31.集合
補給活動という名のパシリを何度も繰り返した。
それなりに時間が過ぎて、小腹が空き始めて休息を取って休んでいると、
やがて「ズッシン」「ズッシン」と地鳴りが聞こえて始めて来た。
とうとう開幕の火蓋が切られようとしていた。
それを合図に暫く経つと「ゾロゾロ」とプレイヤー達がフィールドに集まり始めた。
「やぁ、お疲れユウヤ」
「お疲れ様です、ユウヤさん」
「乙!乙!ユウヤさん!」
「……乙」
「よおっ!ユウヤ、お疲れさん!」
沢山のプレイヤーが一同に会している中、色んな方向から声が掛けられた。
首を忙しなく動かし、声が聞こえた方向を見回した。三方向からだ。
声が聞こえたタイミングはほぼ同時。でも、あえて順番を付けるなら、カズヤ、イヴ、ユリ、カオル、アスラさんの順序。
「あっ、どうも皆さんお疲れ様です」
本当なら、一人一人に挨拶を返したい所だが、纏めて返礼した。
このゲームで知り合った、数少ない人達が一同にこの場に揃った。
「あれ?アスラの親父さん、ユウヤと知り合いだったのか?」
「まぁな、最初の頃、お前に作った剣あっただろう?
あれの芯材に【リザードマンの槍】を使ったって言うのは話しただろう?
あれ持ってきたのはユウヤだよ……まぁそれ以来の付き合いになるな」
「へぇ~そうだったのか、あれをユウヤがね……」
カズヤとアスラさんは知り合いだった様で、僕の事を肴に話に華を咲かせ始めた。
自分の知人同士が知人というのは、世の中が狭い事を実感する。
その一方で、女の子三人組は、寄り添い合う様に会話をしていた。
「わぁーわぁー見てみて、生“キング”と“豪放の託匠”のアスラさんだよ~ユウヤさんって意外に顔が広いだね」
「こら、ユリ……人をお酒を注文するみたいな言い方をしない。
でも、確かにユウヤさんが有名な人と交友されている印象はありませんよね……」
「同意……けど、ユウヤさんの様に優しい人には、自然と人が集まると思う」
少しの間、蚊帳の外に放り出された僕は、その間ノワールに相手をして貰った。
「で、ユウヤはどうやって一日目から、〈リザードマン〉を倒したの?」
ノワールに遊んでもらっていると、急に話の矛先がカズヤから僕に向けられた。
その内容に興味を持った一同は、一斉にこちらに顔を向けた。
「えっ、えーと……あの時は無我夢中というか、必死に戦ってLAが発動して、そのおかげで倒せたとしか言いようがありません」
急な質問に過去の記憶を掘り起こして一同の関心が向けられる最中、ありのままに体験した事をノワールと戯れながら答えた。
「へぇ~ユウヤさんって、そんな早い時からLAが使えたんだ」
「わぁ~凄いですね~」
「LAは……ペットとの信頼の証」
少女達は一様に賛美の言葉を僕に送ってくれた。
「そんな事は無いですよ……あの時LAを使えたのは、ノワールのおかげです」
そうだ。最初にLAを発動してから、再び使おうと試みたが使えなかった。
結局、僕がLAを使った回数は、初めの〈リザードマン〉戦の時と、それから一週間ほど経った頃に二回、それと〈ユニコーン〉との戦いで計三回。
「LAって結局の所、使用条件がよく解りませんよね?」
何となく使えるという感覚はある。けどそれは常時ではない。
「「「「「「………」」」」」」
僕らの間に沈黙という、静粛の一時が流れた。
「俺の主観でも構わないなら、少し喋らせて貰っても良いか?」
カズヤが静粛を切り裂く言葉を投じた。僕らはその問いに黙って頷いた。
「じゃあ少しだけ……俺はある程度、自由にLAを使える」
彼のその発言にみんなは驚きの表情を浮かべた。
しかし僕は「やっぱり」と思った。
それは、つい先日〈アースフォート・アルケロン〉の偵察で、彼があっさりとLAを使っていたのを知っていたからだ。
「それでだ。LAを使う時に一つの想いだけを浮かべる」
「想いのイメージは……果てない、焦がれるような烈火の焔」
彼は気恥ずかしそうな表情を浮かべて、自分の胸中を吐露した。
「何が言いたいかって言うと、LAはペットとの繋がりをキーにして発動する」
彼の言いたい事を何となく理解して、彼のペットを観た。
〈カーディナル・ドレットノート・ドラゴン〉のノヴァ。
超新星爆発という意味を持つ名だ。それは世界を創世の焔。
名は体を表していた。宇宙に無限に広がる爆炎の焔は、焦がれるような激しい熱い想いを連想させた。
その想いの憧憬を形作ったのが、彼のLA:【紅閃迅雷】だ。
そこまで考えると一つの疑問が生まれた。自らのLAの事だ。
何故、僕の【虎王比翼】は、【虎王連翼】へと形を変えた?
この変化は、僕の胸中の想いが、今までとは違う想いが生まれたという意味なのか?
その理由をもう一度、記憶の底に沈んだ事を掘り起こした。
それと同時に考えた。僕とノワールを繋ぐ想いの形とは何なのか?
周りの声が聞こえなくなるくらい、考えに耽った。
◇◇◇◆◆◆◇◇◇
結構、気づかない間に時間が流れた。
「ユ・ウ・ヤ」
気色の悪い撫で声が聞こえると同時に意識を取り戻す。
いつの間にか、イオリが僕にあすなろ抱きをして、囁かれた声が耳に響く。
ビックリした僕は、勢いよく振り返って、イオリの拘束を解いた。
「そういう事はやめてって前に言ったよね!」
存外、あっさりと解けた拘束を振りほどきながら言った。
「やー、御免、ゴメン。けどユウヤは……補給部隊だったよね?補給部隊は、確か第一部隊も兼任していたはずだったけど、ユウヤは行かなくても良いの?」
彼は、名残惜しそうな表情を浮かべながら、思った以上に純粋な疑問を投げ掛けて来た。
辺りを見回すと、バツの悪そうな表情を浮かべるイオリ以外の四人の知人。
(四人?……カズヤ、イヴ、カオル、アスラさん……)
「あれ?ユリは?……もしかしてもう戦いが始まりそう?」
同じく補給部隊の一員として動いていたユリの姿が無かった。
その質問を肯定する様に、何とも言えない表情で知人たちは頷く事で返した。
「っつ⁉すいません僕も行ってきます」
慌てふためきながら、ノワールの背に跨って前線に向かって駆けた。
「「「「「行ってらっしゃい」」」」」と遅れて背後から声が聞こえた。
「ユウヤって結構、天然だよね」
「そうだな。でも今のは、やりすぎだぞ」
「やー、役得だったよ」
「でも、ああいう所、わたし好きですよ」
「……可愛いかも」
「生まれた性別間違えたよな」
残された者達は、それぞれの感想を呟いて、その場を後にした。




