33.五階層の魔物
前回のあらすじ
ゴーレムだらけの階層を突破する。
「左から魔物が来る。今までよりも少し大きな反応ではあるが5匹だけのようだ」
「私が魔物を倒す番でしたね。頑張ってきます!」
なぜかティアナはさっきボスを倒したばかりだと言うのに逆に元気になっているようだ。まあボスとは言うものの苦戦もせずに、あの訓練で対策済みということもあり、普通にダンジョンを徘徊しているような魔物と同じくらいの疲労しか溜まっていない。
しかも、みんな当初よりも大分レベルも上がり、ダンジョンに慣れてきている。
だからティアナをはじめ、他の2人も元気なのかもしれない。
魔物5匹の反応がちょうど俺たちが見えない辺りで止まっている。
これは待ち伏せをしているつもりなのだろう。無駄だというのに可哀想。
「あれ?全然来ませんね。どうしたのでしょうか?」
炎を纏わせた剣を構えながら、ティアナが魔物がなかなか来ないことに対し不思議そうな様子でいる。
「そのことなら、ボクが思うに待ち伏せをしているんじゃないか? 強さもティアナなら処理しきれるくらいだからそのまま突っ込んで行っても蹴散らせると思う」
「待ち伏せをしているのですか、教えてくれてありがとうございます!」
待ち伏せをしていることを知るとさっき俺に教えてもらったところまでやや小走りで向かう。
ティアナが魔物が待ち伏せしている地点に着くとやはり、横から5匹が地面を蹴り飛び掛かる。
しかし、そんな行動も全て無駄となる。
何故なら、ティアナが予めそのことを知っていたということもあり準備万端の状態だったので、炎に包まれた剣に触れた魔物からどんどん黒い霧となりあえなく、滅せられてしまう。炎の剣はこの魔物にはとても相性がよさそうである。
たとえ待ち伏せに気付かずに行っていたとしてもティアナの技量を持ってすれば即座に対応され遅かれ早かれ倒されていただろうが。
◇
今、俺にはダンジョンを徘徊している中で1番強い反応があった。強さとしては一階層のフロアボスより若干強い反応だ。
しかし、これは魔力量の大きさなので必ずしも強さに比例するとは言えない。あくまでもこれは1つの目安に過ぎないので、許容範囲はある程度あるが良くも悪くも対峙してみないと分からないということだ。
そんな訳で、俺はそのことをみんなに伝える。主にエンセリアだがな。
「この通りを300メートルほど進んだところに2体の魔物の反応がある。ただ、反応の強さからすると1、2階層のフロアボス並みと侮れないやつの可能性が高いから気を付けろよ、エンセリア」
「殺り応えのありそうな相手で寧ろ楽しみなくらいだぞ」
エンセリアはといえば、フロアボスレベルを1人で倒せることを知ると凄い嬉しそうにしている。
段々と遠くに何かある程度しか分からなかった魔物の姿が近づいたことによって全体像がよく見えてきた。
2匹とも3メートルくらいの獅子のような魔物だった。
それを見つけたエンセリアは「久しぶりに精神魔法で殺し合わせて倒すか」などと物騒なことを呟いている。
魔物の方はこちらに流石に気付いたようだが悠然とこちらに向かってくる。
エンセリアもそれに対し小走り気味で歩いている。
俺たちはそれと何かあってもギリギリ援護出来るくらいから見守る。
遂に獅子の魔物がエンセリアに牙を剥き出しにして、噛み殺そうと飛び掛かる。
しかし結果は予想通りにエンセリアに触れた瞬間に敵意をお互いに向けあっている。
次第に首や腹の辺りなどを攻撃をし合い一方が黒い霧と化する。
エンセリアはそれを近くで、子供のじゃれ合いでも見ているかのように平然とその光景を見ていた。
しかし、今回はエンセリア自らの手で一匹となっても殺そうとはせずにただ見ているだけだった。
何故かというと、獅子の魔物は狂ったように自身の身体を噛み千切り10秒も経たないうちにそちらも黒い霧となってしまった。
「エンセリア、今何をしたんだ? いつも最後は自分で狩っているのに」
さっきのことが気になりエンセリアに俺は訪ねてみた。
