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第十五話 古来の祝祭

ヴァートの村は綿の栽培で有名な村です


第15話


「つきましたよ、サトシ様!ヴァートの村です!」


 馬車から降りるや否や、リーアがうれしそうな声音でそう言いながら軽やかに跳ねる。スキップしちゃうくらい楽しみだったのか。

 王都マグラスから馬車に揺られることおよそ5時間、次なる目的地・南の聖域に最も近い村、ヴァートの村に到着した。いや、疲れた…。もう夕暮れ時であり、もう数刻で日も暮れようかという雰囲気だ。幸いにも宿はアナスタシオが手配してくれたので、今から宿探しに奔走する羽目にはならずに済む。ありがとうナスオ。


「見てください、サトシ様!」


リーアが僕に呼び掛ける。その指さした先には、多くの人だかりと無数の明かり―祭りの出店の照明―があった。


「おお、これは…!」


 雰囲気こそ中世ヨーロッパ風、というか異世界風だが、大まかな空気感は日本の境内でやってるやつと同じ感じだ。村の中心には小高い丘があり、その頂上にある建物に連なるように、そしてそれを取り囲むように、様々な店が出ていたり様々な催しが行われたりしている。聞いたところによると、あの建物は王国有数の神殿のひとつだそうだ。やはり祭りってのは宗教的な背景を持つのが常ということか。もうちょっと詳しく知りたくなってきたな。なんだか好奇心が湧いてきた…


 好奇心は猫をも殺す、というのは確かどこか外国のことわざだった気がするが、さすがに勇者までもは殺せないらしい。しかし、軽いピンチをもたらすには十分だったようだ。祭りの背景に夢中になっていた僕は、人ごみの中リーアとはぐれかけていることに気付かなかった!


キョロキョロとあたりを見回すが、いかんせん人が多い。もっと身長が高ければなぁ…。しかしこうなっては恥ずかしがってなど居られまい。


「リーア!どこにいる!」


 人ごみの中で大声を出すのは少し気恥ずかしかったが、これだけいると逆に大丈夫な感じもある。事実、誰も僕のことなんか気にしてない。それはそれでちょっと悲しいけど…


「サトシ様―!ここですー!」


少し離れたところからリーアの声が聞こえた。そこへ向かうと、すぐに合流できた。良かった…


「申し訳ございませんサトシ様、ご心配をおかけしてしまいまして…。私がはしゃぎすぎたばっかりに…」


しゅんとしたリーア。かわいい。…じゃなかった、かわいそうだ。せっかくの祭りなのに、ここで自分を責めさせてちゃね。


「大丈夫だよ、リーア。それにこれだけ人がいるんだ、君のせいじゃないさ。僕がもっとしっかりしていれば…」


「そんな、サトシ様のせいでは…」


リーアは責任を感じてしまっているようだが、せっかくの祭りなのに楽しめなきゃ損だ。リーアに責任を感じさせないために、そしてもうはぐれないために、できることといえば…そうだ!


「リーア、手をつなごうか」


「ふぁっ!?」


なんかすごい驚かれ方したけど気にしない。僕はこの世界に来て若干メンタルが強くなった気がする。


「これだけ人が多いとまたはぐれちゃうかもしれないし。手をつないでれば安心かと思ったけど…嫌、だったかな?」


「えっ…」


しまった、下心が出すぎたか。こんな美少女と手をつないでお祭りとか幸せ過ぎるし、ドン引かれても文句は言えな…


「とんでもないです!!不束者ですがぜひよろしくお願いします!!」


食い気味にOKされた。やったぜ。なんか変なテンションになっちゃってるがするが元気になってくれたなら何よりだ。というか僕自身、これは役得と言っていいだろう。


「えへへ…サトシ様と手を…」


「ん?なんて?」


「いや、なんでもないです!それよりサトシ様、お腹すいてきてませんか?」


「そうだな。せっかくだし、出店でも見て回るか」


やっとリーアがかわいくなった気がする

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