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ゆとりろ!  作者: 雲丹
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第31話 変態ジジイ現る

 こんにちは、季実です。

 学校帰りの今、私とまみちゃんはどしゃ降りの雨にも関わらず1つの傘で雨をしのぎつつ、ある人を追いかけています。その人とは――


「あっ、きぃちゃん早く行かないと! ひぃちゃん行っちゃうよ」


「だからー、私は別にこんなことしたくないんだってば」


「何ー!? ひぃちゃんが心配じゃないの!?」


「いや、そうじゃないけど……」


 そう、私たちが追っているのはひみこちゃん。転校してきてからいつも私たちと帰っていたのに、最近は授業が終わるとひみこちゃんは1人てすぐに帰ってしまうので、まみちゃんが『これは事件の香りがする!』とか言って私の傘を持ってひみこちゃんを追いかけ始めたのだ。私も傘なしじゃ帰れないため、仕方なくついてきたというわけ。ひみこちゃんも何か用事があるだけだと思うんだけどなぁ。

 そんな私の意見などまみちゃんが素直に聞くはずもなく、結局かれこれ10分近く追いかけている。


「そういえばまみちゃん、前もひみこちゃんのこと追いかけたんじゃなかったっけ?」


「へ? うん。あの時はひぃちゃん、もうちょっと行ったところの変な研究所みたいな所に入っていったよ」


「あー、それ言ってたね。でもあそこって変なおじいちゃんが1人で住んでるんじゃなかったっけ?」


「まだおじいちゃん違うわい」


「ひぇっ!?」


 突然声がして振り向くと白衣の、どう見てもおじいちゃんな男性がこの雨にも関わらず傘もささずに立っていた。


「え、あ、あの」


「なんだジジイ。あんた誰?」


 まみさんや……なんでケンカ売るの!?


「あたしのきぃちゃんに背後から忍び寄って何するつもりじゃい」


「何もせんわい。わしは若い子は好きじゃが、それにも限度があるわい」


「何だとー!? ってことはきぃちゃんを見ても性的に興奮しないってこと!?」


 何言ってるんだこいつ?


「いや、しないわけではないんじゃが」


 そこは『しない』って断言してほしかった。


「やっぱりね! ほらきぃちゃん、このジジイもきぃちゃんを見て興奮するって!」


「嬉しくないよ! ってか『も』って何だ!」


「そりゃもちろん、あたしも……」


「いや、やっぱり言わなくていい。で、えっと……」


 私がおじいさんの方を見ると、バッチリ目が合った。


「ん? おぉ、わしは加古川研究所で博士をやっとる、通称『かこじぃ』じゃ。と言っても、研究所にはわししかおらんのじゃがな。かっかっかっ!」


「へ? かこじぃって自分のことジジイって認めてるようなものじゃん」


「違う違う。かこじぃの『じい』は漢字変換すると『自分』の『自』に」


「いや、いいです。言わなくていいです」


 何故かはわからないけれどとてつもなく嫌な予感がしたから私はかこじぃの話を遮った。この人、まみちゃんと同レベル?


「なんじゃ、そっちから訊いておいて。で、なんじゃ? うちに何か用かの?」


「え、あ、えっと」


「あんたじゃなくて、ひぃちゃんに用があるの!」


「ひぃちゃん……? おぉ、卑弥呼のことかの? そうか、卑弥呼の友達か」


「ただの友達じゃなくて親友だ! そんであたしときぃちゃんは恋人だ!」


「なんでやねん」


「ほほぉ、百合というやつじゃな。これは興味深い」


「ええー……」


 なにこの人すごく怖い。


「まぁきぃちゃんは照れ屋さんだからこう言うけど、本当は両想いなんだー♪」


「ほうほう、それは素晴らしい」


「ちょ……いや、もういいや。で、ひみこちゃんのことなんですが。最近変わったことはありませんでしたか?」


「ふむ、百合話をもう少ししたかったんじゃが……まぁいいわい。で、卑弥呼の話か。あいつはもともと変わっておるからのう」


「へぇー。まぁたしかに変わってるよね」


 多分ひみこちゃんもまみちゃんにだけは言われたくないと思う。


「そうなんじゃ。未来予知とか非科学的なことをし始めるし、それが当たるしでもう研究なぞやってられんわい」


「未来予知が当たる……ってすごいじゃないですか!」


「あたしときぃちゃんの将来も見てもらおうよ!」


「いやだ」


「そっか……やっぱり先に知っちゃうと楽しみがなくなっちゃうもんねー」


 こいつ、なんてプラス思考。まみちゃんには悩みごととか全くないんじゃないかといつも思ってしまう。それはそれで羨まし……くはないか。


「ふむ、そういえばここ最近毎日やっとるのぉ。今日もやるかもしれんし、見に来るかの?」


「え、いいんですか?」


「もちろん。卑弥呼の友達なら大歓迎じゃ」


「おぉー! かこじぃ、思ったよりいいやつだねぇ」


「そうかの? じゃああと十年経ってわしが生きてたらおっぱい触らせてくれ」


「やだよ。あたしのおっぱいはきぃちゃんのものだもん!」


「そんなわけねーよ」


 そんなくだらない、本当に心の底からくだらないと思う会話をしながら、私たちは研究所へと歩いていった。


「…………」


 その後ろに、謎の影がつけてきていたことも知らずに。

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