表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/92

二五.勝ち抜き戦、異世界生物との遭遇

「時間だ。次に行こう」


「ケン、黄色の印を足してくれ」


 アントニスとレオニダスは武器の構えを解いて、荷物を背負って歩き出した。


「え? ここはもういいのか?」


「いいんだ。ここからはもう出てこない」


 異世界生物は焚いた煙のそばで90秒も耐えられないらしい。

 だから対戦も90秒なのか、と健一郎は納得した。


 次の巣穴から、うっすらと煙が出てきているのが見える。


 アントニスとレオニダスが、また荷物を離れた場所に置いて武器を構える。


 山の向こう側から、わっと声が上がった。


「出てきたな」


「やはり今回もあちら側が多いのか」


 前回、一番多かった巣穴付近から、もう異世界生物が出てきたようだ。

 その中心となる巣穴に煙を入れるのが王らしい。

 毎回、異常発生しているのがその近くの巣穴なので油断できないらしく、傭兵班の多くもそちらに行っている。

 健一郎たちが担当している山の端は毎回それほど発生しない場所なので、まだ他のチームも班も見当たらない。


「だからといって油断するなよ」


「出始めると続けて出てくるからな」


「わかった」


 そんな会話をしている内に、巣穴からの煙は濃くなってきた。

 アントニスが別の木の蓋をかぶせる。

 

「ケン、数えられるか? 2回数えてくれ」


「やってみる」


「よし」


 180秒数えて顔を上げると、二人は頷いた。


「いいな」


「また頼むぞ」


 ケンが黄色い印を足し、二人はまた荷物をかつぐと、3つ目の穴へと向かった。

 2つ目と同じように細い煙が出ていて、煙がはっきり見え始めてからアントニスが蓋をし、健一郎は数えるように言われる。

 

「今度は3回だ」


「わかった」


 270秒数える間、3つ目の穴からもなにも出てこなかった。

 別の場所から何カ所も声が上がっている。ここ以外のあちこちで出始めているようだ。


 4つ目の穴は前の穴から距離があったからか、少しも煙が出ていなかった。

 アントニスは七輪を取り出すと『種火』で火をつけ、煙が上がり始めるまでしばらく待つ。

 その間、レオニダスは武器を構えて待つが、巣穴からは少しの煙も異世界生物も出てこない。


「煙を足そう」


 アントニスから七輪を受け取ったレオニダスは、巣穴の中に入っていった。


 七輪を持って巣穴に入るのは、そのチームや班にいる中で一番の年長者の仕事らしい。

 蓋をするのは中堅の仕事。新人の仕事は90秒数えること、黄色い印を足すこと、異世界生物のカウントだと言われた。


「ケン、今度は90数えてくれ」


「わかった」


 二人が武器を構える後ろで90秒数える。

 七輪を入れてすぐは90秒、巣穴が続くとプラス90秒されていくんだな、と健一郎は予測する。

 4つ目の穴からもなにも出てこなかった。


「よし。次だ」


 5つ目の穴から細い煙が見えている。

 そのさらに向こう、8つ目くらいにチームと班の姿が見えた。

 なにやら年長者が話している様子から、健一郎が受けた説明と似たようなことをレクチャーしているのだと思われた。


「そろそろ出てくるはずだ」


「ケン、気を抜くなよ」


「わかった」


 ぐっと棒を握りしめながら180目指して数える。

 120を過ぎたくらいで、遠くに見えていたチームで動きがあった。


「出てきたぞ!」


「逃がすな!」


 チームが動く後ろで、班が周囲に気を配っているのがわかる。

 遠いのではっきり見えないが、健一郎は初めて異世界生物の姿を見ることができた。


 ……巨大なネズミ?


 大人もまたがれそうな毛むくじゃらで手足と尻尾が細い四つ足で走る生物が、慌てた様子で穴から出てくる。

 それをチームが武器で攻撃し、うまく当たれば倒れるが、避けられると班が追撃している。

 煙を吸っているからか、巨大ネズミの動きはおぼつかない。今のところチームと班でうまく倒せている。

 不思議なことに、巨大ネズミは倒れると溶けるように消えていく。


「時間だ。次に行くぞ」


「ケン、ぼやっとするな」


 はっと健一郎は意識を目の前に戻した。


 しまった。すっかり数えるのを忘れていた。


 黄色い印を足して二人の後を追いかけて行くと、6つ目からは煙が出ていなかった。

 またアントニスが新しい煙を用意する間レオニダスが身構えるが、巣穴から煙は出てこない。

 レオニダスが七輪を受け取ろうとした時、巣穴から耳慣れない物音が聞こえてきた。


「ケン、下がれ!」


「来るぞ!」 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