「それはだな、〔互いに殺し合い、そして最後は自害しろ〕と命令したからだぞ。でもそれをやるのに魔力を使いすぎてもう戦えないぞー」
随分と恐ろしい命令を出すものだ。しかも、フロアボスクラスなのに。
1つだけ魔石がドロップしたのだがそれはやはり一階層のフロアボスと同じくらいの魔石だった。
「今日のダンジョンは次のブルーストさんが魔物を倒し終えたら終わりにしましょう」
今日はカリスが倒したら終わりだそうだ。
◇
「魔物の反応があった。今回は五階層の最初に出てきた魔物くらいの強さが15匹程いるなー。カリス、よろしくな」
「あー、やっぱりあれ魔物だったんだ」
「カリス。あれが肉眼で見えるのか?」
カリスが500メートルくらい先にいるのを見えていることを不思議に思い訊いてみる。魔物は周囲の景色と一体化してしまっているので、もし肉眼で見えるとなれば、アフリカの方で狩猟やっていて視力が凄い人たちくらいだろう。
「それ? ちょっと前に私って遠距離からもっと支援できるようにって思って遠くがよく見えるようになる強化スキル取得したからなんだよね!あ、そうだここからあの魔物全部倒してみよう!」
カリスはそういうと、プラズマを自身の周囲に発生させながら魔物に標準を合わせるようにじっと前を見ている。
「多分これで倒せるから見ててね」
周囲にあったプラズマは、魔物に向かって急激に加速していき数秒程でダンジョンが壊れそうな勢いの轟音が起こる。
魔物はというと、砂埃が晴れる頃には既に魔石となり地面に転がっていた。
勿論、魔法を使ってどうなったか見たけどね。
「ここから魔物を倒すなんて凄いなー」
「私も今それ思った! 自分でやったのにこう言うのは可笑しいとは思うけどスキルって凄い便利なんだね」
「ブルートスさんはとても魔物を倒すのが上手くなってますね。魔物を倒し終えたことなので魔石を回収して地上に戻りましょうか。ジェネレーティさんは今回も転移魔法をお願いできますか?」
「あ、大丈夫ですよ」
魔力も余裕が全然あるので俺は転移魔法で地上に戻ることを快諾する。
◇
地上に出てきた俺たちはベゼーヌ先生と別れ、買い取り店に今いる。
「おばさーん! 今日もたくさん売りに来たよー」
カリスが元気に買い取り店のおばさんに話し掛ける。
ここ一ヶ月の間で距離も大分縮まったのだ。
だからと言ってタメ語は少しどうか思う。まあお婆さんもそういうのは全く気にしていない様子ではあるから、一応俺もタメ語にしてしまっている。
「いらっしゃい。今日はどんなものが出てきたんだい?」
「今日は四階層のフロアボスを倒してだな、見ての通りプレートアーマーがドロップして来たんだよ」
俺は空間収納から四階層のフロアボスが着ていたプレートアーマーと思われる、ドロップしたものを取り出し見せながら言う。
「ほんとに、学院生なのか疑いたくなるスピードだね。しかも、四階層のフロアボスからプレートアーマーがドロップなんて数ヶ月に一度しか見ないよ。どれどれ、見せてみなさい」
俺は手に持っていたプレートアーマーをカウンターに乗せる。
「目立った傷も無いみたいだね。これなら、耐久力もあるから10,000ゴールドで買い取るよ。ほら、他のものも見ていくからどんどん乗せていって」
みんな、魔石やら魔物からドロップしてきた素材を置いていく。
それを一つ一つ丁寧に見ていき電卓に多分買い取り価格を打ち込んでいる。
魔石は秤に乗せて重さも基準の一つとして量っている。
「今日は25,000ゴールドだね。遂にここまで稼げるようになるとは驚きもあるが、ここまでの早さでダンジョンを攻略できるということはそれなりの実力が無いとできないことだから、納得の方が大きいよ。それよりも、クラスの中でもうダンジョンから戻ってきている人もいるだろうから行ってきなさい。はい、25,000ゴールドのお金ね」
俺たちは、買い取り店のおばさんに促された通りにお金を受けとると軽く挨拶をしてレーリット先生のもとへ向かう。




