11.新装備探しと金策
初クエストを終え、自らの成長を感じていたが、それと同時に
武器の心許なさを感じていた。
弘法筆を選ばずという諺がある。
優れた技量の持ち主は、道具に左右されずという意味合いだ。
しかしこれはゲームだ。技量とは関係なく左右されるものがある。
スペックだ。限りなく現実に近いこの世界だが、おびただしい
ほどのデータの集合体である事には変わりない。
つまりレベルが上がることによってステータスの上昇で技量が
上昇しようが、攻撃力は基本的に武器のスペックとステータスの
統合情報体を意味している。
生かすも殺すも自分次第、武器次第の構造になっている。
以上、装備を度々更新していくことが必要になって来る。
…というわけで、店巡りをして、各武器屋を覗いていた。
しかしこれと言った物がない。ついでにGも足りない。
「嬢ちゃん~どうしたんだい?さっきからうろちょろ店を回って?」
途方に暮れていた僕に誰かが話し掛けて来た。
女性じゃないんだけどな~と思って振り向いた。
むさ苦しい男がいた。その男投げ捨てるように言った。
「レベルが上がって装備の新調をしたいんですけど…お金もあまりなくて…」
「そうか…先立つ物がなんとかだな。よし!何か素材とか持ってないか?それで出血大サービスで格安で作ってやんよ!嬢ちゃん!」
「本当ですか?ありがとうございます」
思いがけない提案に喜びを隠せずに、礼を言った。
工房に案内された僕は、新たに手に入れたアイテムを全て
オブジェクトして実体化させる。
テーブルに各アイテムが出現した。
「結構あるな…嬢ちゃんは何使ってんだい?」
「弓です。あと体術スキルを手に入れたので、腕と脚装備も欲しいです」
「弓か…それなら樹人の若木を加工すれば良いのが、作れそうだな」
「腕と脚は素材が足りんから無理だが…服とズボンを新しいのが作れそうだ」
そう言って、淡々決まっていたが、ある素材を見ながら…
「で…これらをどうやって手に入れた?」
<リザードマン>から入手した、素材の事を言っている。
「峡谷の山頂で偶々出逢った<リザードマン>を何とかして
倒し、手に入れました」
「<リザードマン>を初期装備で倒すとはやるな!」
「こいつの槍と交換で、製作費は差し引きゼロで良いぜ!」
男前な提案で、驚いたがすぐさま受け入れる。
「宜しくお願いします」
「出来たらメールするからよ…フレンド登録しようぜ!」
「はい、わかりました宜しくお願いします僕は、ユウヤです」
「俺は、アスラだ。よろしくなユウヤちゃん…?」
「もしかして男なのか、ユウヤ…お前!」
「畜生―!男に色目使ってしまったぜ…だが男に二言はねぇ。また連絡する」
途中までは順調な交渉だったが、最後のほうで締りの
悪いことが起き、終幕を迎えた。
装備の問題は解決できそうだ。お金がない、クエストで稼ごう。
さっそく割の良いクエストを探した。
そしていくつかのクエスト候補が挙がった。
〔牡丹肉の納品〕、〔紅葉肉の納品〕、〔桜肉の納品〕〔ゴブリンの討伐〕、〔ハーピィの討伐〕これらは、報酬のGが中々高い全て1000Gを上回る。
素材もついでに集められそうだ。
どれにしようかと思っていると掲示板に近づいて来る影が一つ人影だ。
最初にスロー・ラビットのこんがり肉の出店を出していた亭主だ。
「ようあんちゃんまたあったな!」
「どうも以前はご馳走様でした。今日はお店の方はいいんですか?」
「この後営業はするが、肉の在庫が減って来て、依頼を出しに来たんだ」
「そうだ!お前さんが肉取って来てくれないか?勿論、報酬は弾むぜ!」
「わかりました、お受けします」
嬉しい提案に、すぐさま了承の返事をした。
「よし頼んだぜ!内容はこれだ!」
〔即急:タートル・ファイヤーの入荷依頼〕
契約金:100G
報酬:5000G TP:50ポイント
難易度:☆☆ ランクE
受注資格:特になし
【内容】
出店タートル・ファイヤーの肉の在庫が少なくなってきた。
本日中に指定された数の肉を納品せよ。
【達成条件】
スロー・ラビットの肉×30
スロー・イノシシの肉×20
追記:それぞれの肉は納品分とは別途に買い取る用意がある。
この依頼を受けました。
システムメッセージが流れた。
「では、行ってきます!」
「おう、頼んだぜ!終わったら前、店を出していた所来てくれよ!」
そういって亭主と別れた。
草原に来た。
順調に兎と猪を狩っていたが、問題が起きた。矢が無くなったのだ。
矢を射なくなった僕を不審に思ったノワールにジェスチャーを
混じらせながら説明をした。
「てへぺろ☆」
その後…滅茶苦茶かじられました。
HPが三割ほど削れたが、気にせずこの状況の打開策を講じる。
特に思い浮かばなかったので、メニューを開いた。
ちなみにノワールは独りで狩りをしてくれているようだ。
メニューを開いた時にシステムメッセージでわかった。
流れるメッセージを順番に処理していると、新しいアーツを
習得したことを確認した。
熟練度が一定に達したためだろうか、スキル一覧から<弓スキル>を覗いた。
<三点バースト・アロー>
実体のある矢とは別に、魔力で出来た矢を生成し同時に放つ。
ふん…矢のない僕には関係ないね。そっぽ向いた。
ついでに熟練度が100になっていた為、強化オプションを選択する。
強化オプション一覧
・ATK上昇
・クリティカル上昇
・アーツ冷却ダウン短縮
・マジックアロー作成
以前習得したクイックチェンジの替わりに、新しいオプションがあった。
これだ!来ました!状況を打開できますよ!
