粘液戦隊ショクシュンジャー ブルー爆参の巻
人類の未来を守るのだと思えば、悪の触手どもとの戦いも辛くはない。ぬめっと生暖かいショクスーツの装着感にも慣れた。
一つだけ不満があるとすれば……
「なぜもてないいいいいいいい!」
絶叫するトモに、アザ・トーは大きな目玉をキョロリと傾げて見せる。
「お前、めっちゃモテモテだぞ?」
「だ、誰にっ!」
「みんな会いたがっていたし……そろそろ連れて行ってもいいかな」
触手でもしょもしょと這うアザ・トーに連れられてたどり着いた先は、大きな洞窟だった。
「ここは、我々ショクシュンジャーの本部基地であり、訓練機関。通称、『触手の穴』」
「……触手と、穴って言葉の取り合わせは最悪だと思う」
「そこ? ツッコミどころ、そこ?」
入り口でわさわさと揺れるアザ・トーを、少し生意気そうな男児の声が呼ぶ。
「お前はまた、何をやっているんだ」
洞窟からてこてこと歩み出てきたのは、やっと小学校に上がるころかという小柄な美少年。
「ん? 子供?」
顔を確かめようとするトモの視線を避けて、男児はアザ・トーの触手の裏に隠れた。
トモが侮蔑を叫びに変える。
「見損なったぞ、アザ・トー! こんな子供に!!」
「こんな子供にナニができるって言うんだよ! ショタは愛で、慈しむためのもの、俺だってそのくらいの流儀は心得ているわっ!」
「うわ、怖え。真性だ……ほら、その触手は危ないから、こっちにおいで」
優しく差し出された手に怯えるように、男児はますます縮こまる。アザ・トーはその頭を触手で撫でた。
「少々人見知りする子でね。紹介しておくよ。これが触手ブルーこと、カラスノだ」
その男児は、アザ・トーには容赦なかった。触手の幾本かを掴んで引っ張る。
「人を『これ』呼ばわりするな!」
「て! 痛! はげるっ!」
「さっさとイエローを連れて来いって、オネエサマ方がお待ちかねだよっ!」
「解かったから、はげるから。うう……ごめんなさい~」
イエローの心中に、不安が沸く。
「まさか、俺に会いたがっているオネエサマ方って……」
「心配するな。いずれも美女ぞろい、年齢も300歳以下のぴっちぴちばかりだ」
「いや、それ、もう人間の年齢感覚じゃないよねえっ?」
しかし、今日のアザ・トーは容赦ない。トモの手足を触手で縛り上げ、洞窟の奥へと引きずり込んだ。
そこにはぽっかりと、地底に向けて口を開けた大穴。覗き込めば深い底は光も僅かにしか届かず、闇ばかりがわだかまっている。
その闇が少しばかり蠢いた。
「やめろ、放せ! アザ・トー!」
「スマンな、イエロー。これもお前に強くなってもらいたいという、親心……」
「触手を親に持った覚えはない!」
「獅子は千尋の谷に我が子を……」
「だから、わが子じゃないって!」
「うるさいなあ。いいから行っておいで」
ぽいっと放り込まれたトモを受け止めたのは、わだかまっていた闇……いや、その中に潜んでいた実におぞましい生き物たちだ。
『彼女』たちは全部で三体、せめぎあいながら、我先にとトモの体に触手を伸ばす。
「やめっ……やめろ!」
一本の触手がするりとシャツに潜り、程よい硬さの腹筋を撫で回す。
「ひゃうっ!」
情けない……実に情けない声だ。だが致し方なかろう。
他の一本は硬いジーンズ地に絡みつき、それを脱がそうと、んしょんしょしているのだから。
以下、触手たちの会話をお届けしよう。
【まあ、美味しそうな腹筋ちゃん。マシンエクササイズやプロテインではなく、使うために鍛えられた天然物だわ】
【んしょ、んしょ……このズボン、かたいよー】
【ばかねえ。触手なんだから、触手汁を使いなさい】
【あ、そか】
一番堂々とした腐触手が、合図を出す。
【放汁開始!】
垂れ滴る汁はじゅわっと音を立てて、繊維質を溶かした。
穴の上から見守るアザ・トーはカラスノの両目を塞ぐ。
「だめ! 18歳未満にはお見せできません」
「なあ、あの人、大丈夫?」
「う~ん……食われることはないと、信じたい」
カラスノは目隠しする触手を払いのけて、穴の底を指差した。
「え~。あれ、言うの?」
こくん。
「年、ばれるんだよなぁ」
ぎゅうっ。
「わかった、言う! 言うから!」
アザ・トーはコホンと、大げさに咳払いをした。
「トモよ、触手だ……お前は触手になるのだ!」




