1.プロローグ
主人公が異世界に飛ばされる前のお話です。
11/17編集
最初の方超展開ですが、意図的なものなので許してください。
俺は、鈴木浩司。地元ではそこそこ大きい中堅企業に勤める25歳。そろそろ、魔法使いにでもなれそうな歳だ。
学生時代、成績はクラスでも上位層に位置する辺りを維待出来るよう、あるものと出会うまでは勉学に励んでいたので、自分で言うのも何だが割と優秀であった。
高校も地元で一番手と言われるところに無事合格。しかし、それは唐突に受験も終わり、気の緩んだ俺の前へと現れた。そう、あるもの、とはVRゲームだった。
VRゲームは俺の人生に、多大なる影響を与えた。ゲームをしていれば、必然的にそういった界隈に足を踏み入れることとなり。見事にアニメ、ライトノベル等にもズブズブとハマっていき、元々惰性で勉強をしていたのだから、当然勉強などしなくなり、成績は下がる一方。
無論、親がそれを看過するはずも無く。こっぴどく叱られ、ゲームをプレイする時間は分刻みで管理され――いや、小学生かよ俺――無事成績も回復、高校卒業、短大入学、一人暮らし開始、とまさにトントン拍子。
短大も卒業が近づき、就職活動を本格的に始めたのだが、これが大変だった。俺は基本的に人とのコミュニケーションが苦手で、書類が通り、いざ面接となった所で言葉がすぐに出てこなくなってしまい、幾度となく落とされた。結局、就職出来ないまま、俺は短大を卒業。
仕方なくフリーター生活を重ね、最早諦めようかと思っていた頃。接客バイトの功で今の会社に採用して貰えたのだ。
俺は今、実に真面目に働いているよ父さん、母さん。ゲームはやめてないけど。
何を隠そう、会社に働きに出てるだけで、それ以外、俺は完璧なまでのゲーム廃人と化している。
話は変わるが最近、新しいタイプのVRMMOが発売された。
今までのものは、流石にものの複雑な仕組みや人の細かな動きまでは再現できず、実装されていなかった。しかし、バージョンアップされたVRMMOにて、遂に実装されたのだ。今までに無いその新機能は、ゲーム界に衝撃を走らせた。
その機能とは簡潔に纏めて言えば仮想現実における、極現実的な生活を可能にするものである。
ゲームをプレイすれば本当に異世界で自分が生きているように感じられ、街を歩けば、NPC同士でやり取りしたり、ものを売ったりしている、まるで個々に意識があるようなNPCが見られる。
今までにもゲーム内でのそのような演出はあった。が、更に現実味を増すこととなったのが、新機能、触覚と味覚、嗅覚。
これにより、五感すべてが実装された。
戦闘だけで無く、嗅覚、味覚が加わったことでゲームの中に新たに食事という楽しみも加わった。ゲームの中で食事ができるせいでか、自然とリアルの食事は質素になり、美味しいものやたくさん食べたいと言った食欲はそっちで満たすようになった。街なんかも歩いてるとまだまだNPCに規則性が感じられるものの、美味しい香りなんかも感じられる。触覚は買い物を街でするときに、商品を手に取るとき、戦闘時など、本当はこっちの世界で生きてるのではと錯覚してしまう程リアルだ。
それに、そのゲームはプレイヤー同士で闘うということも出来た。それは、森や遺跡とか限定で普通に買い物とかをして過ごす街やギルド内では出来ないものとなっていた。だから、これはどっちが狙っていたとかで揉めて話し合いでも上手く纏まらずどうしようも無くなってしまったときはよくこのようなプレイヤー同士で殺し合う何てこともたまにある。
基本的には、社会人としてリアルで生活をしている人も多いのだから和解出来ることが多い。そのようなことになるのは、リアルで嫌なことがあってその怒りをぶつけるためとか、ゲームのなかでは兎に角誰でもいいから倒したいとかいう人もいるからである。
しかし、それだけすごい歴史に名を刻むようなゲームを作ったというのに、製作者は誰一人として公開となっていない謎めいたゲームであった。
閑話休題。
このようなハマる要素があり過ぎて前代未聞の大規模な社会現象を引き起こすもとともなった。
無論、俺もそのゲームにハマった一人である。
このゲームではギルドで登録するとき職業を選べる。
【武道家】【剣士】【魔術師】の3つだ。
【武闘家】は己の肉体のみで戦う。単純なようだが、高度な技術と日々の練習、そして、実戦のときにすぐ動けるようにしなくてはならない危機察知能力などや敵の予備動作から予測をできるようにしておく必要がある職業だ。
【剣士】は自分にあった剣を見つけてまずは基本となる動きを覚え、さらに好きな流派を選び腕を磨くというものだ。そこから自分の流派を作ってしまう人も少なくない。
【魔術師】は魔法の仕組みをしっかり覚えないと発動ができない。その為、常に冷静でいなければ魔法は確実に発動できない。そして、何より大切なのは魔法の効果を如何に脳内でイメージできるかが必須となる。
そしてこの中から、俺は憧れの魔法を使える【魔術師】を選んだ。
最初はファイアーボールやアクアジェットなど簡単なものから徐々に覚えていった。
まだこれらは実戦に用いる程の攻撃力は無いが、基礎としてしっかり使いこなせなければならない。
まあ、これもガチ勢だからか物覚えがいいのか分からないが魔法の〈風〉〈水〉〈火〉〈土〉と4つの属性があるのだがこれらを全て使えるようになるには数ヵ月後になるようだが、僅か3日で使えるようになってしまった。
多分、これほどの早さで習得できたのもゲーム漬けの日々を過ごしてきたガチ勢だからであろう。徹夜で頑張り過ぎて昼夜逆転しかけたし。
実際、物覚えがよかったら昨日のご飯ぐらいは思い出せるし、会社でも少なくとも今より活躍できるので評価ももう少し上にあっただろう。
そんなこんなでギルドの依頼をこなしていった。
いつしかゲームの中では、俺はいつしか名を馳せるプレイヤーとなっていた。
ただその一方でそれをよく思わないものもいて、俺を狙ってくるプレイヤーが出てきたり、俺を倒したという称号を得たいとかいう変わり者がいたりで少し大変でもある。
さて、依頼の中には薬草の採集等もあったが、俺は探査や討伐中心。
採集は指定した薬草を採らないと依頼を達成できず違約金を取られてしまう。
このゲームを始めたばかりの頃、試しにやってみたのだが違う薬草を採ったということで依頼を達成出来ず、違約金を取られた上に依頼でその間違えて採ってきてしまった薬草を採ってくるよりも大分格安で買い取られてしまった。
それが、俺にとって最初で最後の採集の依頼だった。
探査の依頼は基本的に安全だが、稀に素人にはとても手に負えないくらいのモンスターが出てくることがある。
探査は、未開の地ということが多いから推奨されている基準をたとえ越えていたとしても未開なのだから出てくるモンスターも定かでは無いのである意味運でその依頼の難度が決まっているようなものだ。
俺の中で1番ヤバかったのは、古代遺跡で初めての探査だったと思う。
まさか床にもトラップが仕掛けてあるとは思わず、何も気にせず歩いていたところ、沢山の小型竜が待ち伏せして出てきたのだ。
基本1人でプレイの俺にとって最も恐れるべきは強さよりも数。
小型竜は強さは俺の相手として問題は皆無。だが、どうにも数が多すぎた。
なんと500匹程出てきたのだから。
今までどこに居たんだよ! っとツッコミたくなるがゲームなので、細かいことを気にするとキリがない。
取り敢えず円型防御結界を使い身の安全を確保する。
それを発動しながら、大型殲滅魔法を放ち続ける。俺の魔力が尽きるのが先か、小型竜を殲滅するのが先かということだ。
それから、数分後に俺が何とか勝てた。
記憶のなかでは1番長い数分だった筈だ。
討伐は相手が明確なので対策が出来るので探査程の危険はない。
数が多ければ討伐組として編成が行われてからの出発となるから数も気にしなくていい。実にいいシステムだ。
