6.冒険のススメと各説明
南東の方角にある。集会所へと足を運んでいた。
「ねぇ?ノワールそろそろ頭から降りてくれない?」
そろそろ触ったり撫でたりしたいけどなぁ…
ノワールの意志表示は、爪を立てて拒否の一点張りだ。痛いって。
そうだ、こうだしていると目的地に到着した。
(ティマー登録は何処でするのかなぁ~?)
ここは色々な建物が沢山ある。悩んでいると見知った顔の人物がいた。
イヴさんだ。目が合う。
「ユウヤさん~」
彼女は、こちらに来た。後ろを追従している白い存在はロザリーだ。
「テイム終わったんですね?もうすっかり仲良しさんですね?」
僕と頭上のノワールを見て、クスクスと笑いながら言った。
「触らせていただいていいですか?」
そんなことを言われ、返答に困っていると、頭から重さがなくなる。
ノワールが頭から降りたのだ。そしてイヴさんの所へ…通り過ぎ
ロザリーの元へじゃれ始める黒と白の獣。
「グゥ」「クーン」と聞こえる。二匹の鳴き声。
何やら置いていかれる僕たち…苦笑しながら僕は質問した
「すいませんイヴさん。ティマーズ登録って何処でできますか?」
「あそこでできますよ!」
間入れず、一際大きな黒い建物を指さししながら言った。
「ありがとうございます。所でロザリーって何て動物ですか?」
「コメット・ウルフって動物ですよ。ユウヤさんのペットの名前は?」
意味は、彗星の狼ね。だから星が尾を引くような尻尾があったのか。
「ライガーのノワールって名前です」
「すごく可愛い子ですよね。触りたいです!」
ロザリーとじゃれているノワールを見ながらイヴさんが呟く。
「僕も触わりたいな~ねぇノワール?」
僕の呼び声を無視してじゃれ続ける二匹。
するとロザリーがじゃれるのを止め、イヴさんの足元に移動した。
ノワールも一緒にだ。
ノワールはイヴさんに自らじゃれつく。嬉しそうに彼女は、撫で始めた。
「わぁ~この子ロザリーとは、また違った触り心地で気持ちいいです~」
楽しそうにしているイヴさんとノワール。蚊帳の外にいる僕に気を遣ったのか、ロザリーが僕の方に寄ってきた。撫でようとする僕の手が伸びる。
触れる瞬間…黒い物体が割って入って来た。この影はノワールだ。
初めて触れる毛並につい手が動く。触り心地の良さとしっとりとした肌触りに
驚いた。ずっと撫でていたくなる。しかしすぐ腕を伝って、頭上に乗る。
「やっぱり仲いいですね」
僕らを見て彼女は再びそう言った。
「イヴ!ソロソロイクヨー!」
すこし離れた場所から彼女の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「すいません、友達とクエストに行くので失礼しますね」
「いいえ。僕も頑張って追いつきますね!」
「はい。頑張って下さいね」
そんなやり取りのあと僕たちは、正反対の方向に別れた。
黒い建物に僕たちは入った。
受付に進む。そこには、パイプ煙草を吸ったお爺さんがいた。
「よく来たの~ティマー登録をしにきたのじゃな?」
その問いに僕は頷く。
「はい。そうです。何をすればよろしいですか?」
一服して、白い煙を吐き出し、次の言葉を紡ぐ。
「そんなにたいして手間は掛からんよ…主達には、まずこの紙に手印をして貰おうか」
そう言われ、一枚の白い紙と正方形の赤い液体の入った物がテーブルに置かれた。
紙の前に移動する。お爺さんは頷く。僕は、右手を赤い液体に
浸そうとする…ノワールが腕を伝い先に浸した。続いて僕も浸した。
紙に手印が完了すると、控えていた女性が奥の部屋に
紙を持っていく。紙と引き換えに布が置かれ、それで僕たち液体をぬぐった。
それから少しすると奥から、女性が手の平サイズのカードと
薄い本を持ってきてテーブルに置いた。
「これがティマーIDじゃ……まぁ身分証明みたいなもんじゃ」
「それと追加メニューファイルじゃ……これで主のプレイヤーとしての制限が全て解除され、様々な動物の基本情報が知れる」
「これでOrdeal Tame Onlineのチュートリアルを終わる!何か質問はあるかの?」
聞きたいことは沢山ある……けれど、自分で考えなければと同時思った。
「いえ、特に問題ありません。ありがとうございました」
「うむ、なら行くのじゃ……進んだ先にきっと答えがあるぞ」
答えを探す…そうそれが冒険!
決意を胸に僕は行く、相棒の存在を頭上に感じて。
(さて、まずどうしよう)
と入口から少し離れた壁を背もたれにして立ち。とりあえず、メニューを開いた。
<メールが1通届いています>
メールが来ている。差出人はイオリ…誰だ?
