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第四章 3(中) 「アルナイト、ステラルナ」

 クルルエリが目を開いたとき、アルナイトが横になって動いてないのを認めた。

 そして、自分が右足を掴まれて屋根に叩きつけられたことを思い出す。

「ほほほ、気を失って不覚を取りましたけれど、私のほうが先に目覚めましたわ」

 勝利を掴んだような顔でクルルエリは誇らしげに言う。

 アルナイトの妨害からようやく抜けられることを確信し、もう一度飛翔しようとするも、彼女はある重大事に気づく。

「古剣コピス……」

 クルルエリが持っていた剣が見あたらない。よもや、どこかに落としたのだろうか。

「どこに落としてしまったのかしら」

 必死に探すクルルエリ、屋根から下のほうを覗いて見ても、穴が開くほど屋根を見ても、古剣コピスが見つからない。

 あれがなければ、異空間への穴を開けられない。

「どこに、どこにいってしまったのです?」

「見つかるはずないぜ、クルルエリのお嬢様」

 屋根の上で、クルルエリがその声にびくっと跳ね上がる。アルナイトが起き出したからだ。

「どうしてですの?」

「なぜなら、一足先に目覚めたのがこの俺だからだ」

 謀られた。クルルエリは苦渋の面を浮かべ、歯ぎしりをする。

「どこに剣を隠したんですの?」

「それを俺が教えたところでどうにもならないぞ」

「いいですわ、まだ探しますわ」

 そうして必死になるクルルエリ。

「いったいどこに隠したんですの、本当にアルは鬼ですわね」

「だから、言ってるだろ。俺が教えたところでどうにもならないって。この意味を汲み取ってないのか?」

 不思議そうな顔をして、クルルエリがアルナイトに顔を向ける。

「無駄になるどころか、お前は怒りに満ちるだろうけど、敢えて隠し場所を教えてやろう」

「教えなさい」

「異次元に捨てた」

 沈黙の空気が流れる。クルルエリは「え?」と答え、何を言っているのだと問いかけでもしそうな相貌を見せた。

「古剣コピスは異次元へと続く穴を開ける武器だろ? お前から奪い取って、振るったら、小さな虫食い穴ができたんでな」

「まさか……」

「その小さな穴に放り込んだ、もう探しても無駄だ、穴はしばらくして消えたんだからな」

 クルルエリの歯ぎしりがさらに響いた瞬間だった。まるで獣が歯を剥き出しにしている印象そのもので。




 ひとしきり悪霊を斬り終えたステラルナは、息を整えながら次の敵からの襲撃に備えていたが、次に出てくるはずの魍魎のたぐいが全然現れないことを不審に思っていた。

「打ち止めかな?」

 その目でステラルナはこの虫食い穴の奥行きを覗き込んでみる。

「……ままじゃ……埒があかん……」

 何やら細々とした話し声が奥から呟くように聞こえてくる。

 作戦でも練っているのだろうか、彼女は穴の中に首をつっこむ。

 暗澹とした黒い霧が煙るのが見える。このいまの沈黙と寂寞の原因はいったい何なのか。

 しばらくこの暗闇を見ながら、待ちながら事態を進んで確認しようとする。

 ステラルナの目の前に小さな二つの煌めきが現れた。

 それを認めた後で、風の強い唸りが聞こえ、彼女はつっこんでいた首を反射的に仰け反らせ、素早く後ずさりする。

 数秒して轟きとともに、穴から大きな魔物が顔を出した。

「こ、こんにちは……」

 あっけにとられてステラルナは魔物に対して間の抜けた挨拶をする。

 相手もご挨拶とばかりに、鼓膜が破れそうなほどの咆哮を彼女にお返しする。

 背筋がひきつって動けなくなりそうになるが、そんなことでは勇者として面目が立たないと思い、きゅっと唇を引き結ぶ。

 魔物の動向を見張りながら、魔物の攻撃に備える。

 だが、魔物は顔を見せたまま、動くことをしない。

 聖剣を構えながら、緊張感を維持したまま、顔を堅くするステラルナ。

 しばらくして、彼女はぷっと噴き出した。

「こいつ、顔がつかえて困ってるんだ」

 そのことに気づいた彼女は、調子づいてこの魔物を小馬鹿にするように、偉そうに脇腹に手をあてて「えっへん」と体勢を作る。

 しかし、その態度がこの魔物に伝わったか、顔を思い切り歪めて、ステラルナにぐおおおっと叫ぶ。

 さきほど聞こえてきた声は、この魔物を攻め込ませるための話し合いだったようだ。

「しかし、本当にバカだな」

 これでもう悪霊の出てくる口はこの魔物によって塞がれた。

「ここで、こいつを倒せば……」

 このでかいつらで穴は塞がったままになる。よって、ここで動けないままのこいつを倒せば、悪霊が流入する問題は解消する。

「でやぁっ!」

 魔物の平たい口先を聖剣で切断するよう斬る。まるで料理をするかのごとく。

 人間の血色とは違う、どす黒すぎる血が噴出する。

 明らかな苦悶の表情と声で魔物は反応する。

 肉塊がごろんと落ちる。

「どうだ!」

 続けざまにステラルナは刺し傷を多数つける。

 最後には魔物は死に至らないまでもその場で気を失い、これで動けなくなったことは確かとした。

「任務終了、ボクにかかればこんなもんさ、はっはっは」

 だが、そこで白い霧が立ちこめてきた。異様な臭気が噴出する音を立てて。

 何が起こったのか、その音の元を辿ると、霧を噴いているのは先ほどこの魔物から斬り落とした肉塊だった。

 そして、次に漠然と広がった白い霧が意思を持ったかのように、まとまりだし、そして気づけば、先ほどこの穴から漏れ出していた悪霊の形になった。

「そこに隠れていたの!?」

 悪霊を聖剣で斬ろうとするも、巧妙に避けられ、悪霊が城郭から離れ、ステラルナの手の届かないところに移ってしまう。

「しまった!」

 悪霊を追いかけなくては。

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