第十六話 二人の時間
ちょっと来週が忙しいので短めですがお許しください
再来週も投稿予定です
僕らは食べ物系の出店を探して歩いていたが、そのラインナップはどこかで見たことあるような、かといってなじみがあるわけでもない、独特のものだった。まぁ異世界だし当たり前か。多かったのは前世の世界でいうソーセージっぽい棒状の肉料理と、魚をフライしたと思われる料理だ。世界線が変わっても、ジャンクな料理という概念は不変らしい。普遍の価値に出会えた僕は、不偏の立場で評論してやろうと心に決め、いろいろと買いあさった。
どれもうめえ…。しかし、出店の料理って何でこううまいんだろうね。きっとそれは味だけじゃなくて、場酔いというか気分の影響が大きいんだろう。ならば―
「サトシ様!これ、ホックホクでとってもおいしいですね!」
―僕に満面の笑みを向けてこう言ってくれる、この娘と一緒に祭りを回れることが一番のスパイスなのだろう。
「ああ、うまいな」
これはお世辞なんかではない。きっと、かつてのように誰もいない部屋で一人食べる夕食として、冷めたコレが出てきたところで全くおいしくなんてなかっただろう。けど、今は違う。これがうまいのは、きっと料理が暖かいからってだけじゃない。暖かいのは、むしろこの場、あるいは関係性なのだろう。
ついつい食い意地が張った食レポを続けてしまったのは人の性というべきか。やはり勇者と言えども人の子ではあるようで、三大欲求には勝てないらしい。だが、少し視野を広げてみれば出店は何も食べ物屋ばかりではなかった。見渡してみれば、ダーツのようなゲームや、射的の弓矢版みたいなゲームを提供している屋台も多くみられる。また、店を構えていなくとも、空いたスペースでいろいろな芸を披露している者たち、いわゆる大道芸人が数多くいた。
多少腹の虫が鳴りを潜めた僕らは、今度はアミューズメントやエンターテインメント系を見て回ることにした。マグラスは確かに大都市で人も大勢いたが、そこかしこでいろいろな催しが行われる規模は比較にならないものだった。ナスオの言う通りというべきか、今宵の祭りはやはり特別なようだ。見渡せば色々な芸をしている者がいる。ジャグリングしたり、楽器を演奏したり、口から火を噴いたり、少女の口元を抑えて連れ去っていたり…
ってオイ!最後のは違うだろ!
そのうち本編でも説明を入れると思いますが、ヴァートの村は綿の生産で有名な村です
現在の王国の主要産業は繊維工業になっています