あおいかみ
「あ……っ……」
喘いでいる。
その声はとても澄んでいて。
聴く人をして引き付ける音色は、艶っぽさと可愛らしさを兼ね備えているようであった。
月光に照らされた青くて長い髪は、黒い空間に浮かぶ水面みたいに映えていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……、下手なのね、貴方……」
青髪の少女は誰もいないトコロで、一人呟いた。
そこには、彼女と私以外には誰もいない。
なのに、彼女は誰かと会話をしている心地で、更に口を動かしていた。
「そんなんじゃ……、私を……楽しませて――っ」
不意に、青い髪が空に舞った。
彼女の躯体は上下に揺らされ、それによって青い髪が乱されていたのだ。
「く……っ!? っ……はぁはぁっ!! ……っはぁっ――!!」
彼女の喘ぎ声が激しさを増す。その声は静寂の闇を切り裂くがごとく、強くなっていった。
「あぁっ……!! や……ん……っ」
「――っはぁっ……!! あぁあぁっ! あああぁぁぁぁぁああっ!!!」
彼女は、うつ伏せで気を失っていた。
服も乱れておらず、とても柔らかな笑顔を称えながら眠っていた。
さっきまでの妖艶な喘ぎ声は夢なのではないかと思うくらい、幸せな寝顔だった。
私は、その少女に近づいてみた。
先程の仕草が、とても艶っぽく愛らしいものであったから。
そんな彼女を、私はもう一度見たいと思ったから……。
青い髪の少女の肩に手を触れるやいなや。
その青い髪が私の体に巻きついてきた。
「……っぐっ!!??」
「……ウフ、ウフフフフフフフフフフフフ」
青い髪の少女が、こちらを向いた。
それは、有り得ない方法で。
その体はうつ伏せになっているのに、頭だけが私の方へ向いているのだ。
「かわいい女の人、引っかかってくれたわね。ウフフフフフフフフフフ」
青い髪が、私のあらゆる所に絡み付いてくる。
「が……っ、うごけ……ない……っ!?」
「それはそうだもの。私の髪には、魔力が備わっているんだもの、ウフフフフフフフフフフフフ」
「た……、たすけて……」
「ダーメ。私のプライベートタイムを覗き見しちゃった貴女には、相応のお仕置きをしなきゃいけないわ――っ!!」
髪は、一層私の体を締め付けてくる。
やがて、髪が股に絡みついてきた。
「私は【淫】の魔力を持つモノ。男でも女でもイケるんだけど、やっぱり女のみだら身は最高よね!」
「や……っ! やめて……」
「ねぇ、私が最初に喘いでいた声、覚えているでしょう?
あれは、今まで一番ヨかった女の声なの。私、それを自分で再生してはオカズにしていたのよ」
この少女……、いや。
この魔女は、一体何を言っているんだろう。
「貴女は一体、どんな声を聞かせてくれるのかしらねぇ。ウフフフフフフフフフフフフフフフフフ!!!」
これから先の記憶はない。
気が付いたら、とある宿屋のベッドに寝かされていた。
しかし、アレだけはしっかりと脳裏に刻み付けられている。
『貴女の、良かったわよ。喘ぎも躯体も、その中身も……ね。ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフ』