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「名前に負けるとは聞いたことがあるが、その逆もまた然り・・・。でも、人は生きていく中で名前に合った人間になるんだと自分に言い聞かせてしまうわ。どちらかと言うと、自身の願望に近いの。本当にできたら、羨ましいんだけどね・・・」
とてもきれいな女性がそう話すと、必ずゾンビの映像が出てくる。きっと良くない結果だろうから、そういう時は目を覚ますようにしている。
いつも目が覚める前に、ガクンっと体の中を衝撃が走る。
夏休みに両親の運転する車で事故に遭った時も、ガクンっと何かで目が覚めた。後部座席で寝ていたはずなのに、世界が横たわる中で自分だけが重力で立っていた。のどにフェルトを直接こすりつけられるような新車の匂い、締めつけるつるつるのシートベルト、母のねじ曲がった首すじとほどけた髪からトリートメントの匂いがした。母はおっちょこちょいで、洗面所で慌てて用意するからトリートメントが襟もとについてしまうんだっけ。気が付くと横たわる車の中で、その匂いを確かめていた。
父はというと、吹雪く外で寝ていた。後で救急車の人が来てくれたけど、白いベットに載せるのに苦労していたからやっぱり父も接着剤でくっつけられていたに違いない。
それ以来、車の匂いが嫌いで車には乗ってない。