こんな感じで討伐依頼を暇さえあればこなしていく日々を過ごす。
そして、ゲームを始めて1年が経とうとしていた頃、俺は遂に公開されていた全ての魔法を使えるようになっていた。
全部で、使った魔法は1000種を越えていたが実際は、アップデートされる度にどんなものか自分の眼で確かめるためで主要となる魔法に比べ性能が劣る場合が多く、魔法の練習というより移動などの退屈を紛らわせるためによるものだった。転移魔法を使えば一発だけど、高難度の討伐依頼場所は魔力が乱れすぎていて転移魔法は危ないので、使わないのが常識でもあった。
全種類使えるようになっていたことに関しては、正直言うといつの間にかそうなっていたという感じだ。
しかしそんな何と無くこのようなプレイヤーとなっていた。
そんな俺の二つ名は《賢者》。
ゲームの中では嬉しかったが、現実世界で友達に呼ばれると、とても恥ずかしい所ではなく顔から火が吹き出る思いになる。
その後は俺は既存の魔法に飽きたため新しいことを始めた。
それは、ゲーム内で前代未聞の魔法を自分で作るということだ。
いや、正確には同時に発動と言った方が適切だろう。
例えば、風の魔法で竜巻を作って土の魔法で大量の石を混ぜて石の竜巻を作ってみるなどだ。
これにより、討伐の効率が格段に上がった。
日々この練習をやってると2つまで発動が可能だったのが、3つ、4つと出来るようになっていた。
流石に5つの壁は厚く、乗り越えていない。乗り越えられるのか?そもそも。
ある日、ゲームでいつものようにギルドの依頼を達成、魔法の開発で新しい組み合わせを試すのも、終えたので寝ることにした。なんの変哲もない日常である。
◇
『頑張れよ! 俺。この壊れた世界で』
少し青みがかった銀髪の女の子が俺に直接呼び掛けるような声を掛けて来る。口調は見た目と合っておらず、変わった子という印象も受けた。だが、それ以上に何かを感じた。
何故こんな状況に――
ピピピッ、ピピッ。
「あ、夢か」
今日は仕事もないので、昼までたっぷりと眠れた。
ただ、今日は少し変わった夢を見たものだ。頑張れよって何をだよ。くあ、と欠伸を零す。あの女の子、見覚えがあるような気がするんだよな。あんなに可愛い見た目であれば確実に覚えてる筈だが……。
しかし、夢だったことに変わり無いので深く考えることもなく、キッチンの横の収納スペースに大量にストックされたカップ麺を1つ手に取り蓋の一部を開け、ポットからトポトポお湯を注ぐ。
そして、スマホを開きゲームを始める。これはいつもの流れである。
別に、俺はVRMMOだけやっているという訳では無い。
単にゲームが好きなので、今まで頑張って進めて来たスマホゲームも毎日怠らない。とは言え、最近はVRMMOばかりで、ログイン勢へとなりかけているが。
気が付けばカップ麺は完成していた。若干麺が伸びている。ズズズ、とラーメン食ってますよ、と一瞬で分かる程の盛大な音を立て食べる。最近、ちょっとこの味に飽きてきた。食べ終わったらまたゲームをプレイしよう。
ふと時計を見れば、もう夕方だった。
流石に栄養面的に毎食カップ麺という訳にもいかないので、スーパーに惣菜を買いに出掛ける。
スーパーは歩いて行けるくらい近所で、非常に便利だ。いつもそこへ買い出しに出掛けている。
歩いていると突然、俺は光に包まれた。
しかし何事も無かったかのように、再びもとに戻る。
心臓に悪いな、ていうか何なんだという感じだ。怖いわ。
その後、若干さっきのことが気になりつつもスーパーに着き、いつも通り惣菜を選んでいる。
しかし、次第に視界が暗くなっていく。
ひ、貧血?
俺はなったこと無い故にこれが貧血というものか、とか最初は呑気なことを思っていたが、徐々に状態は悪化していき立っていられなくなる。
そして、視界も完全にブラックアウトし、次第に意識も徐々に遠退いていった。




