっている。頭上には、長い黒髪が何本も細く編まれて飾りと共に盛られていて、左耳前に一筋だけ垂れている髪が腰近くまであるので、ネストル王子の発言内容も間違ってはいない。間違ってはいないのだが。


「可愛いな」

「見違えたぞ」


「ありがとうございます! 皆様もとってもカッコイイですよ! うわぁ。あらためて鏡で見ると恥ずかしいですね!」


 恥ずかしいと言いながらもユニの背筋はピンとしているしスカートに臆した様子もない。短いドレスと膝上まである謎素材ブーツとの絶対領域にドギマギしているのは健一郎だけのようだ。

 いやだから俺はいいんだって。

 健一郎は落ち着こうと必死に考える。そういえば『清めの時間』と言っていたから、作務衣は清掃時の服なんだろうな。女性しかいないというオルキス王国ではどんな格好が主流なんだろう。作務衣があるくらいだから、普段着でも制服的なものがあるのかもしれないな。厳しそうな女王様の国だから色だけ違う作務衣とか。うん、よし。だいぶ落ち着いてきた。


「皆様方、こちらへどうぞ」


 5人は晩餐会の間へと案内された。


 すでにアルノルディ王と王妃、ヘリアン王子、ヌタンス王女が席について待っていた。もれなくスチームパンク風なので、アルノルディ王国の正装なのだろう。


「お初にお目にかかります。メラン王国が第五王子ネストルです。このたびはこちらの挨拶を快く受けていただきありがとうございます」

「護衛のレオニダスです」

「同じく護衛のアントニスです」

「異世界人のケンです」

「オルキスのユニです」


 部屋に入ってすぐの挨拶に、深緑色の髪をした40代くらいの王は鷹揚(おうよう)に頷き、白髪の妖艶な王妃が艶やかに笑う。


「アルノルディ王のリングトだ。久方ぶりの客人よ。ゆっくりと滞在されるがいい」

「王妃ラセニですわ。メランの客人は何年ぶりかしら」

「第1王子ヘリアンです。母上、4年ぶりですよ」

「第1王女のヌタンスですの」


 一通り顔合わせも終わったところで、5人も席につき、和やかに会食が始まった。


「旅はどうかね?」

「まだ始めたばかりですが、興味深いです」

「メランの王子の旅なんだから、嫁探しなのでしょう? その子は嫁候補なの?」

「ち、違いますっ。私は兄弟国のよしみで一緒に旅してもらっているだけですっ」

「まぁ、そうなの? てっきりもう見つけたのかと思っていてよ」

「母上。私もネストル殿のように旅に出てみたいですね」


 母親をたしなめるようにしてから、ヘリアン王子はネストル王子に笑いかけた。


「あらあらヘリアン、あなたも他国でお嫁さんを探したいの?」

「違いますよ! 旅をしてみたいだけです!」

「なぁんだ。旅はいいわよねぇ。お客様が多いときは旅の話も聞けたのに、近頃はお客様が少なくなっちゃってつまらないわぁ」

 

 どうやら王妃はおしゃべり好きで、他国の話に飢えているらしい。

 なんとも気楽な会話に、つい健一郎も口を出していた。


「観光客が減って困っているということですか?」 

「あら、あなた異世界人だったわよね。アルノルディのことを心配してくれているの? ここではもう遊んでくれた?」


 遊ばないのかって、確か丸い乗り物に乗る前にも聞かれたな、と思い出しながら健一郎は答えた。


「遊んではいませんが、あの乗り物はすごく良くできたアトラクションだと思いました」


「アトラクション」

 

 リングト王が繰り返してからヘリアン王子にたずねた。


「ササはいないのか?」

「明後日に来る予定です」

「異世界人よ。明後日までいるといい」

「そうよぉ。せっかくなんだから、もっとゆっくり遊んでいってほしいわ。良かったら私が案内しましょうか?」

「母上、私が案内しますから」

「ああ、そうだったわね」

 

 なんだか引き止められているのを感じて、軌道修正しようと思い、健一郎はまた口を開いた。


「そういえば、こちらで雨の管理をしていると聞きました。この世界に来てから、まだ一度も雨にあったことがないのですが、どんな装置なんですか?」


「装置に興味があるのか。異世界人らしいな」

「世界の水分量を管理して、どの国も枯れないようにしているのよ」


 やはり上下水道というレベルではないらしい。


「そちらも私が案内しましょう」


 ヘリアン王子の提案に、ネストル王子が破顔する。


「見てもいいのですか! とても楽しみです!」


「ふふ。貴方たちとは話が合いそうで私も嬉しいです」

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