第24話 極道系美少女菊花
「おっはー!」
「おはよ」
「おはよ~」
「おはようございます日和さん」
「…………」
おはようございますみなさん。日和でございます。
今日も元気よく登校してきたわけなんですが、なんというか友達も増えたなぁというのとみんな様々なあいさつをしてくれるなぁというのがわかった今朝ですね、はい。あ、ちなみに菊花ちゃんはうちの学校の生徒になったみたいです。話すと長いので簡単に言うと、まぁ転校してきたようなものですね。
「っていうかぁ、チョベリバ!」
「いつの時代の言葉だよ」
「ちょべりば……? なんか、まがまがしい響きやな」
「超ベリーバッド、の略ではないでしょうか?」
「…………」
「ってか何がチョベリバなのよ?」
「愛葉ちゃんだよ!」
「……お、オレか?」
「……へ?」
「へ?」
「え、いや今なんて?」
「いや、オレがどうしたって」
「いやいやいやいや。一人称オレはダメだよ愛葉ちゃん」
「そうや。男か女かわからんくなる」
「いや、それはわかるだろ」
「う、うっせぇなお前ら! 何をどう言おうがオレの勝手だろうが!」
「でもさ、それじゃなんというか……ホントに男みたいだよ?」
「そうやそうや。どちらかというと女よりの男や」
「いや、まず男か女かの話なんかしてないでしょ」
「だ、黙れ! オレは女だ! 誰がなんと言おうと!」
「ま、まぁまぁ、唯ちゃん落ち着いて」
「そうそう落ち着いて唯ちゃん」
「せやせや。唯ちゃん落ち着かな」
「あんたら怒られるよ?」
「う、う、うるせぇぇぇ! 唯ちゃん唯ちゃん言うなぁ!」
うわぁぁんと言いながら廊下へ走り去る愛葉ちゃんもとい唯ちゃん。面白いキャラしてるなぁ。
あたしがそんなことをぼーっと考えてるうちにチャイムが鳴ってさつきちゃんが教室に入ってきた。
「おーっす。仕方ないから今日も元気よく……あり? 愛葉がいない?」
「や、さつきちゃん、実は」
「お、遅れてすみません!」
声のする方を見るとぜえぜえと肩で息をする唯ちゃんが扉のところに立っていた。さっき出ていったばっかりなのに大変だねぇ。
「なんだお前、また息切れして。運動不足?」
「す、すみません……ちょっと走ってたもんで」
「え、お前陸上部?」
「い、いや、そうではなくてですね」
「ふーん。まぁいいや。座ってー」
「ゼェ……ゼェ……は、はい」
そんなこんなで今日も授業が始まった。あ、今日は1時間目からさつきちゃんの授業だ。
「そんじゃま、このまま授業に入るか。ええと、前どこまでやったっけ……」
「あの、篠塚先生?」
「あれー? どこだったか全然わかんない……」
「あ、あの! 篠塚先生!」
「ん? え? あ、あたし? あ、そっか。篠塚先生だよな。日和を始め生徒がみんな下の名前で呼ぶからよぉ……」
「いや、あの、わたくしは自己紹介などはしなくても結構なのでしょうか?」
「はぁ? 自己紹介? 何でそんなもん……あ、そうか。お前転校生だったな。思いっきり忘れてた」
……なんというか、さつきちゃんらしいっちゃあさつきちゃんらしいというか。ま、こっちのが唯ちゃんが来てなかったこの前みたいにピリピリした感じよりはいいかな。
「えー、それではこいつの紹介をする。名前は角木和菊花。あと……金持ち。以上!」
なんてテキトーかつ適当な紹介! 菊花ちゃんだからだろうけど、他の人に今の見られたら大変だよ。それでなくとも年齢ごまかしてるのに。
そんなテキトーな紹介にも構わず菊花ちゃんは笑顔で立ち上がり教卓に。
「ただ今ご紹介にあずかりましたわたくし、角木和菊花と申します。みなさんさえよろしければ菊花と呼んでくだされば嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします」
なんて丁寧な挨拶! すっごいお嬢様オーラ漂ってるし、みんな一気に見る目が変わったね。
「あ、ちなみに角木和は京ヶ咲中学から転校してきたんだっけか」
「はい、そうです」
それを聞いて教室がどよめく。たしか京ヶ咲中って言ったらすごいお嬢様学校だって聞いたことがある。やっぱお金持ちなんだなぁ。
「そんじゃ、角木和に質問あるやつー」
「はい!」
まぁここはみんなから親しまれるように、あたしが質問しといてあげないとね! というわけで速攻挙手。さつきちゃんが嫌な顔したけど関係なし!
「……はい、日和」
「よーし」
で、手を挙げたはいいけど、何を聞こう……あ、そだ。
「えーと、何でここに転校してきたんですか?」
「あ、それは、京ヶ咲中学を退学になったからです」
「え!? あ、あの……な、なんで?」
「いえ、それはわたくしが暴走族と関与していたからですわ」
「あ、え、あ、そっか」
その瞬間、またしても明らかにみんなが見る目が変わった。さっきまでは『羨ましい』とかそういうのだったけど、今度は確実に『恐怖』の目で見てるよね……
「んじゃ他に質問あるやつー?」
しん、と音が聞こえてきそうなほど教室は静かになってしまった。これ、あたしのせい?
しかしそれにも構わず菊花ちゃんはニコニコしてる。
「ございませんようでしたら、これにて自己紹介は終了とさせていただきますわ。よろしくお願いいたします」
パチパチパチパチと恐怖混じりの拍手。な、なんかあたしが溝を作っちゃったような気が……い、いや気にしない!
とは言いつつも、なんとも言えない嫌な気分が残ってたので、授業が終わってから謝ることに。
「どうしたんです、日和さん?」
「いや、あのさ、さっきは変な質問しちゃってごめん!」
あたしがそう言うと、菊花ちゃんはきょとんとした顔をしました。
「なんで謝るんですか? 別にわたくしは全く気にしてませんよ?」
「え……でも、やっぱなんか悪いから、償いというか落とし前というか……」
「そんな! 小指なんて結構ですわ! 勉学に支障をきたしますもの」
「……え?」
これを聞いた瞬間、あたしが言わなくてもいずれみんなわかることだったんだな、と思って安心したあたしでした。
「小指をつめるためのドスは今持ってませんし……どうしてもと言うならハサミでもなんとか」
「いや、遠慮しときます」