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ゆとりろ!  作者: 雲丹
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第30話 まーち更正作戦-後-

 引き続いて乙香です。

 えー、とりあえず今の時刻は3時半、もう放課後です。そしてすっかりお馴染みになった私、日和、まーち、さらに愛葉さんと菊花ちゃんというメンバーで帰ろうとしていたのですが。


「さぁ、帰るで唯ちゃん! 菊花ちゃん! なんやねん!」


「帰ります。私は木更津弥生です」


 なんだかとっても危ない二人に愛葉さんは完全に引いてしまい、菊花ちゃんは興味津々といった風に二人を観察している。っていうかこの作戦の目的がわからない。まーちが標準語を使おうとして敬語になっちゃうのはまだわかるけど、日和は何の意味があって似非関西弁を使っているんだろう。まぁ多分、やりたいだけだと思うけど。


「……桜馬、なんだこれ?」


「私にもよくわかんない。一応まーちが関西弁やめて標準語しゃべれるようになろうとしてるみたい」


「まぁ、勿体無いわ。私、弥生ちゃんの関西弁好きなのに」


 弥生ちゃんって何か聞き慣れないなぁ。一応言っておくと弥生ってのはまーちの本名です。ちなみにまーちは5月生まれらしいです。何で弥生ってつけたんだ。


「角木和さん、私は標準語をしゃべることでまともになろうと思ってるのです」


「あらまぁ、そうなの」


「いや、標準語しゃべってもまともにはならないと思うけどね? 日和とかまともじゃないし」


「なんでやねん! 私はまともやねん! なんやねん!」


「あんたうるさいな」


「愛葉さんも角木和さんも関西弁を使ってみてはどうでしょう? 日下部さんのように面白くなりますよ?」


「ならねーよ。っていうか日和面白くないよ」


「いや、オレはいい」


「私、やってみますわ!」


「マジでか」


 何故かやる気満々なご様子の菊花ちゃんに、愛葉さんも私も驚きを隠せない。っていうかその横で日和が小さくなって指で地面にのの字を書いていじけているのは一体何なんだろう。情緒不安定なんだろうか?


「いっちゃんに面白くないって言われた……面白くないって……」


 えぇー……

 メンタル弱いな。


「……日和? さっきのは冗談だって。日和すごい面白いよ」


「うそだ。いっちゃん言ったもん。私のこと面白くないって言ったもん」


 めんどくさっ! こいつめちゃくちゃめんどくさいな。


「流れだよ流れ。なんかそういう流れだったからさぁ」


「いっちゃんなら流れに逆らってでも私を誉めてくれるって信じてたのに」


「信頼厚いな。じゃなくて、ほら、私が日和をべた褒めしてたら気持ち悪いでしょ?」


「なんでやねん!」


「え?」


 と、私がなんとか日和を宥めようと頑張っていたところへ、突然横槍が入った。その声の主は、菊花ちゃん。


「こんな感じでどうかしら!」


「いいですね角木和さん。あなたは才能があります」


「本当に!? やりましたわ、唯ちゃん! 私、才能あるって!」


「あ、ああ……良かったな」


「私、これで食べていきますわ!」


「いや、それは無」


「なんやねん!」


 ちょっと目を離したとたん、急に日和が元気になった!? やっぱりちょっと情緒不安定なんだな。そういうことにしておこう。


「菊花ちゃん、なんやねん! 私の方が才能あるねん! なんやねん!」


 日和を放っておいたら、いきなり菊花ちゃんに喧嘩を売り出した。とはいえ菊花ちゃんはそんな喧嘩を買ったりは……


「……いくら日和ちゃんと言えども、ここは譲れませんわ」


 あれー? 買っちゃったよ。そんなに譲れないものなんでしょうか? 私には全くわかりません。


「……私は日下部日和やねん! 生まれも育ちも大阪でんねん! 好きな食べ物はたこ焼きでんねん!」


「わ、私は角木和菊花やねん! 生まれも育ちも大阪でんねん! 好きなタワーは通天閣でんねん!」


「ぐぬぬ……」


「むうう……」


 いやいやいや。なんだかすごくしのぎを削っておられるみたいだけど、あんたら生まれも育ちも東京でしょうよ。ていうか好きなタワーなんて紹介しないよ。大阪人がみんな通天閣好きなわけじゃないんだよ。

 とりあえず頭にいろいろ浮かんできたツッコミはしないことにした。なんだか面倒に巻き込まれそうだったし。


「……菊花ちゃん」


「な、なんやねんですわ」


「ここはもう、まーちに白黒つけてもらおうよ! ……やないか」


「そ、そうですわやね」


 なんかもうぐだぐだだなぁ。

 そう思いながら、完全に観客に成った私と愛葉さんはあくびをしながら二人の行く末を見ていた。と、争う二人の間にまーちが召喚された。あれ? なんだか様子がおかしい。


「まーち、どっちが関西弁上手いか教えてくれ! やねん!」


「私ですわよねん!?」


「いや、私だよな、ねん!」


「……どっちも」


「え?」


「どっちもおかしいわぁー!」


 ……まーちがまともなことを言った! 思わず私と愛葉さんは顔を見合わせる。


「大体な、『ねん』とか『やねん』とか付けたら関西弁になるって思たら大間違いやで! 一応どんな言葉にもルールっちゅうもんがあるんや! 日和ちゃんはやたら『なんやねん』言うし、菊花ちゃんは上手い言うたけどお嬢様言葉とごっちゃになってた。二人ともめっちゃ変やったで!」


 お前にだけは言われたくないよ。と私は思ったけれど言わなかった。日和も菊花ちゃんもちょこんと正座して、完全にまーちの説教が始まっていたから。


「せやからな、無理矢理関西弁しゃべろうとか思ってもあかんねん! それは標準語でも一緒やねん! というわけで私は標準語しゃべるのやめます!」


「え?」


「え?」


「え?」


「え?」


「え?」


 えぇー……

 結局まーちは、これからも関西弁をしゃべるみたいです。




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