修行
この谷に来て2年が経った。私は背が少し伸びた。そして、今日から魔法と剣術を教えてもらうようになる。理由は簡単だ。いつかこの谷から巣立つときがくる。その後に一人でも生きていけるようになるためだ。剣術はロー。魔法はリューに教えてもらう。捨てたはずの楽しみと言う感情が再びわきあがった。
「テナー、早くやるぞー。」
ローの呼ぶ声が聞こえる。今日はまず剣術からだ。「よし、テナ。まずは構えからだ。こう持って……」
剣は重かった。練習用だと聞いたが、持ち上げるのに精一杯だった。
「お、重い……。」
ぶつくさ言う隣で軽々しく持つロー。
「そうか?じゃあまずは力をつけて、振れるようにならなきゃな。」
……どうやら先は遠いようだ。
次は魔法だ。最初は魔法の原理から教えてくれるらしい。
「魔法はいかに自分の魔力を効率良く使えるかに限るんだ。どんなに魔力を増やす修行をしたとしても効率が良くなくちゃ意味がないんだよ。」
効率の良い……魔法?不思議そうな顔をする私を見て笑いながらリューは言う。
「効率の良い魔法というのはね……例えば人間の魔法は詠唱をして、魔法を使う。だけど、この方法だと無詠唱の倍近くの魔力を消費しちゃう。それに、無詠唱でもイメージするのが詠唱の時の言葉だから僕達の魔法より多くの魔力を消費しちゃう。だから、今回からイメージする魔法を教えるよ。」
魔法には胸が高鳴る。ずっと格子からみていた。皆が魔法を使っているところを。自分でもできないかと思い、試してみたこともあった。だが、どうすればいいのか分からない。だから、眺めているだけだった。その魔法がこれから教えてもらえるのだ。
「じゃあ、まずは指先に魔力を集めてみて。」
魔力を集める……。私は集中した。身体中が何かで満たされている、
そんな感じだった。それを指先に集める。そして指先に乗る程度の小さな火をイメージする。