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ゆとりろ!  作者: 雲丹
16/31

第16話 それぞれの戦い

 どうも、日和です……すみません、ちょっと余裕ないです。

 現在なんと中間テスト中。そのため他のことを考えてられないんです。

 ちなみに今解いてるのは英語。さつきちゃん、見かけによらず問題は凝ってる……ん?


「あれ、この問題……見たことある」


 あ、そうだ。この前授業でやったとこだ。ラッキー!


「そうそう、ここはちょうどいっちゃんが答えたとこ……だから」


 答えはわかる。答えはわかるんだけど……!

 書けないよ! ってか書きたくないよ!


「うがー!」


「日下部、うるさい!」


「……すみません」


 はぁ……この調子じゃ英語は期待できそうにない。いや、英語『も』かな。……はぁ。




 どうも、弥生です。あ、まーちです。

 今中間テスト中です。教科は国語。1時間目の英語は完璧に寝てたから今度はがんばらなあかんのや!


「えー、なんやて?」


 問題は四字熟語みたいやな。□に当てはまる漢字を答えなさい、か。

 『第一問、□肉□食』

 これはベタな問題やなー。焼肉定食、とか書いてほしいんやろうけど、そうはいかん。もちろん答えはアレや。

 『第二問、天□地□』

 ふふふ、これもわかるんや。ドラマも見たし完璧や。

 『第三問、一刀□□』

 なんや、どれもこれも簡単やなー。こりゃ悪いけど国語は高得点かもしれんわ!




 どうも、乙香です。

 現在テスト中、教科は数学です。


「あ、これわかる。これもこの前やったとこだ」


 なんだ、結構簡単だなぁ。これなら高得点が狙えるかも……え? 面白くない? いや、そんなこと言われたって……


「はーい、質問ある人ー」


 あ、杉沢先生が廻ってきた。と思ってたら即座に手が上がった。


「はい! はい!」


「……はい、日下部」


 すごく嫌そうに日和を当てる杉沢。あんなに露骨なのに日和は気づいてないんだからすごいよね。


「うにゃちゃんって酒飲んだら人変わるって本当!?」


「はぁ!? そんなこと誰が言ってたの!?」


「さつきちゃん!」


「……まぁあいつしかいないか。あのね、テスト中にこんな話すんのも何だけど、私は別に酒飲んだって何も変わりません。そりゃ酒飲んだ時の記憶は全くないし、飲んだ次の日は家具が壊れてたりするけど、全然大丈夫です!」


「へぇー」


 いや全然大丈夫じゃないだろ! それ確実に自分で暴れまわってんじゃん!

 ……やっぱりこの学校は変な人多すぎる。だからホラ、私ぐらい普通じゃないと……ね?

 とか考えてたら解き方忘れた!


「あーもう!」


「うるさい桜馬!」


「…………すいません」


 あー……最悪だよホント。




 きーんこーんかーんこーん。


「はい、そんじゃ中間テストはこれで終わり。おつかれー。じゃ、さいなら」


「さようなら!」


 どーも。さつきだよ。テストが終わって生徒は元気いっぱいみたいだけど、あたしら教師はこれからが地獄なんだよ。採点とかやってらんねぇ。でもやんなきゃダメだよなー。


「あーめんどくせぇ……お」


 これ、日和の答案じゃねーか。ちょっと採点してみるか。

 どれどれ……なんだこいつ、全然書けてねーな。問一、問二、問三……お、問四はちゃんとやってる。あ、これ授業中にやったやつそのまんまで出したからな。さすがにわかるか。どれどれ?


「『私は日和のことが好きではありません』お、ちゃんと出来て……あら?」


 なんか括弧をつけてそのあとに何か書いてあるな。


「えー『私は日和のことが好きではありません(と言ってみたが心の中は彼女一色であった彼は、その愛情を余すことなく彼女に捧げることを誓った)』」


 ……なげぇよ! そこはかとなくなげぇよ! そしてうぜぇ! なんだこれ!? バツでいいかな? いいよな。ってかバツだよな!

 おもいっきり解答にバツ印をつけてやった。こんなに気持ちよくバツをつけたのは初めてだよ。


 とかちょっと憂さ晴らしをした感じで気分爽快だったあたしに、またしても魔の手(?)が……


「ちょっと、篠塚先生?」


「はい、なんでしょー」


 上品そうな国語の……何て名前だっけな。たしか山田……山田だった気がする。山田先生に呼ばれて振り返ると、すごい微妙な顔をして答案を見せられた。


「どうしました? 山田先生」


「これ木更津さんの解答なんですけど……ってか私山田じゃないです。末廣です」


「はぁ。まぁそれは置いといてうちのまーち……いや木更津がどうかしました?」


「あ、そうなんですよ。ここの解答なんですけど」


 そうやって見せられたのは四字熟語の問題。どうやら□に漢字を入れるらしいな。


「木更津さんの答えが……なんと言いますか……とりあえず見てください!」


「え、あぁ、はぁ」


 なになに? 『第一問、□肉□食』か……これはさすがに……いや、こ、これは!


「『牛肉夜食』……だと!?」


「そうなんです。たしかに発想はすごいんですけど……」


「ですよね。牛肉を夜食に食ったら胃がもたれますよね」


「いや、そういう問題じゃないですけど」


「ですよねー。で、次は『天□地□』か。これも簡単なはずですよね」


「まぁ一般的には。でも木更津さんは……」


「なになに……て、『天地人』!? □に埋めてないし!」


「はい……で、最後が」


「まだあるのか……最後は『一刀□□』ねぇ。で、まーちの答えは……なんだこれ、消しゴムで消された跡がすごいな」


「すごい迷ったみたいなんです」


 迷ったってことは答えにいくつか候補があったのか? あの問題で……


「で、結局答えは……『一刀百万』か。……どういう意味だ?」


「それは裏を見ればわかるかと……」


 裏? 言われた通りに裏返してみると、沢山の文字が書かれていた。

 一刀十円、一刀百円、一刀千円、一刀一万、一刀十万、一刀百万、一刀千万、一刀一億、と書かれていて、一刀百万だけが丸で囲ってある。

 値段……値段で……決めたのか……。


「なんていうか……一刀百万って、その……だ、妥当ですね!」


「……そ、そうですね」


「あ、あは、あはははは」


「うふ、うふふふ」


 なんていうか……


 作り笑いしてるしかなかった。







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