表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆとりろ!  作者: 雲丹
25/31

第25話 桜馬家の事情

 どうも、乙香です。

 只今午後4時、学校から帰ったところなんですが、今日はなんとまーち、日和、愛葉さん、菊花ちゃんがうちに来てるんです。まぁ日和は数えきれないほどうちに来てますが、実は日和以外はまーちも含めて誰もうちに来たことがないんですよね。そんなわけで、うちの家族とはみんな初対面、のはずなんですが。


「おなかすいたー!」


「おじゃまします」


「えらい大きい家やなー」


「おじゃましますわ」


「おお、いらっしゃい」


 みんなそれぞれ挨拶しながら入ってきたところに、突如姉が現れたのです。しかもこの姉がなんと……


「あ、初めまし……て?」


「あれ? うちこの人見たことあるで」


「いや、オレもあるけど……」


「わたくし、ほんの一週間ほど前にお会いしたばかりですわ」


「あ、いや、みんなそれは勘違いじゃ」


「あら? みんなうちの生徒か?」


 うぎゃあああああ! ついに、ってか即座に言った! 出てきてすぐにバラしたよこの人!


「え、うちの生徒……って、あ! そうだ、この人たしか全校朝礼で喋ってた人だ! なんか勉強なんてしなくても生きていけるとか」


「教頭に向かってズラやて言うてたなー」


「わたくしが入学手続きした時は名前だけ言って終わりましたわ」


「いや、だってアタシ校長だし」


「いやいやいやいや! 今のおかしいでしょ! いろいろとおかしかったよ今の! ってか、ちょ、お姉ちゃん一旦帰って! 部屋に帰宅して!」


「なんでだよめんどくせぇな。玄関はアタシの領域なんだよ。テリトリーなんだよ」


「番犬か! はよ帰れ!」


「んだようるせーな。しゃーない。また後で邪魔するよ」


「せんでいい!」


 うだうだと言っているお姉ちゃんを部屋に帰して、状況が掴めずに唖然としているみんなを見る。


「え、えっと、何から説明すればいいのかな。とりあえず、あれは私の姉。たぶん日和も会うのは初めてよね」


「うん。ってかお姉ちゃんがいるなんて聞いたことなかったし」


 そりゃ言わなかったからね。あんな姉がいるなんて知れたら嫌だしね。


「で、まぁとりあえずあの姉、睦美って言うんだけど、あれはうちの中学の校長をしてるの」


「校長の妹ねぇ……ってことはだいぶ離れてるんじゃないのか?」


「いや、それが……」


「……まさか」


「……そうなのよ。そのまさかなのよ」


 あたしと日和はそれだけでわかるのだが、他の3人はもちろんわからないわけなので……かくかくしかじかと説明。


「つまり、篠塚先生は18歳なのに22歳と偽って教師をしており、乙香さんのお姉さまも同じように年齢を詐称してらっしゃると」


「まぁそゆこと」


「えっと、つまりやな、ひよこがひよこやのに鶏やて言うようなもんやな?」


「いみわかんねーよ」


「で、あの校長は今いくつなんだ?」


「今年でハタチかな。さつき姉ちゃんとは1つ違いなんだって」


「え? さつきちゃんと知り合いなの?」


「らしいよ。なんとかってグループの先輩後輩だとかで。だいぶ前に聞いた話だから覚えてないけどね」


 そこまで話したところで、玄関に立ち尽くしていたことを思い出した。話をするのならリビングでも行けばいいか、ということでみんなでリビングへ。ドアを開くと、誰かがソファに座っていた。


「あ、お兄ちゃん」


「ん? おお、乙香……と、友達か? いらっしゃい」


「おじゃましてます」


 みんな口を揃えてそう言ってから、お兄ちゃんをまじまじと品定めするかのように見つめる。

 そして菊花ちゃんが近づいて耳打ちしてきた。


「この方はどのようにおかしいんですの?」


「いや! うちの人はみんなおかしいとかそんなルールは別にないからね? 私も普通だしさ!」


「いっちゃんは普通じゃないでしょー」


「乙香ちゃんが普通やったらあたしはどうなるんや」


「お前らが異常なんだよ! ね、愛葉さん?」


「えっ、私ですか……?」


 ……誰?


「え、いや、あの、愛葉さん?」


「私がどうかしたかしら?」


「な、なんで菊花ちゃんの物真似してんの?」


「いえ、なんてことないです。いつもどおりですわ」


 ……き、気持ち悪い。こんなこと言ったら失礼だけど、ものすごく気持ち悪いよ!


「な、なんでいきなり」


「乙香、どうかしたのか? その子、体調でも悪いのか?」


「あ、お兄ちゃん、なんでも」


「大丈夫ですわ、お兄様。心配おかけしてすみませんわ」


「あ、そうかい? そんじゃ僕は部屋に戻るけど、また何かあったらなんでも言いなよ?」


「ありがとうございます、お兄様」


「…………あ、えと」


 何が起こったのかわからない私たちはしばらくその場に立ち尽くしていました。私にただひとつわかったことがあるとすれば、愛葉さんはなんかすごいということだけでした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