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第一章 4(後) 「クルルエリの力」

「易々と聞くと思うか、でも聞くだけなら聞いてやろう」

「実は私、屋敷に保管してあった武器のコレクションのひとつを盗まれておりますの」

「ほう、それは大変だな」

 わざとらしくアルナイトは驚いてみせる。

「盗まれたのは、剣の祖先となったとされる古剣ですの」

「古剣とはどういうものだ?」

「見てもらうのが一番ですわ、こういう剣ですの」

 そう言ってクルルエリはひとつの剣を腹部から取り出した。

「おお、これは凄い剣だ。斧と剣の中間と言えそうな剣……って、いままさに持ってるじゃないか!」

「勘違いしないでくださいませ、私はこれを持ってるのではありませんの。これをいまここで作ったんですの」

「どういうことだ?」

「先ほど『私の力』と申し上げましたが、私はありとあらゆる武器を記憶していますの。そして私の力はその形状を記憶した武器を作り上げることですの」

「じゃあ、いま作り出したこの古剣で十分じゃねえか、何も取り返さなくても」

「私が盗まれた古剣コピスのオリジナルは、不可思議な魔法がかけられている特別なものなのですわ。私は形状を記憶できても、魔法がどのように構成されているかは見破れませんの。だから、この古剣コピスも魔法のたぐいは一切かかっておりませんわ」

「うん……そうか」

「そして、作り出した武器は私が手を触れて強く念じることですぐに消えてしまいますわ」

 言いながら、目を閉じて神経を研ぎ澄ました顔をして古剣コピスに手を触れると、光を放ってガラスのように砕け、霧散して跡形もなく消滅してしまった。

「その男から古剣コピスを取り返して欲しいんですの」

「断る、そういうことは自分でやるもんだ」

「彼を捕まえたらお礼はしますわ、金一封なんて吝嗇りんしょくな待遇ではなく、でしたら家を一棟あなたのために建ててあげてもよろしくてよ」

「お断りだ、追われる身に家なんか建ててもらったら、かえって目立ってしまい捕まるのは目に見えるだろ」

 それを聞いて膨れっ面になるクルルエリ、まるで子供みたいな風情を見せる。

「とりあえず先を急ぐぞ、クルル」

「その卑劣ともいえる男の名は、ジン」

 それを聞いて、アルナイトは進めかけていた足をいったん止めた。

「ジン?」

 踵を返して、後ろで立ち止まっていたクルルエリのほうへと戻る。

「どうかしましたの?」

「その男の全称を教えてくれ」

「ジン・ディストフィルドですわ」

 ジン・ディストフィルド。

 名前を聞いて、アルナイトは目が切れるように開いた。

「引き受けた」

「本当ですか、ありがとうございますわ。でもどうして突然お引き受けになって?」

「俺とクルルの目的は一致してるんだ、もっとも俺の場合、ジンという名前についてだけだがな」

 そう言いながら、歩みを進めるアルナイト。

「置いてくぞ、人質」

「待ってくださいませ誘拐犯さま、私をきちんとさらっていってくださいませ」

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