78.自画自賛
前回のあらすじ
アリスが助けた人たちを地上まで送ることにする。
鬱蒼とした森の中をものともせず1人で歩く少女がいる。自分が歩く道の草が燃えるくらいの火をどこからともなく放つ様はこの世界であっても割と珍しい光景だ。
一般的には手先から火が出てくるようなスタイルや手に持つ魔道具のステッキを使い、そこから発生させる方が多い。どちらも中空から湧き出るというよりは何らかのものからだ。
普通ならセシリアのスタイルは操作も難しく、燃費も悪く邪道とされる部類のスタイルだ。しかしそれはあくまでも普通ならである。
セシリアの場合自身の魔力はこの際魔法を直接的に発動させるためでなく、間接的に発動するように働きかけている。どういうことかというと、その魔力は周りから集めるためのものだから、集める起点さえ用意出来ればいいのだ。ただ魔法陣とは違い大きな魔法にはこの方法は使うことが出来ない。それに余程の魔力に適合した人間でないと行使は出来ない。
「お、いい調子じゃないか?」
どうやらセシリアは新しい魔物を見つけたらしい。
すると突然魔物の下の地面から白い板のようなものが魔物だけ乗せて勢いよく浮かぶ。
あまりに一瞬のことであって魔物もその瞬間隙が生まれる。それと同時に先程まで少女の背中に担がれていたはずの大剣が抜かれており、その場所から姿が掻き消えた。数瞬後、魔物は雷の如き頭上からの攻撃により黒い霧と化した。
もちろんその攻撃はセシリアによるもので、剣を上から突き刺したのだ。そのままの勢いで下の板まで貫通すると思われたが見事に勢いを殺して着地してみせる。
そしてワンテンポズレて何か硬質な物体が板に落ちる音がする。
セシリアの横に落ちたそれは魔物の魔石だった。
「我ながらに素晴らしい方法だよな。魔石見つけやすいし、不意をつけるからほぼ一撃で確実に倒せる上魔石の回収も楽」
セシリアの言う通り、鬱蒼と茂る草木の中に魔石が落ちてしまうと幾ら魔法があるとはいえ毎回となるとなかなか面倒なものになってくるのをこういった形で解決してしまうのは素晴らしい方法だ。しかし、当人は魔力の消費が普通に倒すより圧倒的に増えていることには気付いていない。
そうは言っても魔力量の3パーセント程度だ。
この程度なら10分もしない内に回復してしまうので4時まであと6時間ほどある。試験で使った魔力を考慮しても60回以上――無駄なことに使わなければ――この方法が使える。
これは相当燃費の悪い戦いと言えるだろう。果たしてどうなることやら。
そんなことは眼中にないと言わんばかりに、
「しかも華麗に着地出来たし、黒い霧もカッコよく晴れていったから満点」
セシリアが自画自賛するだけあり、先の様子は映画のワンシーンを思わせるような息を呑むような光景であった。
「しっかし同じダンジョンでもここまで魔物の質に差があるとは正直驚きだな。それに数も多いし試験を用意するだけあんなぁ」
そう、ダンジョンは千差万別と言っても過言でもないほどそれぞれに特色があるのだ。魔物の強さだけで言えばこのダンジョンは上位に位置する。魔物の量で言うと普通だ。
前の学院で行ったダンジョンは魔物の強さも量も大分下層に位置していた。それでもそこら辺の森よりかは遥かに危険性が増しているということを考えると、ダンジョンに来るということ自体が危険なのだ。
それを知らずに余裕を持ってきてない人はダンジョンというものが広く知られたこの世界では少ないと思われる。いや、身近な存在となりつつある故に油断する人も出ているだろうからダンジョンでの被害は割と多いのかも知れない。
お、魔物発見――って先客いたか。
ステッキに魔物反応があり駆けて行ったのだがそこには既にパーティーと見られる数人がかりで倒そうとしている姿が目に写る。特に押されている様子もないので他の魔物を探すことにする。
魔物って生物かどうかも怪しいけど違うものに置き換えて考えると可哀想だよな……。




