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36.ルチアーノ先生とアルベルトの検証

 私がこの世界に召喚されて言われてきたのは、『執着心が強い物ほど強いエネルギーがある』だった。


 それが実は『執着心は関係なく歌がエネルギーの元である』だったのなら、話が全然違ってくる。


 でも、それなら何万回と再生していた携帯音楽プレイヤーがあふれるほどのエネルギーを持っているのに納得がいく。

 テレビも歌番組やミュージックビデオをよく映していたからエネルギー値が高かったんだろう。

 炊飯器にほぼなかったのも当然だ。歌が全然関係ないもん。せいぜい炊きあがったときのお知らせ音くらい。

 掃除機を召喚する前にわかって良かったよ。無駄に召喚するところだった。

 

 『同じくらい重要な家電』でここまで差があるのだから、『歌の有無が重要』で正しいんだと思う。


 でも、じゃあ、最初の召喚で一緒にきた写真立てや置き時計やコップは?

 あれにもエネルギーがあったのなら、別の法則もあるってことになるよね?

 召喚された物は、エネルギーがなくなれば倉庫で保管しているって言ってたけど。

 私はけっきょくなにが召喚されていたのかも知らないままだ。

 もしエネルギーがなくなっているのなら、手元に置くことができるかな?


「カルロ、それは本当かい?」


「本当に異世界品を使わずに術を使うことができるのか?」


「まだ仮説だけどね。最初は異世界人であるユリアだけができるのかと思ってたんだよー。でもどうも、術使い候補たちを見てると、異世界品じゃなくて自分たちのエネルギーを使っているように見えるんだよねー。だから今回、ルチアーノ様のエネルギーが通ったら、もう一度さっきと同じことをして確かめたい。エネルギーが通ることで、自分のエネルギーを使うことができるようになるのか」


「わかった、引き受けよう。私も楽しみになってきたよ。……もしかして、どうすれば通るのか、法則も見つかっているのかい?」


「うーん。今回の検証が始まるまでは、ルチアーノ様もアルベルト様も同じ状態だった。もやもや……ええと、エネルギーも見えず、通ってもいない状態だねー。ヨガをした時点で、うすいもやもやが見えて、真ん中が繋がりそうになってきたのまでは、二人は同じだったよー」


 私が離宮にいた一ヶ月の間にこの話をカルロ所長がしなかったということは、最初の一ヶ月では術使い候補たちにここまでの効果が出なかったということだ。

 術使い研究所では、短いながらもほぼ毎日ヨガと手遊び歌をしてきたけど、術使い候補たちには効果がすぐには見えなかった。

 今回たった一回でここまで効果が見えたのは、ルチアーノ先生とアルベルトの二人が、すでに長い間、騎士としての訓練を受けてきていたからかもしれない。


「つまり、エネルギーが通るか通らないかはヨガで決まる、ということかい?」


「おそらくですが。その後は、ルチアーノ様は歌いながら踊って、アルベルトは演奏にわかれた。ここで二人のエネルギーの濃さが変わったよー」


「私が濃くなり、アルベルトはそのままだった、と」


「その通りです。まだ検証できてないけど、ヨガでもエネルギーはたまるけど、歌の方が早いのかなー?」


 少し考えていたルチアーノ先生が顔を上げた。


「ヨガをすることでエネルギーが通るのなら、もう一度すれば通るのかもしれないね。もう少しなら今からやってみようか?」


「ぜひ!!」


「ルチアーノ様!」


 アルベルトのジト目にルチアーノ様が笑う。


「あの子たちにも検証に参加してもらってるんだ。私も喜んで協力するさ」


「……無理はなさらないでくださいね」


 大丈夫だよ、と微笑むルチアーノ先生から視線を向けられる。 

 ああ、はい。

 では、ヨガ第二弾をしましょうか。


 ここでは絨毯を用意していないので、ディーノ王子とした同じ内容をもう一度するのは諦める。立ってできるものをしよう。


「では、皆様、立ち上がってこちらに来ていただけますか?」


 テーブルから離れた場所で、ぶつからないように間をとって立つと、ゆっくりと深呼吸から始めてもらう。

 ルチアーノ先生とアルベルトは並んで動いているけど、カルロ所長は少し離れた場所から二人を見ている。


 ヨガが始まると、私も集中してきて、気持ちよく体を伸ばしたり曲げたり。


「っ!! 二人とも、今通ったよ!」


 嬉しそうなカルロ所長の声に、びくりと体が揺れた。


「わかりました。もう少しで終わるので、もうちょっとだけ待っていてくださいね」


 今の動きを最後まで続けてもらって、また深呼吸して終わる。


「早くはやく! あ、異世界品を外そう!」


 カルロ所長に促されるまま、ルチアーノ先生とアルベルトは自分につけていた異世界品を外す。


 果たして二人は、異世界品なしに『清める』を見事に使えたのだった。

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