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戦国漫遊・子連れ忍法帖 〜中身はおじさんだけど信長に嫁いで内政チートしています〜  作者: 井上幸将
天下統一怒涛編

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最終話):百舌鳥のその後と、茶々丸のホワイト日ノ本記

「……おい、茶々丸。そんなに慌てるな。現代のコンプライアンス(法度)は、一日にして成らず、だぞ。焦って『ブラック』な手法に戻ったら、パパに怒られるからな」


1590年、安土。

かつて戦国の中心だったその場所は、今や世界中から商人と技術者が集まる、史上空前の「ホワイト経済特区」へと進化を遂げていた。

城下のメインストリートには、不思議ポケットの知識を元に量産された「石畳の舗装路」が続き、街灯(菜種油の改良型と、一部のソーラー外灯)が夜を明るく照らしている。そこを歩く民たちに、かつての飢えや怯えの色はない。


「小次郎お兄ちゃん、パパの口癖を真似しないでよ! 私は日ノ本ホールディングスの『二代目CEO』として、この有給休暇義務化案を今日中に通さなきゃいけないんだから!」


立派に成長した茶々丸が、現代風にアレンジされた『和服のスーツ』を翻し、タブレット(※おじさんが残した最後の遺産)を小脇に抱えて廊下を駆走する。その後ろを、スイカの被り物を「二代目」として新調した雷蔵が、元気に追いかけていく。


「ワン!(会議に遅れるぞ!)」


茶々丸の隣で筆頭秘書を務める小次郎は、もはや「忍び」というよりは「敏腕経営幹部」の風貌だ。おじさんが叩き込んだ現代の『帝王学』と『マネジメント論』は、次世代の若者たちの中に、しっかりと根付いていた。

安土城の最上階「隠居の間」。

そこでは、かつての魔王・織田信長が、イチゴの着ぐるみをパジャマ代わりにし、現代の『低反発クッション』に身を沈めて、のんびりと『現代の週刊漫画(の、おじさんによる手書きコピー)』を読んでいた。


「がっはっは! 良いな、この『サラリーマン』という名の戦士の物語。……百舌鳥の言っていた通り、戦わずして勝つのが一番の贅のようよ」


その傍らでは、帰蝶が現代の『ネイルケアセット』で爪を磨きながら、妖艶に微笑んでいる。


「上様……いえ、名誉会長。今日も茶々丸が、武田や上杉の隠居組と『ゴルフ(という名のゲートボール)』の件で揉めていましたわよ」

「構わん。隠居共が元気なのは、ホワイトな証拠だ」


平和だった。

1582年の本能寺という「バグ」を回避したこの世界線では、凄惨な戦死も、不条理な切腹も、もはや教科書の中だけの出来事になっていた。

一方、その頃。

京の都から遠く離れた、伊豆の静かな海岸線。

そこには、一軒の小さな『カレー屋』があった。

看板には、マヌケなバナナの絵が描かれている。


「……はい、お待たせ。特製・おじさんカレー、大盛り一丁」


カウンター越しにカレーを差し出すのは、絶世の美少女の姿をした店主――百舌鳥おじさんだ。


「……ふぅ。やっぱり、これが一番性に合ってるわ」


俺は、客が引いた後の店内で、不思議ポケットから最後の一缶となった『現代のビール』を取り出し、プシュッと音を立てて開けた。

天下を獲り、システムを構築し、次世代に全てを丸投げ(事業承継)して、俺は消えた。

美少女の外見は相変わらずだが、不思議なことに、中身の「無職おじさん」の魂は、以前よりもずっと軽くなっていた。


「……おじさん、無職から天下人になって、最後はカレー屋か。……人生、何が起きるか分かんねぇな」


俺はタブレットを開き、安土から届く「日ノ本ホワイト化報告書」を眺める。

茶々丸が頑張っている。光秀が定時で帰っている。信長が漫画を読んで笑っている。

CEOパイナップルも、近所の島で「パイナップル農園」を経営し、時々俺の店にスパイスを卸しに来る。


「……十分だ。これ以上、何を望むってんだよ」


俺はビールを煽り、美少女の顔で「ぷはぁ!」とおじさん臭い溜息をついた。

その時、店の扉がガラリと開いた。


「ごめんください。……ここのカレー、美味しいって噂でね」


現れたのは、旅装束に身を包んだ一人の若者。その腰には、見覚えのあるバナナのキーホルダーが揺れていた。


「……いらっしゃい。……何にする? うちのカレーは、戦国一『ホワイト』だぜ」


俺は、最高のビジネススマイルで客を迎えた。

不思議ポケットの魔法はいつか消えるかもしれない。現代知識も、いつかは歴史の中に埋もれるだろう。

だが、俺たちがこの時代に刻んだ「優しさ」と「適当さ」は、きっと100年後の未来まで、この国のOSとして残り続ける。


「……あ、大盛りで。あと、マヨネーズもトッピングしてください」

「了解。……わかってるね、お兄さん。マヨネーズは正義だ」


俺はバナナの着ぐるみを壁にかけ、鼻歌まじりに鍋を回した。

30代無職おじさんの、長く、熱く、そして最高にふざけた「戦国漫遊」は、これにて一旦の『定時退社』。

またいつか、誰かがブラックな運命に泣いている時。

黄色い皮を被った「おじさん」が、不思議なポケットを持って現れるかもしれない。


「……さらば戦国。……あー、明日も有給取っちゃおうかな」


美少女店主は、夕日に向かって盛大に伸びをした。

空は、どこまでも澄み渡った、ホワイトな青色をしていた。


【戦国漫遊・子連れ忍法帖 〜中身はおじさんだけど信長に嫁いで内政チートしています〜:完結】

あとがき:

全53話。30代無職おじさんの魂を持つ百舌鳥が、現代の知識と「不思議ポケット」を武器に、戦国時代のブラックな構造を徹底的に「ホワイト化(M&A)」していく物語、無事に完結いたしました。

序盤のギャグとエロの温度差から始まり、中盤の重厚な領地拡大、そして「隠居スキーム」による平和的な天下統一。読者の皆様、そしてパパ(信長)や茶々丸、愉快な仲間たちと共に歩んだこの覇道は、おじさんにとっても最高の「再就職」となりました。

ご愛読ありがとうございました!

次回の作品(あるいは第2部・世界進出編?)でも、また「おじさんの魂」がどこかで暴れるかもしれません。

2026年 某日 完結。

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