第27話 第一回さつき恋愛会議
こんにちは、季実です。本日は日曜日、ということでまみちゃんとひみこちゃんが例によってうちにやって来ています。が、ただ遊びに来ているわけではないのです。
「よし、それじゃあ第一回さつき恋愛会議を始めます!」
そう、お姉ちゃんの『アイバ』とかいう人との恋愛について話し合い、場合によっては手助けをするために何をするかも話し合うために今日は集まったのです。
「きぃちゃん、ネーミングセンスないね」
「別にそこはいいじゃん!」
「いや、わらわは季実の安直なところ、好きじゃぞ」
「安直って……ま、まぁとりあえずありがとう」
「きぃちゃん! あたしもネーミングセンスが全くないきぃちゃんのこと好きだよ!」
「うるせーよ」
おっと、案の定話がどんどんずれてきた。でも今日は流されないぞ。
「ハイハイ、もうまみちゃんが私のこと好きなのはわかったから。で、お姉ちゃんのことなんだけど」
「新婚旅行はどこ行く?」
「は?」
「挙式はあたし、和風より洋風がいいなぁ。やっぱりウェディングドレス着たいし」
「……何の話してんの?」
「きぃちゃんとあたしの結婚の話だよ」
「しねぇよ。ってかなんで急にそんなこと」
「きぃちゃんがあたしの愛に気づいて一生大事にしてくれるって言ったから」
「言ってねぇよ」
「えぇ!?」
心底意外そうに驚くまみちゃん。こっちがびっくりだわ。
ってそんな話してるんじゃないんだよ!
「もう、まみちゃんは放っておくからね。で、お姉ちゃんのことなんだけど」
「さつきの恋の話……じゃな」
「は、はいそうです」
出た、ひみこ仙人。恋愛話の時のひみこちゃんのオーラは何かすごい。まさか恋愛経験豊富なのかな? ……小学生でそれはないか。
「さつきの恋はズバリ……叶わないじゃろう」
「えぇ!?」
突然ひみこちゃんが縁起でもないことを言い出した! でもその自信ありげな様子に私も言い返せない。
「とはいえ、水晶がないから確実とは言えんがな」
「水晶?」
「きぃちゃんの瞳は水晶のごとき美しさだよ!」
「ちょっと黙ってて」
ちょっと静かにしていたかと思ったらまたまみちゃんが急に意味のわからないことを言い出した。なんでこんなしょうもない口説き台詞みたいな言葉ばっか思い付くんだ?
とりあえず、いつも通りまみちゃんは無視する方向でいこう。
「あれ? 聞こえなかったかな? きぃちゃんの瞳は」
「ひみこちゃん、水晶があったら恋愛占いとかできるの?」
「きぃちゃ」
「恋愛占いはあまり得意ではないが、できるぞ」
「きぃ」
「そうなんだ! すごいね!」
「き」
「まぁ、わらわの得意とするのは専ら」
「きえええぇぇぇい!」
「何!?」
思いっきり無視して会話を続けてたら、ついにまみちゃんが壊れた! ……って、あら?
「ちょ、まみちゃんなにすんの!?」
ヤバい! マウントポジションをとられた! 何がヤバいかってこうなると……
「んー」
「ちょ、まみちゃん待っ……んー!」
「おぉ! 接吻じゃな!」
……やっぱりキスされた。ここ最近されてなかったから油断してた。……っていうか長い!
「んばっ! ……はぁ、はぁ、ちょ、まみちゃん、長いよ! 苦しいよ! つーかキスすんなって言ってるでしょー!」
「へへへ……うまいぜ」
聞いちゃいねぇ。
仕方ない。ひみこちゃんの話が気になるから今日のところはまみちゃんへの反撃はお預けにしよう。
と、ひみこちゃんに話を聞こうとした時、急に部屋の扉が開いた。
「おはよー……ん? ひみこちゃんとまみか。朝早くからどうした」
「お、お姉ちゃん!」
お姉ちゃんが起きてきてしまった。朝早くと言ってももう10時なんだけど。
「おぉ、さつき、おはよう」
「おはよう、さつきお義姉ちゃん!」
「……なんかちょっとひっかかるけど、まぁいいか。で、何してるんだ?」
「え!? いやいやいや、何もしてないよ?」
「どうしたきぃ、声でかいな」
この作戦はお姉ちゃんには秘密にしないといけない。バレたらどうなるかわかんないし、お姉ちゃんも小学生にこんなこと心配されてるとは知りたくもないだろうしね。
「ぜ、全然でかくないよ! 並だよ!」
「いやでかいだろ。全世界に声を届けんばかりに叫んでるじゃねーか」
「そうかな!? まみちゃんはどう思う!?」
「きぃちゃんが可愛いと思う」
「そっか!」
ちょっと慌てすぎて自分でも何を言ってるのかよくわからない。とりあえずお姉ちゃんにバレなければ今日のところはよしとしよう。
「きぃ、お前なんかおかしいぞ?」
「ぜ、全然おかしくないよ!」
「いや、おかしいだろ。なぁ、ひみこちゃん?」
「うむ。そうじゃな。さっきまみと接吻をしてからおかしいな」
「接吻って……お前らな、朝っぱらから」
「え? え、いや違うって! まみちゃんが勝手に」
「同意の上でしました!」
「ちょっと!」
「……頼むから、頼むから一線は越えるなよ」
「え、ちょ、誤解だってお姉ちゃん!」
私の必死の叫びも虚しく、私の弁明を聞くことなく、お姉ちゃんは部屋を出ていってしまった。
……たしかに作戦のことがバレなきゃいいって言ったけどさ。こんなことにならなくてもいいよね。
「……はぁ」
「きぃちゃん、良かったね! これでさつきお姉ちゃんも認めてくれたようなもんだよ!」
「うるせぇぇぇ!」
とりあえずまみちゃんを一発殴っておきました。