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神のマジシャン〜やはり魔法は便利です!〜  作者: 重曹みっくす
第4章 ルキン帝国へ行こう
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76.助けられた

前回のあらすじ


ケイが新しい剣を出した。

アリスは人助けに行くことにした。

「エイミーさんが助けを呼んでくるまではなんとしても持ちこたえるんだ!」


 本当はこうなるはずなんかじゃなかった。


 目の前にはDランクの直径1メートル程の巨大なスライム型の魔物が2体とCランクの体長4メートルある猪のような魔物が1体いる。対して今の俺らは回復系が得意なローガンは助けに呼びに行きいない。そして、このパーティーの要とも言えるリーダーのウィルさんは今は相当傷を負って意識も失っていた。こんな状態ではとても戦える状況では無い。


 だからウィルさんと同じBランクの自分がCランクの魔物を、ソフィーさん、ローガンさんにDランクの魔物を任せた。

 ただ、2人ともCランクではあるが後方支援を主とした戦闘スタイルでこのような接近戦は避けたい状況だ。しかし、もはや前衛の2人のうち1人が離脱した上に昨日からろくに休めていなく疲労も蓄積していて正直助けがなければ、あと10分も持たないだろう。そうなればここで最期を迎えるかもしれない。


 僅かな希望をエイミーに託し俺は剣を振る。


 思わず目を閉じてしまうくらいの突風が突如吹く。

 その突風を作り出したのは何かが飛んできたからだろうと音から判断する。


 そして次に目を開いた時には、張り詰めた緊張が嘘のように散っていく俺の気持ちを具現化したかのように周りには3つの黒い霧が散っていた。


 死をも覚悟したこの戦いがなぜこんなにも簡単に終わってしまったのか、とふと疑問が湧いてくる。

 いつの間にかどこらともなく出てきた涙を拭い周りを再び一瞥する。


 するとウィルさんに、コートの胸部の辺りが盛り上がってるところから女性と思しき人物が何かを渡しているように見えた。もちろんその人とは面識は自分は無さそうだ。自信が無いのも日焼けを余程したくないのかフードを深く被っており顔がよく見えないからだ。

 素性も分かりもしない人間から受け取るのは普段なら避けるべきだが、ウィルさんもこのままダンジョンをその状態で生きて出られるかと問われれば、魔物という敵と遭遇しないとしても自信を持って首を縦に振ることは出来ない。だから、本人もその可能性に賭けたのだろう。いや、良く考えれば害を加えるのが目的ならばこんな回りくどいことを今この状況でわざわざするとは考えずらい。


 ――ウィルさんは意識を取り戻したらしく自らその瓶を1度は断ったものの受け取り、怪我したところにかけたり飲んだりしている。

 それはポーションと思われるが、ほとんど無色透明であれでは効力には期待出来ないだろう。しかし、ウィルさんは信じられないといったどこか覚束無い様子で立ち上がると、足を上下に動かしたり肩を回したりして一通り確かめたのかそういった運動をやめ、その渡してくれた人に何回もペコペコと頭を下げている。


 ――って俺は何をやっている……! 俺たちを助けてくれたのはきっとあの人だ。今すぐお礼にいかなければいけないだろうが。


 そう思い俺は立ち上がろうとした。しかし、俺の手足は震えていて力が全然入らなかった。もう怯えるものと戦う必要はない、怯えるものはここにもういない。そのはずなのに何故か動かない。


 俺は疲れてるのか。動けなくなるほど疲れたのか。

 こんなのは初めてだ。


 座った状態だった身体を俺はだらしなく地面に投げ出し天を仰ぐ。


 自分が苦戦して魔物、更には2人が戦っていた魔物をも意図も簡単に一蹴りしてしまい、死の淵から何事も無かったかのように瞬時に回復させるような見たことも無いような凄いものを躊躇いもなく初対面の人に渡せるような人がいる。

 自分は昔より強くなった。しかし、上には上がいた。

 そんな高みの存在に自分は助けられた。


 自分の無力さ、魔物を自分の手で屠れなかった悔しさ、仲間が助けられ安堵する気持ちだったり、その女性に憧れを抱いたりといろいろな気持ちが込み上げてくる。


「君もひどい怪我だね……。これを飲めば傷はもちろん疲れもある程度とれるよ」


 気がつくと隣にはその女性が横になっている自分にわざわざ目線を合わせるためかしゃがんでくれている。


 その時顔を確認出来た。

 黒髪で黒に近い青い瞳で、気を抜けば我を忘れて魅入ってしまいそうなくらい可憐な顔立ちだ。

 まだ自分と同年代、もしくは自分より若いように見えるのに、これほどの技量や財力はどこから来ているのか益々訳が分からなくなる。


「……あ、私の名前はアリスって言うんです! これはポーションなので、変なものじゃないですよ――っと言っても初対面の私なんかからじゃ信用出来ませんか……」


 別にそういう訳ではなかったがいろいろあり過ぎて上手く言葉を紡げず、ボソッと自分の名前を一言言っただけでそれ以外は結局黙ったままだった。


 彼女は手に持つ袋の中からもう一本取り出し、どっちか選んで片方を自分に、もう一方を彼女がという提案をしてきた。

 ウィルさんに使われたものと同じものだとしたらさすがに申し訳ない。だから、俺は断ろうと口を開こうとするがそれよりも先に、


「それには及びません、アリス殿。デイブ、この人を疑っているのか?」


 ウィルさんがアリスさんを信用している。ならば本当に俺たちを助けてくれようとしてくれたということなのだろう。

 何故ならば、ウィルさんは種族固有スキルにより対象の嘘を見抜くことができるからだ。


「このような高位の品を受け取ってしまった自分が言えるような立場では無いが、これ以上迷惑はかけられない。分かるな?」


 つまり、受け取るなということか。俺はつい、受け取る前提でいたが、命に関わるほどの怪我をおっていない自分がそこまで施して貰うのはあまりにも図々しい。


「はい。アリスさん、私は命に関わるほどでは無いのでお気持ちだけでとても嬉しいですので、それはしまってください」


 ウィルさんの意を受け取り、自ら俺は断る。まだ身体を起こすのが限界だが、実際あと少し休めばまた戦えるようになるだろう。それにウィルさんも戦力に加わると考えれば、地上まで行ける。


 これ以上迷惑をかける訳にはいかない。


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