第24話
ーー同時刻、ラグアナ湖水中では
水が身体を包み、体全身に冷たさが伝わってくる。とても気持ちが良い。最近はほぼ毎日だが、いつまで経ってもこの感覚は飽きない。そして俺は、マップを見て確認しながら、暗く深い湖底を目指して進む。
そう、ワイバーンを倒し十日ほど経った今、俺はラグアナ湖の中心付近を探索していた。
ふぅー。気持ちぃー! やっぱり泳ぐのは楽しいな。まあ、いつもの事だけど。
湖の探索を初めて大分経つけど、それも近日中で終わりか。あと、今潜っている所だけで湖全ての探索が終了するしな。そう言えば、最初の目的は新しい魔獣の発見とレベル上げだったか……。ここ数日のの探索で見つけた魔獣はD~Cランクまで結構の種類見つけたけど、レベル上げをするならやっぱり水中蜥蜴でやるのが妥当かな。あいつは、そんなに強くないし、ランクもCで丁度いいしな。
考え事をしているあいだに水中が大分暗くなっていた。
っと、結構深くまで来たな。えーと、近くに敵は……まだいないか。それに、まだ湖底に着かない。他の場所はこんなに深くなかったが、湖の中心付近ならこんなもんか。
ーーまだ、湖底に着かないか。マップに反応は……おっ、ちらほら出てきたな。マップに表示された赤点をクリックするような感じで着目して……あれ表示されない。それじゃ、隣のヤツは……こっちも表示されない。他の奴は……駄目だ。全部表示されない。となると、ここにいるやつは全員初めて見る奴なのか。普通は、出会ったことのあるやつなら名前とレベルが表示されるはず。
よし。どんな魔獣か確認しない訳にはいかないから、取り敢えず1番近い北西方向の奴の近くに行ってみよう。そんでもって、鑑定して勝てそうもなかったら全力で逃げる。今相手との距離は……大体50mって所か。それと、相手は自分よりもう少し深い所にいるっぽいから、上から確認する感じになるかな。
それじゃあ、赤点目指して出発進行!
スキル「隠密」を使ってる事を確認して、バレない程度でできるだけ早く泳ぐ。
ーーっと、そろそろ見えてくる頃だな。そう考えた頃、マップに赤点で表示されていた魔獣が姿を表した。
鱗は無く、濃く青い粘膜で覆われている体。体長2mを超える魔獣をも丸呑みしそうな、大きく幅の広い口。そして、特徴的な長い口ひげ。体長は3mかそれ以上ありそうだ。
あれは……鯰か? うん、多分ナマズだろう。大きさは、水中蜥蜴と同じくらいか。でも、ナマズか……何かビリビリしそうで何か怖いな。まあ、取り敢えず鑑定を使って見ないとな。どれくらい強いのかも分からないし。
スキル『鑑定』。
「名称 大食い鯰 危険度 C LV35
解説
魚類型魔獣の一種、ナマズの上位魔獣。名前の通り大食いの魔獣。全長は小さい個体では3m。大きい個体では、5mを超える個体もいる。場所によっては食物連鎖の頂点に立つ。夜行性で昼は基本的には動かないが、攻撃を受けた場合などは遠慮なく襲ってくる。ナマズといっても更に上位互換の魔獣で無ければ、雷を使ってくる訳では無い」
……ランクC。水中蜥蜴と一緒か。けど、レベルがあのワイバーンより高い。ここは、引くべきか昼では動かないって書いてるし、バレてない内に引くべきか? ……うーん。でも、動かないんだったら先手必勝でスキル使って倒した方が良いのか。うーん。
考えながら何となく、チラッとナマズの方を見る。が、そこにナマズの姿は無い。
あれ? ナマズは? さっきはいたのに。というか、何か後ろから凄い嫌な気配を感じるんだけど……。
恐る恐る、首を回し後ろを見ると、そこには巨大な平べったいナマズの顔がありましたとさ。おしまい。
って、ふざけてる場合か! このままだとヤバい。食われる!
急いでスキル『高速水泳』で退避を。紙一重の所でスキルを使い、上手く避ける事に成功。ただ全力で右へ左へと全力で逃げる。幸いスキルを使えば俺の方が相手より早いみたいだ。このまま逃げ切る。
俺は無我夢中で逃げて、逃げて、逃げた。マップも確認せず、上へ、下へ、右へ、左へ。数十分全力で逃げ、やっと振り切ることができた。
はぁ、はぁ。やっと逃げれた。流石にスキルの連続使用は疲れる。
ここは……
場所の特定のため辺りを見回す。
周りは暗く、地面があり、水草や岩がある。
湖の底か。マップでどの辺か確かめないと……って、さっき無我夢中で逃げた時にマップを切ってたみたいだな。
スキル『鑑定』マップ ウィンドウ化。
俺の声に反応してマップが表示される。
よし。それで場所は……。
っと、ここで俺はある事に気が付く。何個か表示された赤点の中に、自分より僅かに10m程離れた所に他より明らかに、大きな赤点があるのだ。
なんだこの赤点の反応。他の奴よりめっちゃ大きい。こんな反応は初めてだ。確認するか……でも、ついさっきあんな事があったから、やっぱり辞めるか。うーん。……よし、行こう。人間の好奇心とは時に恐怖心をも凌駕するのだ。
それじゃあ、こっそりこっそり近ずいてーーて、なんだ壁しかないじゃないか。まさか、この壁がデカい赤点の正体か? まさか、そんなわけ……。まあ、一応鑑定しておくか。
スキル『鑑定』。
「名称 世界食い鯰 危険度 A LV80
解説
魚類型魔獣の一種、ナマズの上位互換の大食い鯰の更に上位互換に位置する魔獣。すなわち、キャットフィッシュの最終進化形態である。全長は、10mを優に超える。自分と同等の魔獣をも丸呑みにする、正に化け物である。夜行性で昼は基本的に動かない。進化前との違いとして、大きさ以外にも雷を扱う事ができるという違いがある。また、この魔獣は一部の者に神聖視されている。
称号 湖の主」
ん? ん、ん、ん、ん、んー? この巨大な壁が、魔獣だと……。
ヤバい、ヤバい、ヤバい!
相手はAランクの化け物だぞ。こんなのに、見つかったら、確実に死ねる。見つかる前に早く離れないと。
スキル『高速水泳』!!
早く、もっと早く! 上へ、上へ、上へ逃げるんだ!!
あれから約10分後、尋常ではない速さで逃げ、陸へと上がった。そして、そのまま一目散に拠点へと帰り、そのまま眠りについた。




