第6話 宿題季実
こんにちは、季実です。只今日曜日の午前11時。私は部屋で宿題してます。
「えっと、にく……にく……」
「……おはよーう」
「あ、お姉ちゃん。おはよ」
日曜日のお姉ちゃんはだいたい10時以降に起きてきます。毎日私が起こしてなかったらどうするんだろ……
「何やってんの?」
「宿題だよ。えっとにく、にく」
「肉? 肉はこう書くんだよ」
「違うよ。なんで算数ドリルに漢字書くところがあるのよ」
「知らねぇよそんなの。そういうドリルなんだろ?」
「違うわ! 斬新すぎるでしょ! 意味わからんわ!」
「うるせーな。じゃあなんだよ」
「九九だよ九九。にくはいくらだっけ?」
「たしか100グラムでサンキュッパぐらいだっけ」
「肉から離れろよ! 2かける9がいくらか聞いてるの!」
「口悪いなぁ……ってかお前、そんなんもわからんの? ガキだねぇ」
「はいはい。ガキで結構だから教えてよ」
「そんなの……えと、じゅう……18に決まってんだろが!」
「あれ? 今ちょっと迷わんかった?」
「は? いやいや迷ってないし」
「いや迷ったでしょ?」
「いやいや何いっちゃってんの? 迷ってるとしたら人生にだよ」
「いやそれはそれでダメでしょ! てかむしろそっちのがダメでしょ!」
「お前うっせーなー。だいたい九九なんざ小2で完璧だったっつーの」
「……へぇ」
「オイ、なんだその目は? もしかしてあたしのこと疑っちゃったりなんかしちゃったりしてるわけ?」
「ちゃったり多いな。ま、全く信じられないわけではないんだけどね」
「なんだその言い方は? そんなに言うんなら証拠を見せてやるよ。ほら、何でも問題出してみ?」
「いいの? 後で後悔しても知らないよ?」
「しねぇよ」
というわけで、なぜかお姉ちゃんへの問題タイムに。
ああ言ってみたけど、お姉ちゃんでもさすがに九九は覚えてるでしょ。ってか覚えててほしい。
「んじゃいくよ? いんにが」
「に!」
「ににんが」
「し!」
「さざんが」
「オールスターズ!」
「ん!? 今なんて言った?」
「……く、だよ。9だよ」
「いや、ちがうこと言った気がするんだけど……まぁいいや。次いくよ。しにが」
「はち」
「しわ」
「しわだぁ? しわなんかねぇっつうの! あたしはまだ18だぞ!?」
「いや何の話してんの!? 九九だっつってんでしょ?」
「あ、ああ。そっか。しわ……しわか。さんじゅうに」
「まったく……」
最近のお姉ちゃんは年齢の話とかに敏感すぎる気がするんだけど、何があったのかは聞かない。いや、聞けない。怖い。
「じゃ、次いくよ? えー、ごご」
「ティ」
「え?」
「……にじゅうご」
「……?」
「どした?」
「あ、いや。次は、えと、ろっく」
「オン!」
「へ?」
「……いや、ごじゅうろくだろ」
「は!?」
「ん!? いやいやいやごじゅうしだろ」
「……うん。じゃ、しちは」
「ごじゅう……ごじゅう……ごじゅうろく!」
「……正解。じゃ、はっぱ」
「カッタァ!」
「うん」
「……ろくじゅうし」
「うん。じゃ、ラスト。くく?」
「はちじゅういちぐらい」
「うん。まぁ正解だね」
「……おい」
「何?」
「つっこめよ!」
「へ?」
「いや、へ? じゃなくて! ツッコミをしろよ! お前の仕事だろうが!」
「いや、めんどくさかったし。ってか途中からボケを狙ってんの見え見えだったし」
「そんなこと言わずにしてくれよ! 頼むよ!」
「いや、いいけど……」
「じゃ、ツッコミしろよ? 今からボケるから」
「あ、うん。どうぞ」
なんか知らんが今度はツッコミしてほしいらしいのでお姉ちゃんへのツッコミタイムに。なんか今日はお姉ちゃんが好き放題やってるな……。ま、そんなに言うからにはツッコミするか。
見ているとお姉ちゃんは鳥っぽい格好をして言った。
「ぽっぽーはとぽっぽー」
「ん? えっと……」
「ぽっぽーはとぽっぽー」
「あの、えと」
「ぽっぽー! はとぽっぽー!」
「な、なんでやねん!」
「……うん」
……うん?
「まぁいいや。そんじゃ」
「え? あれ?」
すごい納得してない感じで出てっちゃったんだけど……
「鳩じゃなかったのかなぁ……」
うーん……
まぁいいか。宿題やろ。