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オーディール テイム・オンライン  作者: 結城 縫熊
1.冒険の始まり…
20/44

20.ドラゴン

 シトリンに鹿の集団を任せ別れた後、あれから何度か魔物に襲われている動物の集団をヴェルデが発見しては、守るため、保護するための戦いが続いた。

戦闘が行われるたびに、襲われていた動物をシトリンの元へ連れて行って、防壁の効果が切れるまで戦闘を繰り返した。


「ふぅー、結構疲れたねー」「疲れましたー」「疲れましたねー」「疲れた」

「グゥ」「ガゥ」「ピィー」

 皆それぞれの感想を抱き、一言ずつ言葉にして呟いた。

シトリンの元に最後に連れて行った動物は、結局50匹ぐらいいるだろう。

「少し保護し過ぎたかな?」

これだけの数を無事に街まで誘導出来るだろうか?

疑問が脳裏に浮かんで、そんな一声を口から零してしまった。

「大丈夫です」

一様に疑問に思っていた最中、横から確信に満ちた力強い声が聞こえた。

 イヴさんだ。彼女が何を根拠に言っているのかは、理解できなかったが不思議と安心感を与えてくれた。


「そうだね。イヴがそう言うなら違いないよ」

「イヴの言葉、不思議」

それを裏付ける様に、他の二人も同様に言った。

「そうですね。イヴさんが言うのなら間違いありませんね」

「もうユウヤさんまで、煽らないで下さい!私何かあっても責任は、取れませんからね!」

頬を膨らませて、そっぽを向きながら言った、彼女の姿はとても可愛らしかった。

そっぽ向かれた僕らは、一同に顔を見合わせて笑ってしまった。

「「「wwwww」」」

 何かが面白かった理由わけでは無かったが、スイッチが入ったかの様に不思議と笑いが込み上げて来た。

「何が可笑しいんですか!」

 笑っている僕らを見て、馬鹿にされていると思った、彼女は更にぷりぷりと頬を膨らます。それは火に油を注ぐ様な行為だった。


 愛らしさが増した彼女の顔を見た、僕らは更に笑った。

此処で酷かったのはユリさんだ。彼女は腹を抱えて、その場にうずくまり笑い焦げている。いつまでも笑い焦げる彼女の姿を見て、カオルさんと僕は笑いが収まったがそれでも彼女は笑い続けた。

 その為だろう、イヴさんの怒りの矛先がユリさんに向いた。

彼女は、なお笑い続けるユリさんを標的にして無言で杖を向けた。

〈アクア・ショット〉

バスケットボールサイズの水球がユリさんの顔に炸裂した。

そこでやっと自身の置かれている、状況に気が付いたのだろう。


 もうすでに怒りの表情を浮かべるイヴさんの顔を見ると、先ほどのまでの表情を一変させて顔を青ざめていく。時すでに遅し、後悔先に立たず、という言葉が今の彼女を表現するには最も適していた。

 それを尻目に捕らえながら、蚊帳の外に置かれた僕らは、大勢の動物達に食事と水を与え、我関与せずの姿勢を貫いた。



 ユリさんがイヴさんのご機嫌を宥め終わった後、僕らは保護した動物を何とか誘導しながら街へと、帰還する道中にある一同を目にした。

「……“王者キング”だ」

僕らの中の一人がそう呟いた。


“キング”このゲームOrdealオーディール Tameテイム Onlineオンライン

略してオテオンと呼ばれるゲームで、最強と呼ばれるプレイヤーの呼称だった。

なぜ彼が最強のプレイヤーと称されるには、とある理由があった。


 それは彼のペットが、ドラゴンであるという事に大きく起因する。

ドラゴン……それは空想上の生物。長い歴史の上で語り継がれていた存在。

 ある時は力の象徴、国のシンボル、神として崇拝の存在、又は災厄を振り散らす魔物として。

時代や場所が変わっても、憧れと畏怖の象徴的な存在を、現実の世界で産み落としたことにより、20年続いたペットブームは、終幕を迎える事が出来たのだと知られている。


 生物にランクや価値などを付ける事は、愚かな行為だと思う。

そんなことを思える人間の僕らが、再び生き物にランク付けをしてしまったのは、とても愚かだ。



 命はすべからず平等だという考えがある。

一つの命に一つの魂が入っていると考えると、一命=一魂が成り立つと考える事が出来る。そして、一寸の虫にも五分の魂という言葉がある。五分というのは、一割の半分の数字だ。では五分を20集め集合させると、一魂になるのだろうか?

 それは一命と言えるのだろうか?

