第14話 行動的少女真水、前
どうも、みなさんこんにちは。きぃちゃんの許嫁と噂される真水です。
日曜日の午前7時現在、私はきぃちゃんのベッドの中にいるのです。二人で一夜を明かした――わけではないんですよね、残念ながら。まぁ簡単に言うと侵入したんですね。そんなわけで横を見るときぃちゃんの寝顔があるんですよね。
「きぃちゃん……寝顔も可愛いね」
もちろんツッコミはこない。寝てるから。
「きぃちゃん……今、スキだらけだぞよ?」
ちょっとボケてみたけどやっぱりツッコミはない。
うーん、このまま起こしてしまうのはもったいない気がする。何かしなきゃ、何か……
あ、そうだ。
「あ、きぃちゃん起きたの?」
「うん、今起きたよ愛しのまみちゃん」
「チューしていい?」
「チューしたければ……してしまえばいいじゃない」
「ホントに? じゃ、遠慮なく」
「待てオイ」
「なんで? 今チューしていいって言ったのに」
「やかましいわ! 私が寝てる間にまみちゃんが勝手に一人で言ってたんでしょー? ってか何でここにいるんだよ」
「そんな理由なんて……いいじゃない」
「何なのそれさっきから」
「一応新ネタなんだけど」
「んなもんいらんわ」
いやー、やっぱりツッコミがあると良いね。しっくりくるよ。
「ふぁ~眠い。まだ7時過ぎじゃんか」
「眠ければ……寝てしまえばいいじゃない」
「身の危険を感じるんだよ」
「……いいじゃない」
「良くない!」
そう言いながらちょっと顔が赤らんでるような気がしないでもない……いや、あれ赤らんでるか?……赤らんでる、うん。赤らんでることにしとこう。
そんな赤らんでるきぃちゃんを見つめていると、突然きぃちゃんの部屋のドアが開いた。
「なんだよお前らー、朝っぱらからイチャついてんじゃねーぞー。うるせーし」
入ってきたのはものすごい眠そうな顔をしたさつきお姉ちゃんでした。
「イチャついとらんわ!」
「きぃちゃん……恥ずかしがらなくても、いいじゃな」
「うるさいっての!」
「うるさいのはおめーだー」
そう言うとさつきお姉ちゃんは横に飾ってあったテディベアを手につかみ、振りかぶって――
「ちょ、お姉ちゃん何して」
「うぉら~」
その緩い声とは裏腹に全力で投げてきたぶふっ!
「何であたしに当てるのさお姉ちゃん!」
「コントロールに乱れがぁ~」
「完璧にこっち狙ってたじゃん!」
「そーだよ悪いかよ」
「な!?」
開き直りおった……ここにきて。
「きぃちゃんー、お姉ちゃんひどくない?」
「今のはちょっとひどいかもね」
「でしょ? やっぱきぃちゃんは話がわかるね! チューすればいいじゃ」
「やめい!」
「ごふっ」
「おーい、きぃ、朝飯作って~」
「あ、はいはい」
きぃちゃんの愛のボディーブローを食らってあたしがお腹を押さえてる間に、篠塚姉妹はリビングに行ってしまった様子。つまり今あたしはきぃちゃんの部屋に1人! 何かしたい、何かしたいけど……腹がいたい。
あたしが腹痛のあまりうずくまって苦しんでいると、リビングから声が。
「まみちゃんー、もう朝ごはん食べてきた?」
「……や、食べてない」
「じゃあまみちゃんの分も作っとくね」
「……ありがとう」
さすがきぃちゃん……ボディーブローが鳩尾に綺麗に決まって動けないよ。
ってか朝ごはん、朝ごはんか……きぃちゃんの作った朝ごはん。きぃちゃんの手料理……手料理……ラブラブ……愛……新婚……夫婦! よくわかんない連想ゲームだと思ったあなた、まだまだガキね!
ってそんなことより、未来の嫁の手料理を食べにいかないと!
腹痛も忘れてリビングへ走ると、さつきお姉ちゃんが朝ごはんを食べ始めていた。
「きぃ、まみ来たぞ」
「あ、うん。ちょっと待っててねー」
「はーい」
なんか、なんかいいなぁ、この感じ。まるで夫婦みたいな、まるで家族みたいな! ってことはさつきお姉ちゃんはホントにお姉ちゃんになるわけだよね? そろそろちょっとしっかり挨拶しとかないとね。
「お姉さん」
「……なんだよ気持ちわりーな」
「妹さんを僕に下さい!」
「やらん。ってかお前が言うとシャレにならん。やめてくれ」
「シャレじゃないよ!」
「それをやめろっつってんだよ!」
「ん? どしたの二人とも」
「聞いてよきぃちゃん! お姉ちゃんがね」
「聞かんでいい!」
「ふがふご!」
お姉ちゃんに口を防がれて喋れない!
「……? 変なの。まみちゃん、ご飯ここに置いとくよ?」
「うん! ありがと!」
「おま、いつの間に!?」
きぃちゃんにプロポーズもしなきゃだけど、それより今は手料理を!
でもこれで終わると思ったら甘いよ、さつきお姉ちゃん……あ、この大根超おいしい。