少し嫌な予感がするが開いてみる。
【やぁ…さき程は失礼してしまったね。僕の運命の人ユウヤ』
最初の一行を読むと予感が的中したのを痛感した。
続きの文を読むのを躊躇ったが一応読む。
【急に迫りすぎ、さぞビックリさせてしまったと少し反省をしているよ】
【僕の見立てでは君はきっとゲームやMMOなどは普段あまりしないタイプの人だろうから、きっとこのメールを見ている時は何をすればいいのかと頭を悩ませているだろうから少し助言をさせてもらうよ】
【この世界は基本的に、グランドクエスト方式という全てのプレイヤーの行動が物語に直結しているから、特に何もしなくても他のプレイヤーが頑張れば物語は進んでいくことになっている』
【けど何もせずに進んでいく物語をただ眺めるのは傍観者だ。僕たちは主役としてこの世界に結末を出さなければならないと僕は考える】
【主役として物語進めるためには数多く存在するクエストをクリアしていくことで進行度を上昇させればいい。けど進行度の上昇は他の人が初クリアしたクエストでは重複しないから気をつけてね】
【クエスト掲示板は冒険者ギルドに置いてあるよ、ティマー登録をした横の建物がギルドだよ。けど掲示板には載っていないクエストも存在するから色んな事をしてみるといいよ】
【また、わからないことがあれば連絡してくれればいいよ……フレンド申請をしておいたから良かったら受理してくれると嬉しいな】
意外に丁寧な文だ。そんなに変な人ではないのかもしれない。
〈イオリからのフレンド申請があります〉
受理しますか?YES/NOの選択肢が出た。YESを選ぶ。
〈イオリがフレンドになりました〉
さて進んでいく先が見え始めた。
先ほどまで気づかなかったが、街が活気づいている。
街並みには、様々な人々が行き交い、生活をしていた。
僕はこの世界の住人になったと認識した。
するとノワールが頭から飛び降りて、駆けだした。
人混みに紛れ姿が見えなくなる。追いかけなければという焦りに駆られる。
しかしそれは杞憂だった。ノワールが駆けた方向に薄っすらと白い線が僕と繋がっている。
線は人混みの中、途切れることなく何処かに伸びていた。
人混みを掻き分け、線を辿っていくと良い匂いがする。
露店があって、亀という生物が甲羅から火をだしコンロの代わりをしていた。
その前にノワールがいた。物欲しそうな目で火に炙られている食べ物を見ていた。
「あんちゃんがこのライガーの相方かい?」
食べ物を焼いている亭主がノワールを見ながら訪ねてくる。
「はい」と肯定の意を込め頷き、近づいた。
「こいつは、スロースラビットのこんがり肉だ……買うか?いまなら。おまけするぜ!」
ノワールも食べたそうだし、僕も少し小腹が空いた。買おうかな?
「おいくらですか?」
「一つ40G5つで150Gだよ」
値段を聞いて、財布の中身と相談した。現在の所持金は3000G。
「ノワールどれくらい食べる?」
すると亀に立て掛けた看板に10個250Gと書いている部分に前脚を置いた。
「こんなに食べるの?」
疑問がつい口に出てしまった。抗議するかのようにノワールは唸った。
肩を落として、この
「じゃあ、すいません10個頂けますか?」
「はい毎度!おまけに2つ付けてやるよ‼」
計12個のこんがり焼けた肉を二袋に分けて貰い、その場を後にした。
少し離れた場所に腰を落とし、まんじゅう程のサイズの肉に齧りついた。
旨い、濃厚な肉汁が口に広がった。隣の様子を覗くと器用に口に咥えて肉をノワールが頬張っていた。それを尻目に捉えて少し息を継ぎながら、メインメニューを開き追加された情報に目を通す。メニューは全部で8タブあった。
マップ、ステータス、ID、イベントリ、ウェポン、スキル、コミュニティ、システム、ログアウト。
それぞれの説明をしていこう。
MAP:現在のいる場所のMAPに表示される。(未踏発エリアのMAPは表示されない)
ステータス:ユウヤのレベルや状態、装備などの確認ができる。
ステータス2:ノワールのレベルや状態、装備などを確認できる。
ID:ユウヤとノワールのTP、TLが表示される。
イベントリ:入手したアイテム。装備などGが全て収納されている場所。
スキル:所持スキルやアーツなどの詳細が確認でき、スキル熟練度などで得た強化オプションなどが確認できる。
コミュニティ:フレンド、パーティ、メール、チャット、スクショ、掲示板などの交流機能がある。
システム:様々な設定が行える。それにより、ゲーム内の環境設定、プレイの仕方が変わる多種多能な機能などがある。
ログアウト:ゲームから一時離脱し現実に帰還する機能。
それなりに時間が過ぎたのだろう。ノワールが食べた空袋を潰していた。
物足りない様子だったので、残りの肉をあげた。嬉しそうに尻尾を振って腹を満たし始めたノワールを眺めながら、僕はふと疑問を抱いた。
ライガーとは、どんな動物だったのだろうか。すると……ウィンドウが現れた。
〈ライガー〉
百獣の王ライオンと呼ばれた動物と森林の支配者タイガーとの混血種の生物。
医学上はネコ科ライガーと呼ばれる。しかし、この個体のライガーは太古に存在したバーバリライオンとサーベルタイガーの混種の存在。
そんな、特別な遺伝子情報を持って生まれたため、黒化個体現象を引き起こし、本来の毛色とは異なる漆黒の毛を持つ純黒種。
これから共に歩んで行く、ノワールの事を知って旅立つ準備を整えた……もとい、腹ごしらえをすました僕らは、冒険者ギルドへ向かった。