少し哲学的な考えにふけってしまった。


 つまる所、何が言いたいかというと、どの様な生物の命でも一つの命である事に変わりない。よって本来なら生き物にランク付けなどを行うべきではないのだ。

 しかしプレイヤーの僕らは、この世界に来てまでもテイムしたペットにランクを付けてしまうという、愚行を犯してしまったことが残念な事で他ならない。


 そのせいでペット達にはランクが出来てしまった。

最高SSランクから最低のFランクまで存在していた。

ランクの付け方は、大きく分けて三種類ある。

 幻獣や空想上に存在していた、または希少価値の高い生物。

既存の生物の生態に基づく調整された純種。既存の生物をただ混配させた混種。

この三つの分類方法でペット達にランク付けが行われていた。

そしてそれだけで済んだのなら、まだ幸せだっただろう。


 しかし定められたランク付けがあまりにも的確だったのか、ペットのステータスに大きな違いの差があったことは、悲劇としか言いようが無かった。


ドラゴン。それは種類を問わず。SS~Aに問答無用で属する至高の存在だ。

 その中で“王者キング”と呼ばれる彼のドラゴンは、

〈カーディナル・ドレットノート・ドラゴン〉という種類のドラゴンでSSランクの存在だった。

 

基本テイムしたペットは、何だかんだ言うことを聞いてくれるのだが例外はある。

 運よくドラゴンなどをテイムすることに成功し、自らのペットにしたプレイヤーは言うことを聞いてくれず、苦労したと聞く。

 他のプレイヤーがドラゴンを制御出来ずに四苦八苦している最中。

最高峰のドラゴンと難なく共に歩み冒険する彼の姿を見て、いつしか彼の事を“王者キング”と呼ぶようになった。


 そんな彼は、幾人かの取り巻きのドラゴン・プレイヤー達と保護した動物を引き連れ、大勢の群れとなって進軍していた。僕たちは、そんな集団を目撃した。

「わぁ~凄いね~どれだけの動物を誘導しているのかな?」

ユリさんが感嘆の声を上げた。


彼らは、10頭にも満たないドラゴンで千を上回る、動物達を見事に統率していたのだ。何頭かのドラゴンは、その巨体に相応しい大きな翼で空を駆け、残りの何頭は動物の集団を囲うように地を駆けている。

 

 その中の一つに他のドラゴンが霞んで見えるほど、印象に深く残る真紅のドラゴンが悠然と先頭を駆けていた。


 あれが〈カーディナル・ドレットノート・ドラゴン〉

王者キング”の相方か…

 まるで統率の取れた軍隊の進軍の様な風景を遠目に眺めていた僕らに、軍から離れて向ってくる影が一つ。


 影はやがて、段々と近づいて僕らの近くに舞い降りた。

「“謙譲けんじょう”さんじゃねぇか!相変わらずネカマして、女を囲ってんのかよ?」

毒づいたセリフを吐きながら、ドラゴンから飛び降りた一人の男性。

 言いがかりの様な言葉を投げながら、こちらへと来た彼の名はバン。

鬱陶しい笑みを浮かべながら、イヴさん達を値踏みする様に見た後、再び彼は僕を見た。


「どの子も上玉揃いで、羨ましなぁ~俺にもお零れくれよww」

相手の気持ちの考慮など、まるでしない事が感じられる言葉だった。

 彼がこの様に僕に突っかかるのには、些細なすれ違いによる理由があった。

このゲームが始まって一周間ほど過ぎた頃の出来事だった。

やっとゲームに慣れ始め、日銭を稼ぐのに苦労していたのを見かねて、話し掛けてくれたのがバンだった。


 彼はβテスターには成れなかったが、豊富なゲーム知識を有していた為、このゲームにすぐ慣れていった。しかしちょうどその頃、進行度が停滞しかけていた為、彼は初心者の救済活動をしていた。


 その眼に止まったのが僕だった。

今の彼の態度を見るからに下心があったのだろうが、それでも懇切丁寧夷こんせつていねいなアドバイスを一日駆けて僕に教えてくれた。悲劇はその日の終わりに起こった。

フレンド登録が完了した時、彼は知ってしまったのだ。僕が男だということを…


 このゲームは現実との性別を偽る事がシステム的に出来ない。

だから男の様な名前でも、容姿が女性的であれば女性だと思ったのだろう。

 そんな些細なすれ違いから、僕は彼に心良く思われていない様で、それから彼は事あるごと、に突っかかって来るようになった。


 “謙譲けんじょう”という名は、オブシィを入手して少し経った頃、沢山のプレイヤーが見せて欲しいと訪ねて来るようになった時、訪ねて来るプレイヤーの多さに煩わしさ感じていたノワールがシビレを切らし、暴れて回って仕舞った。

 暴れまわるノワールをなだめ、周りに頭を下げる僕とは対象的に踏ん反り返ったノワールに七つの大罪の“傲慢プライド”そして対応美徳である“謙譲けんじょう”の名が僕達に付けられることになった。

そんな事を思い起こして、五月蠅く喚く彼を思考の外に置き、聞き流していた。


「ゴゴゴゴーーーゴゴゴーー」

 いつまで続くのだろうと思っていた矢先、遠くで大きな地鳴りが聞こえた。

動物達はパニック状態に陥り、統制の輪から外れた。

「チィ、続きはまた今度や!」

 そんな捨てセリフを残し彼は、“王者キング”の元に帰って行った。

 僕も他人ごとではない。

もうすでに動物達を宥めている、三人の少女の元に急いだ。



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