プロローグ(一) 「彼世界ガイア」
ところどころ派手に砕けていて、無駄に高く聳える直方体の塔の数々。
ちょうどいま軋む音を立てて、ガラガラと崩壊して横に倒れる。
その横際の塔も倒れ、十はくだらない塔がいまガラガラと土埃土煙をあげて、ドミノ倒しとなった。
一大事の出来事だが、それを騒ぐ人など一人もいない。否、人間自体がすでに一人もいないのだ。
なぜなら、彼ら彼女らの骸すらもすでにないのだから。死体は腐敗して風化し、長い時を経て骨も完全に砕け、果ては風が吹き去ることで人間がいた証拠をすべて霧散し、隠滅してしまった。
文明の発達した痕跡が窺えるガイアと呼ばれる世界。
彼世界ガイアの現況は……否、もう現況として報告するのも心苦しいほど、その世界はすでに壊滅してしまった。
鍛冶の神として名高いヘパイストスは嘆いた。「武器は諸刃の剣だったか」と。
しかし、その言葉は間違っている。なぜなら、彼ら人間の作り出した武器は諸刃の剣以上に厄介なものだったことを知らしめたからだ。
武器というものは下手に使えば自分も滅ぼす、無思慮に使えば周囲までも巻き込む。この世界の民は武器を使って相手へも自分へもそして他人へも災厄をまき散らしたのだ。
結果この世界のすべてを滅ぼしガイアは人間の終末を迎え、暗黒時代へと突入した。
この痛ましい景色をどう思う?
「アンティクトン」の世界にとってみれば、世界中の火薬爆薬をすべてここで爆発させたと嘘の説明をしなければ納得がいかないほどだ。
爆心地はこの世界「ガイア」には数えられないほどあるというのに。