美濃の刺客と、雷蔵の追跡
「……ふぅ。女の園ってのは、戦場より肩が凝るぜ」
帰蝶様とのヒリついた「石鹸会談」を終え、私は屋敷の縁側で一人、夜風に吹かれていた。
中身がおじさんの私にとって、帰蝶のような完成された「美女」は、鑑賞するには最高だが、対峙するには心臓に悪い。
「雷蔵、お前もそう思うだろ?」
足元で丸まっていた雷蔵が、ふと耳をピクリと動かした。
次の瞬間、低く唸り声を上げる。
「……おっと。どうやら夜更かしの客人が来たみたいだね」
私は「不思議ポケット」の中に手を滑り込ませた。
闇に紛れ、音もなく屋根裏から降りてきたのは、漆黒の装束に身を包んだ二人組。
手には、月光を反射させないよう墨を塗った小太刀。
「……信長を殺る前に、まずはその妙な知恵を出すガキを消せとの命だ」
(なるほど。私の『石鹸』やら『マヨネーズ』やらが、早くも美濃の蝮(道三)の耳に届いたってわけか。情報の速さは現代のSNS並みだな)
「雷蔵、右の奴を頼むよ。左の『仕事熱心な人』は私が相手する」
「グルルッ……ワン!」
雷蔵が影のように飛び出した。
刺客の一人が驚いて刀を振るうが、現代のドッグトレーニングで鍛えられた雷蔵の動きは予測不能だ。鋭い牙が刺客の足首を貫き、悲鳴を上げさせる。
「貴様ぁっ!」
もう一人が私に向かって突きを繰り出す。
私は一歩も動かず、不思議ポケットからコルトマムシ・零号機を引き抜いた。
「悪いね。近接戦闘なら、こっちの方が『効率的』なんだ」
バギィィィン!
火花が飛び、刺客の刀が真っ二つに折れる。
さらに、私は男の懐に飛び込み、膝蹴りからの中身おじさん直伝・合気道の投げ技を見舞った。
「ぐはっ……!?」
地面に叩きつけられた刺客を、私は冷めた目で見下ろす。
「死にたくなきゃ、雇い主に伝えな。織田の家には、マヨネーズ好きな魔王と、性格の悪いおじさん……じゃなくて、凄腕のくのいちが居るってね」
逃げ出した刺客たちの背中を、雷蔵がどこまでも追いかけ、彼らが潜伏していた寺の跡まで特定して戻ってきた。
「よくやった、雷蔵。……さて、殿。美濃のじじいにお返しのプレゼントを贈りましょうか」
翌朝、私は信長に「美濃の刺客から奪った機密情報」と、「新開発のめちゃくちゃ辛い山葵マヨネーズ」を献上した。
「はははっ! 面白い! 百舌鳥、お前を飼ってから退屈しねえな!」
信長は豪快に笑い、私の頭を乱暴に撫でた。
私の戦国ライフは、どうやら「内政」だけでなく、本格的な「諜報戦」にも突入したらしい。




