13.ダンジョン最下層
前回のあらすじ
温泉に入ったり、豪勢な食事を堪能したりする。
「すいません、お預かりした服を届けに来ました」
ん? ああそうか。
今、俺達はホテルに泊まってたんだ。
そして、昨日預けた服が届いたと。
「今向かうので少し待っていてください」
カリスはまだ寝ているようだ。
人前に出るので簡単に髪を整え、服を受けとる。
服を手に取ると、鼻を特別近づけているわけでもないのにしつこくないほんのりといい香りがする。
流石というところか。
いつもカリスが着替えて、そして俺が起こされるという形だが今日は逆だ。
つまり今日は俺が着替えて、カリスを起こすということだ。
いい香りになった服を手に持ち、特に急いでるわけではないが楽なので衣装変更で着替え、髪を櫛で梳かすなどし、しっかりと直す。
鏡を見て準備が整ったことを確認すると、カリスのもとへ向かい起こす。
「カリス、もう朝だ」
「…………分かった。そこに置いておいて」
目を開けずに答え、起きる様子はない。
この様子だと二度寝だな。
俺より先に起きてるカリスが起きないということは余程疲れているのだろう。チェックアウトの時間までは、まだ時間があるから寝かしてやろう。
俺は暇になったので、今度こんないい香りの洗剤を作るべく、洗剤の成分の解析と香り成分の保存をする。
いつもこんな服が着られるなんて………ふふ、考えただけでも素晴らしいことだ。
いつか調合して作ってやろう。
できるだけカリスを寝かしてやろう、という話だがチェックアウトまで1時間しかない。
2日分なんか払うことになったらお金が不味すぎる。
食事はチェックアウトしてからでもできるようだが宿泊プラン外という扱いで別料金が発生する。
食事は諦め、ダンジョンに行く道中にでも済ませることとしよう。
「カリス! 時間が後1時間しかない、起きてくれ」
カリスを揺さぶりながら声をかける。
「ご、ごめん! 寝すぎだったよ。今起きるから待って」
カリスはベットから飛び出し、服を着替えて髪をセットしていた。
「できた。間に合ったよね?」
「早いな、ご飯も食べられそうだ。だが、もしも食事が長引いたら終わるから、チェックアウトとするとしよう」
忘れ物がないか確認して、部屋を後にする。
階段を下り受付へと向かう。
「チェックアウトします」
俺達はチェックアウトを済ましてお金を払うのみとなる。
果たしていくらだろうか。
「今回の宿泊代は40万メタルとなります」
二人の財布から20万メタルずつ出して支払いを済ます。
「足りてよかった」
「一番安いところでもあそこまでとは値段だけだと驚きだが、設備や待遇まで見てしまうと妥当だな」
兎に角足りて良かったな。
◇
ダンジョンに向かう途中、軽く食事を済ました。
空間収納から剣を取りだしダンジョンへと入って行き、人の目がなくなると、前回の続きからの23階層に転移する。
「前回と同じで私が魔物を倒すから、セシリアちゃんはトラップとかよろしくね」
前回と同じスタイルで行くことにする。
「わかった、カリスの後をついていくから後ろはあまり気にしなくても大丈夫だぞ」
カリスの放出系魔法は、この前と変わらず使えている。
もっと、使えるようになっている様にも見える。
やはり休憩を適度に挟むということを忘れないようにしないとな。
忘れずに使える魔物の素材は回収していく。
前回の分もまだ換金していないが、魔物を狩っているのはカリスなので8:2で分けようと思うがどうだろうか。
これが終わったら訊いてみるか。
ついに俺達は30階層までくるするとゲームなどではよくある、フロアボスという存在が出てきた。
「その36階層まで行ったってやつはフロアボスの存在が居るといっていたか?」
「そんなこと聞いたこともない」
そんなフロアボスとかいうよくわからないもので、攻略組の混乱を避けるために敢えて嘘をついたか。
それとも見栄を張り話を盛ってしまったか。
俺的には後者の方が有力だとは思う。
ここまで、魔法なしでトラップも回避。魔物も剣のみで対応。
これで行けるほど甘くないと思うが他人のことには、変わりない。
正直嘘だろうが本当だろうがどうでもいいのだ。
30階層のフロアボスは巨体な蜘蛛みたいなやつだった。
気色悪すぎる。
