第23話
ーーそして次の朝一つのテント内
ここに数名が集められていた。
「はぁ……まだ偵察の任務全然終わって無いのに、また招集ですか。こっちは偵察とかがあって時間ないんですが」
と、一人の小柄な女性が愚痴を言いながらテントに入って来た。黒を特徴としたコートの様な物を着ていて、腰には少し長めの短剣を二本。髪は白髪で肩につく程の長さ、フードは被って居ないので分かりやすい。身長は小さく140cm程だ。
「すまないな、スクリティー殿。偵察隊の事もあって忙しいとは思うのだが、まずは俺の話を聞いてくれ」
「……はぁ、分かったわ」
彼女は、諦めた様に軽くため息をして肩を落とした。どうやら了承してくれた様だ。集められた人数は五人。偵察隊とは別の対魔獣戦闘に特化した調査団の精鋭達だ。この五人と団長のドールを含めた六人が中心部へ突入する。取り敢えず右から順に紹介しよう。
まず、全身フルプレートの鎧を着込んでいるのが、重戦士ゴーヴァン。身長はドールと同じくらいで2m程。今回雇われた傭兵の一人だ。背中には大盾と大剣を装備している。顔は……常に兜を被っている為、分からない。実際長く一緒に傭兵をしている者も顔を見たことがないらしい。ちなみに、常に兜を被っている理由についても誰にも話さない為わからない。その上、無口である。少し不気味だが、まあ本人にも何かしらの事情があるのだろう。腕は確かで、強力な魔獣の討伐に於いて多大なる功績を残している。その実績もあり、巷では「歩く要塞」だの「歩く城」だのと言われている。
次に、プレートメイルを装備し、マントには王国の紋章。腰には長めのロングソード挿している。騎士、オルウェン・リオタムス。身長は175cm程で髪は王国で一般的な金髪。リオタムス伯爵家の三男。容姿が優れ、剣の腕に特出した才能を持つ。三男故家を継ぐことができないので幼少より騎士になる事を目指していたのだという。そういえば、前話した時に王国に婚約者がいて「この任務を終えたら結婚するんだ」と言っていた。何と無く嫌な予感がするので、杞憂であってほしいと思う。
そして次に、老魔法使いポリロド・ロドリゲス。灰色のローブを纏い、手に大きな杖を持っている。髪はもう薄くなり、代わりに長く白い髭が伸びている。こう見えても、元は宮廷魔導士で爵位はドールと同じ男爵である。宮廷魔導士を辞めた後は、冒険者になり多大な功績を残している。攻撃魔法から、回復魔法まで使えるらしい。
次に、レンジャーのヘリワード。職業は冒険者だ。ランクはBだが、近々ランクAへ上がるだろうとの事。身長は、オルウェンと同じく175cm程。髪は茶色。レザーアーマーを装備していて、腰に短剣と背に弓を背負っている。弓の腕と索敵能力が高い。戦闘時メインは弓で戦うそうだが、状況に応じて短剣や所持している爆弾などの道具も使うそうだ。腕利きのレンジャーとして、冒険者の中では結構の有名人らしい。
そして最後に、アサシンのスクリティー。身長は140cm程。職業は冒険者。ランクはB。自強化の魔法と隠密の魔法を使う、二刀短剣使いだ。冒険者としても有名だそうだが、彼女は暗殺者としても有名で、依頼があった際には暗殺なども行なっている。その事が分かっていて、なぜ罰せられ無いのかは言うまでもないだろう。
「スクリティー殿には言ったが、まずは俺の呼びかけに応じて集まってくれてありがとう」
「いえいえ、団長の命に従うのは当たり前のことです」
「まあ、同じ魔獣ばっか狩るのも一週間ずっとじゃ飽きて来てましたから」
「……」
「そうか。お前らをここに集めたのは……と言うか、面々を見ればすぐにわかると思うが、近日中に中心部へ突入する事を決定したからだ」
一瞬皆顔を顰めたが、すぐにそれは解けた。
「なぜ今なのか、一応理由を聞いても?」
質問をして来たのは、騎士オルウェンだ。ここまで、当初の予定とは大きく異なる方法で動いている為故の質問だろう。当初の予定では、次のキャンプからの突入する予定だった。それに、強力な魔獣が付近に生息している可能性もある。その為、やはり少し疑問なのだろう。
「ああ。オースルにも言ったが、理由は二つある。まず一つは、この一週間偵察隊を組み、ずっと偵察を行わせていたが捜査が難航していて、このままでは一向に事が進まらないと思ったからだ。それに、俺の推測ではぶっちゃけ奴はもう中心部へ戻っていると考えている。中心部に行ったのならば、今我々が不在になっても残していく団がある程度は安全だと思う。強力な魔獣が居ないのであればもうこんな所で俺達が蹲っている理由は無い。そして二つ目は、食糧難が進行している為だ。森の外に、数十名待機させていても、人数が人数だ。もうすぐ食料が厳しい。何とか案はあるが、所詮こちらも付け焼き刃だからな。っとまあ、この二つの理由から、そろそろ重い腰を上げ我々も突入する頃合いだろう」
「なるほど……食糧難。分かりました」
「他に質問はあるか?」
「いえ、ありません」
他の奴らは……
「無いです」
「……」
「無いわ。ああでも、いつ突入するの?」
「ああその件だが、先程話した食糧難の関係もあって、できるだけ早いうちに出発したい。その為、今急ピッチで進めている準備が終わり次第、その次の朝にでも出発したいと考えている。いつ出発してもいいように、各自でも準備をしておいてくれ」
「了解」
「それと戦闘時の陣形、古代樹までのルートは予定通りだ」
「もう一度聞くが、他に何か聞きたい事は?」
「……」
各個人の方を向き一応確認を取る。返答は……やはり無いようだ。
「よし。それでは、解散」
ーーその数日後キャンプ出口
突入メンバーの面々が出口に立っている。
「お前達、準備は良いか!」
「「おう!」」
「「「よし、それでは出陣だ!!」」」
こうして、ドール含める六人は、古代樹に実ると言われている賢者の果実を目指し、中心部へと歩みを始めた。




