27.選択肢
3日間、空いての更新になりました。申し訳ありません。
思わぬ存在と遭遇して、偵察から何とか無事“エピオン”に帰還した。
僕らは街に戻って、少し遅めの朝食を取る事となった。
食事をしている場所は“ベテルギウス”。
「「「「モグモグ……ゴックン」」」」
朝から濃厚な肉料理を食べることが出来るのは若さからなのか、迸る肉汁を口いっぱいに頬張りながら、ドンドン喉に通していく。四者四通りのリズムで、朝食を取っていった。
「さて、あいつの事を教えてくれるかな?」
「んー。とりあえず、あいつの名前は〈アースフォート・アルケロン〉」
「何十年かに一度目覚める巨獣らしい。それと好戦的なのは、防衛本能が強くて、攻撃してきたみたい」
システムメッセージが流れたログを確認しながら、淡々と呟く。
「そして目が覚めたら、南に南下してくる習性で、進路上に“エピオン”がある」
これは推測だったが、これまでの情報を纏めて、あの巨大亀は街に向かって来ると踏んで言った。
「…なるほど。じゃあ、あいつが“巨門の年”に活動する巨獣で、第一の試練のボスって考えればいいのか…」
聞いた内容に「うーん」と、どう攻略しようと頭を悩ませ唸るカズヤ。
「それに、〈アースフォート・アルケロン〉のHPバーが五本もあった」
頭を悩ませる彼に、追い打ちを掛ける様に僕は言った。
「……ッッ⁉マジか?」
彼の脳裏には途中まで勝利への道筋が描かれていたのか、予想以上に狼狽した振る舞いを見せた、彼の表情は険しかった。
「うん。マジだよ。それに防御力もかなり高い。ノヴァが最後に火焔を放ったでしょ?あれ全然ダメージが通ってなかったよ。あれってどれくらい本気だったの?」
畳み掛けるように問い返した。
「……通常時の三倍くらいの威力はあったはずだ」
視線を傾けてノヴァを彼は見た。小型化しているノヴァは、1mちょっとで三頭身ほどの大きさの姿になっていた。腹を大きく膨らませてテーブルに仰向けに寝そべる相棒のドラゴンの腹を撫でながら絞り出す様に彼は言った。
「「………」」
沈黙が僕らの間に流れる。
「お二人さん、おはよう。珍しい組み合わせだね」
第三者の声が僕らの間に割って入って来た。聞き覚えのある声だ。
声が聞こえた方向に僕らは顔を向けた。
「やぁ、どうも♪」
声の主はイオリだった。
彼は当たり前の様に僕が座っている席の横に腰を下ろした。
「で、何の話をしていたの?」
そして彼は、さも当然の様に話に加わって来た。彼を追い返すのも面倒だった僕らは、ざっと先ほど体験した出来事をざっくり説明した。
◇◇◇◆◆◆◇◇◇
「ふぅ~、なるほど。ボスがとうとう現れて、偶々遭遇した君たちは、偵察がてらボスにちょっかいを掛けて帰ってきた。けど持ち帰った情報を纏めると倒せそうにないから困っていたと……」
モーニングコーヒーを口ずさみ、情報を簡潔に纏めてイオリは言った。
「……今の話を聞いて僕が思ったことは3つ」
彼は、コーヒーカップテーブルに置き、その手で三本の指を立てた。
「まず一つ。ノヴァの攻撃がそれほど効かなかったのは、属性の相性が悪かったから」
「二つ。ただ単純にステータスが足りなかったから」
「最後に、そいつは倒す必要性がないということ」
三本の指を言葉に言い並べて、それぞれの指を折りながら言った。
(亀は確かに水属性の生物。それと名前にアースすなわち大地を示す言葉が入っている事から土属性であること。どちらにしても火属性のノヴァとは相性が良くない)
このゲームに置ける属性の優劣はこうだ。
火→氷→土→風→雷→水の基本4属性に二つ氷と電の二つを加えた六つだ。
それを踏まえた上でイオリの言うことは、理に適っていると思われる。
(二つ目。これが理由だったら僕たちは詰みだ。先ほどイオリに説明した過程でカズヤのレベルが判明した。28レベル。それが彼のレベルだった。その相棒であるノヴァの攻撃は、ノヴァがSSレートのペットである事から、全プレイヤー達の攻撃手段の中で、最高峰のはずだからだ)
「ボスなのに倒す必要性が無いって、どういうことだ?」
「一般的なゲームの尺度で話すなら、最初のボスを倒すのに必要なのは高くても20レベル。それを大きく上回るカズヤの攻撃が通用しないってことは倒せない事に繋がる。しかしその存在が僕らにとって、どうにかする必要性がある=倒すことに理由に繋がるわけじゃない」
カズヤの質問に答え、再びカップの中の飲み物を口にして、一息を入れた彼は「ニヤッ」とした笑みの表情を浮かべて更なる言葉を紡ぐ。
「つまりさ……倒せないその亀の進路を妨げて“エピオン”来させずに、南下させてあげる事が試練のクリア方法なのかも知れない」
(〈アースフォート・アルケロン〉はただ進んでいるだけで、周囲に危害を加えたいわけでは無いはずだ)
その事を〈アースフォート・アルケロン〉の説明の一文を思い出した。
あの亀は防衛本能が強い、それはつまり臆病さの裏返しなのかも知れない。
そう考えると、イオリの言った事が正しく思えた。
普段の行動の為、アレに観える彼の発言が的を射ていたと感じる。
「まぁ…取り敢えず、僕もその亀を観に行ってくるよ。
……けど、ただ間違いなく言える事は、たったひとつ。
僕らに残された決断の時間は、それほど多く残されていないってことだけさ」
そんな言葉を残して、彼はベテルギウスを後にした。