上がったテンションのまま、マジックアローの習得し説明をみた。
マジックアロー作成:MPを消費し魔力で矢を生成する。
期待どおりの代物であって良かった。
<索敵スキル>を使って、ノワールと合流し狩りを再開した。
半日ほど狩りをして、時たまに現れる
<スロー・ウルフ>、<ゴブリン>、<トレント>
などを倒していたが、MPも残り少なくなってきたため少し休憩をした。
休憩にしながらイベントリを開く。
所持アイテム
・スロー・ラビットの毛皮×36
・スロー・ラビットの肉×54
・スロー・イノシシの毛皮×39
・スロー・イノシシの肉×27
目標数は取りあえず集まったな。
しかしお腹が空いた。けど携帯食はもうない。隣でスロー・イノシシの肉を
頬張るノワールを羨ましい眼差しで眺めている。
腹が鳴る。これくらいならまだ大丈夫だが。一定以上空腹がたまると状態異常が発生するため潮時かと街に戻る事を考えながらイベントリをスクロールした。
・火起こし器
セットでついて来たアイテムだったため忘れていた。
このアイテムで肉を焼けばいいんだ!そう思い実体化させた。
火の起こし方は存外簡単だった。バーベキュで火起こしした
経験があったが全然楽だった。
スロー・イノシシの肉、マンガ肉を実体化させこんがりするまで火を通し焼いた。
食べる。旨い。噛み応えがある肉の弾力を口の中で噛み締め頬張る。
横では、同じように満足そうに頬張りながら尻尾を振っているノワール。
肉を頬張り終わった僕らは再び、狩りを再開しようと立ち上がった。
…しかし周囲には多数の<スロー・ウルフ>と<ゴブリン>がいた。
何故こんなに…頭を少し悩ませ気づく、匂いだ。
匂いにつられてこんなにも集まってしまったのか。
5、6匹の群れでなら余裕を持って、倒せるだろう。
けれども、この数は流石に無理かも知れない。
<索敵スキル>によると。やや<ゴブリン>の方が多い。
戦うしかない…けど勝てるか?
現在HPはほぼ満タンだが、MPが半分以下だ。
そして矢がないため、マジックアローを使って矢を作成しなければ、僕に攻撃の手段は残されていない。どうする?決まっている。やるしかないんだ。
「行こう」
深く深呼吸し言った。戦いが始まった。
開戦の合図は僕の新アーツ<三点バースト・アロー>から始まった。
MPが一割近く減った。
魔力で出来た三本の矢が敵を襲った。二本命中した。命中したのは二体の<ゴブリン>だ。それぞれのHPを4割ほど削った。
ノワールがその二体に襲い掛かり…倒した。ポリゴンが散る。
しかし同時にノワールに襲い掛かる多数の影、それを遮る様に
続けざまに、矢を連射する。その援護のおかげか、敵意が
こちらに集まる。迫りくる<スロー・ウルフ>に狙いを定め射抜く。
一撃で仕留めるように頭を狙うしかし届かない、バーが一割ほど
残りそのまま向かってくる。バーが残り少ない狼を無視し、続けざまに
迫る狼達に狙いをつけ射る。射る。射る。射る。
……六射ほどしただろう最初に射なれた狼が僕を襲った。
そして後続の狼達も続けざまに僕に群がった。全身に鋭い痛みが走る。
しかしやられっぱなしではない。視界に映るバーの少ない狼から
取っ組み合う様に、攻撃を加える。バーの削り合いを数度、繰り返し
群がった狼を倒すころには、HPが半分になっていた。
「(ノワールはどうなっている?)」
<索敵スキル>が反応している方向を見た。
多数の<ゴブリン>がノワールに群がっている。しかしそれでもなお
臆す事無く、牙や爪で群がる敵を一匹一匹確実に仕留めていく。
けどHPは三割ほどしか残っていない。
このままではノワールが先に殺られてしまう。弓を構え、矢を射る。
それでも<ゴブリン>の攻撃は止まらない。矢を射ながら走る。
射る、走る。などの行動を繰り返した。しかしそのループは
三回ほどで、終わってしまった。MP切れだ。