まあ、カリスにとっては数分もあれば倒せる敵でそこらの魔物より一回り強いくらいだ。
31階層からはトラップも落とし穴がありそのしたには剣が敷いてあるなど悪質なものが増えてきた。
魔物はさっきのフロアボス程度の強さになる。
40階層までは今までと違い、変化が殆どなかったのでボスだけ言っていく。
まあ、風の魔法で首を切られたり、炎で大火傷を負わせたりとそんな感じで倒されていくだけだ。
31階層のフロアボスは牛みたいなやつだ。
32階層は岩の動くバージョンの生き物か、すらよくわからないやつだ。
ここでお昼休憩を挟む。
お腹が満たされるとやる気も出てくるものだ。
引き続いて、33階層はミノタウロスっぽいやつだな。
34階層は巨大な虫だ。あまり、言いたくもないあいつだ。すばしっこくてたまに飛ぶ茶色い虫だ。前世ではスプレーかけてる人も少なからずいただろう。
誰だ巨大化させたやつ。
それはさておき、35階層は空飛ぶ鮫だ。なぜ飛んで地上にいる、と訊きたいところだが答えるわけもないのでカリスによって倒される。
36階層は熊だ。俺が最初に倒したのもよりも大分強い。
37階層はライオンだ。サーカスで見たライオンが子猫ちゃんに見えるくらい、強かった。
38階層は大蛇だ。地中まで潜れるから恐い。
39階層は鷲だ。恐竜を魔物にしたみたいなやつだ。最早竜とも言える気がした。
そして、40階層。
そこにはいると、辺り一面が白く光輝いている。奥には、竜がいた。
さっきのを竜とか言ってるのが恥ずかしいくらいだ。
どうしようか……。
ついに俺達は40階層のフロアボスと対峙している。
「よくぞ来た。敵人よ、我を今までの雑魚と呉々も一緒にせずに全力を出すがいい」
なに、この圧倒的強者感?
喋れるのは驚いた。
カリスには確かにこいつは倒せないだろうが俺は倒せるけどね。
倒すだけだとなんかもったいないし、この竜いろいろ知ってそうだから訊いてやろうか。
(カリス、こいつの相手は俺がやる)
(うん、任せる)
カリスに俺が相手をすることを伝え、竜に話し掛ける。
「すいません。できれば穏やかに情報を訊きたいのですが、いいですか?無理だというなら捕縛させて貰いますが」
「がはっははは!! 我の前でその様な戯言抜かすか。なかなかに面白い奴が来たものだ」
戯言ではなく本気なんですが。
「その気がないようなので、捕縛させて貰います」
俺は行動制限で、竜の動きを止める。
これは物理的に動きを止めるわけではなく、脳と肉体を一旦隔離させる魔法だ。
仕組みがバレたら策を講じられてしまうが。
ただし、喋れるように指定制限解除の魔法をかける。
「な、なんだと?! 我の動きを一歩も動かず封じるか!! そもそもなぜ魔法が使える、まさかとは思うが地下世界から来た者か? それでも地上に来れるほどの魔法使いが居たとは」
地下世界?
何を言ってるんだこの竜。
異世界という意味ではなさそうだな。
「すまん。言ってる意味がよく分からない。それよりここはどういった意味がある」
「我を倒せば、どうせ地下世界へ。……ダンジョン。それは世界中にある。しかし、そんなものがなぜある」
なんか語り始めた。
それとも同情を求めて命乞いをするつもりなのか? 俺は無闇に命を刈り取ったり、争い事は起こしたりはしないのにそう見えたのかな……? まあ、すぐに強硬手段に移したからそう思われても仕方ないか。
「誰がなんのために作った? 地下にそんなものを作る理由はない。なら、何故こんなものが存在する。この先になにか意味があるものがあるからだ。我もそれを守る1柱でしかない。詳しいことはこの先に行って確かめろ」
しかし、なんの変化もないのでこの先がどこかわからない。
「この先に、と言いましても………どこですか?」
すると竜がつい、やってしまった的な感じで、
「魔法のせいで動けないままだ。なにもできない。魔法を解除してくれ」
今更、実力差に気づいているだろうしもう大丈夫だと思い、魔法を解く。
竜は自分の体が動くことを確認すると、このなにもない白く光るだけの空間に別のところに繋がっていると思われる扉が出現する。
「んん、改めてこの先に行って自分で確かめろ」
俺はそれに攻撃術式が組み込まれてないか確認すると、カリスと一緒に入る。




