ささやかながらセミを贈らせてもらいます
ある日、玄関の扉を開けるとセミが横たわっていた。
セミは動くことも鳴くこともしない。
不思議に思いながらも、昨晩にここで死んだのだろうと結論づけた。
初めての経験だが、夏ならばそんなこともあるかと安易に考えていた。
翌日、玄関の扉を開けるとまたしてもセミが横たわっていた。
セミは動くことも鳴くこともない。
二日連続でセミが玄関前で死んでいる。
なんとも不思議なものだ。
昨日と同じように、深く考えることはしなかった。
めんどうくさかったというのが本音だ。
さらに翌日、玄関の扉を開けるとセミが横たわっていた。
しかも今度は二匹も。
当然のように、セミは動くことも鳴くこともない。
さすがに増えたら話が違う。
一匹でも軽く疑問に思っていたのに、二匹になると。
頭を動かして答えを探る。
誰かが置いたのだろうか?
それはなぜ?
嫌がらせか?
そのようなことする奴に心当たりなどないが……。
「にゃ」
考え事にふけっていると目の前の通りを猫が横切った。
ああ、そういうことか。
これは猫がくれたものだったのか。
そういえば、たまに庭にやってくる猫に餌を与えていたか。
その猫がお礼代わりに持ってきたのだろう。
「ふふっ」
こんなことをする猫がいたなんて初めて知った。
なら、まあ。
今度の飯は少し豪華にしてやってもよいか。
いつ来るのかもわからぬ相手のために、私は缶詰を棚にしまっておいた。