もう弓による援護は出来ない。走りながら、回復薬を取り出し飲んだ。
HPが少し回復した。残りの回復薬もイベントリから取り出し手に持った。
駆け寄った時にはノワールのHPはレッドゾーンに差し迫っていた。
回復薬をノワールのすぐ傍に置き<ゴブリン>からの敵意を
集めるために僕はがむしゃらに攻撃した。
身長は僕の方がかなり高いため脚で蹴りまくった。
ノワールに攻撃を受けていた何体かの<ゴブリン>はそれだけでバーを
消失させ消えっていった。しかし多勢に無勢。残り数匹まで
追い詰めたが、もう駄目だ。群がる<ゴブリン>にそう思ったとき…
「ガォー」
雄叫びが聞こえる。ノワールだ。黄色まで回復したHPが見える。
うまくいったようだ。そう思うと自然に笑みが零れた。
それからはノワールが攻撃の軸となって、僕が<ゴブリン>の気を引きつつ戦った。
そして…終わった。僕たちの勝ちで…
戦闘が終わり、すぐさま<索敵スキル>全開にして、街に帰った。
もう一回も戦闘をする余力は残っていなかったからだ。
街に辿り着き、ノワールが小型化し頭に乗った時、安堵が訪れた。
「危なかった~」
誰に言うわけでもなく、口から零れた。
同意する様に尻尾を打ち付けてくるノワール。
危なかった。これからは、郊外では気をつけよう。
そんなことを頭に入れ、<出店タートル・ファイヤー>が
前回あった場所に足を運んだ。
あった。相変わらず良い匂いを漂わせ肉を焼く亀と亭主がいた。
「すいません、依頼がされた物を持ってきました」
「おう!坊主ありがとよ!そこの荷台に出してくれ!」
言われたとおりにアイテムを実体化させた。結構な数の肉が音を立て。
荷台に収まり、消えた。
「確かにあるな!ありがとよ!少し多いけど買い取っていいんだな?」
「はい、よろしくお願いします」
「よし、これが報酬だ、受け取ってくれ!あとサービスだ、これも食いな!」
大きな袋と共に渡されのは、こんがり焼けたスロー・イノシシの肉に
何かを塗したマンガ肉だ。うまそうだ。
大きな袋は手に持つとイベントリに自動的に収納された。
そしてクエストが完了したメッセージが流れた。肉に齧り付いた。
旨い。塗された何かが程よい辛さが絶妙だ。
「これがうちの新商品のカラパス・マンガ焼きだよ!また食いに来てくれよ!」
そう言って亭主は再び仕事に戻った。
クエストを終え、持ちGがどれくらいになったか確認するためメニューを開いた。
<メールが一通届いています>
アスラさんからだ。
【装備が出来たぞ、工房で待っている】
凄く簡潔な一文だけが書かれていた。
素っ気無いなと感想を抱き工房に向かった。
工房に着いた。
「すいません、ユウヤです。失礼します」
挨拶をして、工房に入った。
「おう!待ってたぞ!良いのが出来たぜ!」
そういってカウンターに弓と服、ズボンを出した。
すぐさま出された装備を観た。
≪若樹の弓≫
若い樹精のから取れた樹木から作り出された弓。
しなりが良く、魔力との相性もいい。
ATK:+20
MIN:+4
≪狩猟者の服≫
主に狼の毛皮を使って裁縫された服。
DEF:18
≪脱兎のズボン≫
兎の毛皮をふんだんに使って裁縫されたズボン。
動きやすさを重視した設計がされている。
DEF:20
AGI:5
初心者シリーズとは比べものにならない性能だ。
「ありがとうございます。本当にあの槍と交換でいいんですか?」
こんな良い物をただで貰うのは流石に申し訳なく思い。提案した。
「あれはそれなりのレアもんだから良いんだよ!また素材が溜まったら腕と脚装備作ってやる!その時はふんだくってやるからな!ww」
笑いながらそう言ってくるアスラさんに感謝し次もここに来ようと思った。
「わかりました。その時はよろしくお願いします」
礼を言って、装備を受けとり。工房をあとにした。




