第26話 お久しぶりです。
どうも、お久しぶりです。さつきです。
何故かわからないけど、とりあえずお久しぶりと言いたい今日この頃。手当たり次第お久しぶりと言っていこうと思う。
「あ、お姉ちゃんここにいたんだ。あのさ、夕飯なんだけど」
「お久しぶり」
「え? どうしたのお姉ちゃん。ついに頭がおかしくなったの?」
「ついにってなんだ。違う違う。今日はお久しぶりを言う日なんだってば」
「何? どういうこと? 何かのゲーム?」
「違うってば! 世界の人々にお久しぶりを届けるんだよ」
「だからその意味が」
「ぴんぽーん!」
あたしときぃのトークバトルが白熱してきたところで、言語版インターホンによる横槍が入った。音声版インターホンを鳴らさずに堂々と他人の家に入ってきている無礼者はもちろんまみ。
「おぉ、まみ、なにやってんだ」
「いや、お姉ちゃん達こそなにやってんのさ? 物置部屋で」
「あたしはお久しぶりを世界に伝えようとだな」
「私は夕飯のことで話をしに」
「夕飯? ハンバーグがいい!」
「まみちゃんには聞いてないから」
「ひ、ひどい! 今まで親子3人仲良く暮らしてきたのに! 私を除け者にするのね?」
「おい……誰が親だって?」
「あ、ごめんお姉ちゃん間違った。夫婦と姑だね!」
「てめぇぇぇ!」
「うわわわわ! きぃちゃんヘルプ!」
「知らないよー。私を巻き込まないでよ」
きぃに見放されたまみは、敵わないと判断したのかすぐに逃げるのをやめ、あたしに捕まった。
「な、何する気? チューだけは、チューだけは勘弁して! 私の唇はきぃちゃんだけのものなの!」
「なんでやねん」
「誰がそんなことするかっての。お前はこーしてやる!」
あたしはまみの横っ腹に手を回すと、思い切りこそばし始めた。すると案の定、まみはバタバタと暴れはじめる。
「ほーれほれ」
「あはっ、あはははは!」
「ほらほらほら」
「あひゃひゃひゃ! ん、んっ」
「おらおらー」
「おねっ、お姉ちゃん! そろそろっ、あははひは!」
「どらどらどらー」
「ちょっ、だ、駄目だって! んっ、あっ、んふっ」
「…………ん?」
「あんっ、あっ、ああっ、はぁっ」
「…………」
「はっ、あっ、あ、ああああ」
思わずあたしは手を止め、一歩後退り。見ると、まみは光悦の表情で、物欲しそうにこちらを見ている。
「あー、えっと、すまん、やりすぎた……かな」
「…………んふっ」
「……きぃ、後は任せた!」
「えっ!? ちょ、ちょっと待ってよ! こんな」
「きぃちゃあああん」
「ちょ、うわぁぁぁぁ!」
10分ほどしてから物置部屋に行くと、服を脱がされかけたきぃと、鳩尾を抑えるまみという見たことのある光景が広がっていた。
「わ、私は一体何を……」
「……なんかすまん」
「……いたい」
「えっと、まぁ、なんていうかその……」
あたしはどうしたものかと視線を泳がせてから、とりあえずまぁ、こう言った。
「お、お久しぶりです」
「……だから一体それなんなのさ?」
「まぁ、これからもよろしく」
「……誰に言ってんの?」
「……………………いたい」