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32.ヨガと歌

 話し合った結果、ディーノ王子にはヨガを、ティナ王女には歌を担当してもらうことになった。

 効果が見えたらその場で止めるけど、変化がなくても一週間は続ける。

 どうしてこの割り振りになったのかきくと、「やっぱり歌は唯一の女性に捧げたいからねー」とカルロ所長。

 うんうんとアルベルトも頷いているので、そういうものらしい。

 あれだけ言っといて女は歌っていいのかと複雑な気持ちになったけど、「破廉恥な歌でなければ普段から歌って欲しい。聞いていて癒やされる」そうだ。

 この世界の男子は乙女か!


 まぁいい。

  

「ヨガは昨晩したものを教えますが、歌は……」


「検証だから、ビアンカ様が歌ったものと同じ方が良かったんだけど、あの歌はやめてほしいかな」


「ですね」


 ルチア先生とアルベルトは苦い顔だ。

 二人にはさっき歌詞で止められたもんね。やっぱり直接的な歌詞はNGっぽい。


「歌いながら動ける歌って他にないんですの? わたくし、歌うだけではなくて、一緒に体を動かすのも楽しかったので、そういう歌がいいと思います」


「へぇ。ヨガみたいな動きがついてたの?」


「いえ、その……」


 ぎゃー、ビアンカ様、踊ろうとするのマジやめて!


「大丈夫です! もっと小さい子向けがあるので! ご安心ください!」


「それなら、今、見せてもらえるかな? 確認しといた方が良さそうだ」


「そうですね」


 自業自得とはいえ、どんだけ信用ないんだ、私。


「見たい、聞きたーい」


「楽しみですわ」


 ぱっと出てきたのが某日曜朝の女子向けアニメのエンディングだった。

 しかもあのアニメのエンディングはダンスもついてるので、新シリーズが始まるたびに見て、気に入ったら歌ったり踊ったりしている。

 ちなみに、まりあさんは全然興味なさそうだったのに、宇宙な2曲だけはなぜか気に入って、たまに部分的に歌っていた。なんだか懐かしくて耳に残ったらしい。まりあさんがけだるげに歌うのがハマってて、私も脳内リピート再生ソングになった。


 今から歌おうとしているのはかなり前のだけど、歌もダンスも特に好きだったから、きっと今でも歌って踊れるはずだ。


 立ち上がる許可をもらって、深呼吸して目を閉じる。

 目を開いてすぐ歌い出しながら、片方ずつ伸ばした腕を上げて祈るように組んで下ろす。

 頭の中では何回聞いたかわからない歌と映像が流れている。

 ダンスもそうだけど、インカムつけて踊ってるのが、本物のアイドルっぽくて好きだったなぁ。


 歌い終わったら、また微妙な空気になっていた。


 え? これ、破廉恥な歌詞じゃなかったよね?

 翻訳アメの効果がまだあるはずだから、意味がわからないことないはずだし。

 キスは文化的にセーフみたいだから、投げキッスっぽいポーズもギリギリ大丈夫だよね?

 

「~~可愛い! 可愛いですわ!!」


「あ、はい。ありがとうございます」


 良かった。セーフだったっぽい。


「……あ、ああ。うん。これなら大丈夫だね。ただこれ、ティナ殿下、覚えられるかな?」


「私の世界では、小さい子の方が覚えが早いです」


 園児の集中力は最強だと思う。

 翌日に歌いながら踊る子を見たときの敗北感ったらない。


「わたくしも、わたくしも覚えたいです! ユリア様、ぜひ教えてくださいませ! もう一度、歌ってほしいですわ!」


 いつかのように「喜んで!」と勝手に口が答えそうになるので慌てて押さえる。


 いやいや、ビアンカ様。落ち着いてください。

 今のビアンカ様なら、むしろもっと別のを歌って踊って欲しい……げふんげふん。


 口を塞いでいる私の事情を察したルチア先生が、助け船を出してくれた。


「ビアンカ様、後からなら何回でも踊ってもらえるから、今は後にして?」


 めっちゃ圧のある笑顔にビアンカ様も少し落ち着いたようだ。


「んん。仕方ありませんわね。ユリア様、絶対ですよ! 絶対に後からわたくしにも教えてくださいね!」


「はい」


 やっと私の口のムズムズが止まってほっとする。

 アルベルトとカルロ所長はなにやってるんだと見ると、どちらも大きな手で顔を覆ってうつむいている。


 なんだろう? 

 まぁ、ルチア先生からお墨付きがもらえたからなんでもいいか。


 方針も決まり、まずルチア先生から王様にビアンカ様の姿のことを詳しく説明して、双子のエネルギーについても話してもらった。その上で王命を出してもらって、ルチア先生、アルベルト、カルロ所長、私が、ディーノ王子とティナ王女とそれぞれお付きなしで一緒の部屋にいられるようになった。

 表向きの目的は『王族に私の世界の秘密の技術を教える』ためだ。

 王族にしか教えられないという理由で、お付きには遠慮してもらう。でも、ビアンカ様が病に伏している(ことにしている)今は、万が一のために私を見張る人物が必要ということで、三人をつける。


 このことを双子と双子のお付きにも説明した。

 双子にはまず最初に、今回、別々に習うことは双子の間でも秘密にして欲しいということをよくよく言い聞かせた。

 できれば寝床もわけたいくらいだけど、さすがにさみしいだろうから、「一週間が終わるまでは絶対に秘密だけど、終わったら話していいから、それまで我慢してね」と約束する。

 双子はいいお返事をしてくれた。 


 検証の準備の合間にビアンカ様と歌って踊っているので、私は離宮に戻らず、ずっとお城で過ごしている。たまにカルロ所長が来ては、研究所のことを話して帰る。

   

「カルロ所長、なかなか研究所に行けなくてすみません」


「いいよー。こっちの方が重要だし急ぎだしね。僕も面白いから全然いいよー」


 こうやって話す時は軽いのに、真面目な話したらやたら長くなるのは、やっぱり言葉づかいに気をつかうからかな?

 とりとめのないことをぼんやり考えていると、

 

「僕も色々と聞きたいことができたからねー。さっさと終わらせて、じ~っくり研究しよう、ね?」


 ひぃ。カルロ所長、なんか怖いです。

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