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ささやかながらセミを贈らせてもらいます

作者: 鶴ヶ友護
掲載日:2026/08/12

 ある日、玄関の扉を開けるとセミが横たわっていた。

 セミは動くことも鳴くこともしない。

 不思議に思いながらも、昨晩にここで死んだのだろうと結論づけた。

 初めての経験だが、夏ならばそんなこともあるかと安易に考えていた。


 翌日、玄関の扉を開けるとまたしてもセミが横たわっていた。

 セミは動くことも鳴くこともない。

 二日連続でセミが玄関前で死んでいる。

 なんとも不思議なものだ。

 昨日と同じように、深く考えることはしなかった。

 めんどうくさかったというのが本音だ。

 

 さらに翌日、玄関の扉を開けるとセミが横たわっていた。

 しかも今度は二匹も。

 当然のように、セミは動くことも鳴くこともない。

 さすがに増えたら話が違う。

 一匹でも軽く疑問に思っていたのに、二匹になると。

 頭を動かして答えを探る。

 誰かが置いたのだろうか?

 それはなぜ?

 嫌がらせか?

 そのようなことする奴に心当たりなどないが……。

「にゃ」

 考え事にふけっていると目の前の通りを猫が横切った。

 ああ、そういうことか。

 これは猫がくれたものだったのか。

 そういえば、たまに庭にやってくる猫に餌を与えていたか。

 その猫がお礼代わりに持ってきたのだろう。

「ふふっ」

 こんなことをする猫がいたなんて初めて知った。

 なら、まあ。

 今度の飯は少し豪華にしてやってもよいか。

 いつ来るのかもわからぬ相手のために、私は缶詰を棚にしまっておいた。

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